Contenu connexe Similaire à BADUIからユニバーサルデザインへ展開するデザイン教育実践 (20) BADUIからユニバーサルデザインへ展開するデザイン教育実践3. Background
Ralph によるデザインの定義 (Ralph, 2010)
与えられた環境で目的を達成するために、様々な制約下で、利用可能な要素
を組み合わせて、要求を満足する対象物の仕様を生み出すこと [1][5]
⇨ 重要だが、極めて抽象的で理解しにくい
⇨ これを暗記しても、デザインができるようにはならない
研究目的
共通教科情報で行うべきデザイン教育のカリキュラム作成
• 高校生が学ぶべきデザインの基礎事項を整理
• 勤務校の「社会と情報」での授業実践とその評価
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6. 授業実践
京都市立西京高校 1 年生 (7 クラス) で実施
• 「社会と情報」の授業中、プレゼンテーションの後に実施
(生徒もデザインについて関心・経験が多少ある状況)
• 2 時間の授業の実施後に課題を課し、返却時にフィードバックを実施
(プレゼンテーション)
デザインの基本的理解
デザインの普遍性
デザインの論理性
デザインの
人間中心主義
デザイン・リテラシー
デザインを
「読む」能力
デザインを
「書く」能力
BADUI
UD
扱った特性:
学習障害(LD)
色覚異常
自閉スペクトラム(ASD)
design vs art
Form follows function
前半(35分程度) 後半(65分程度)
課題
(2週程度)
フィードバック
授業(50分×2) 授業
(15分程度)
Figure: 授業実践の全体図
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7. 授業実践
前半: デザインの基本的理解
1 授業の動機付けとして、デザインの普遍性について説明
2 デザインとアートの違いを述べた blog 記事 [3][4] と、アメリカの建築
家 Louis Sullivan の理念「Form follows function」[2] を基にデザインの
論理性を説明し、従ってデザイン能力は学べば向上するものだと伝える
3 デザインの対象である相手 (人間) を学び、それに合わせたデザインを考
える (人間中心主義) ことで、より良いデザイン (UD) ができると伝える
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8. 授業実践
後半: デザイン・リテラシー
授業では問題のあるデザイン (BADUI) から UD への流れを具体例で解説
1 人々のもつ特性を紹介 (例: 色覚異常)
2 その人々にとって不便なデザインを示す
(例: 系列を判別しにくい色で区別しているため、系列を見分けられな
い折れ線グラフ)
3 なぜそれが不便なのかを伝える
(例: 色で対応付けを表現しているから)
4 その人々にとって便利なデザインを示す
(例: 線種や線の太さでも対応付けを行う)
5 そのデザインが、特性をもたない他の人々も便利な (より universal な)
ことを伝える
(例: カラー資料を白黒コピーしても区別可能)
※ 実際に扱った特性は「学習障害」「色覚異常」「自閉スペクトラム障害」
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9. 授業実践
課題
締切まで 2 週間程度の期間を設け、BADUI を見つけ改善する課題を提示
※身近なデザインを批判的に見る過程が重要なため、締切まで時間をとる
身の周りのBADUIを探す
デザインの問題を指摘
問題が生じる原因を分析
デザインの改善案を提案
感想(任意)
身の周りのBADUIを探す身の周りのBADUIを探す
課題 取り組み例
デザインを「読む」力
題材点で評価
(選んだBADUIの良さ)
デザインを「書く」力
内容点で評価
(適切な分析と改善案)
ルーズリーフのバインダー
リングを開けられない
矢印の向きが間違っている
正しい向きに直す
Figure: 課題の構成図
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10. 授業実践
提出課題の評価
題材点と内容点の合計点でデザイン・リテラシーを評価
• 題材点: 選んだ BADUI の良さを評価
• 内容点: 問題分析と改善案を評価
※ デザインの基本的理解に関しては、別に評価
点 題材点 (「読む」能力) 内容点 (「書く」能力)
0 未提出 未提出
1 趣旨に即さないもの、改善案
が安易に思い浮かぶもの
安易な分析・改善案しかない
もの
2 趣旨を踏まえたもの 趣旨を踏まえたもの
3 より着眼の鋭いもの 工夫ある改善案や深い洞察の
あるもの
Table: 評価基準
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11. 授業実践
得点分布
• 合計点はほぼ均等に分布
• 題材点は、定番のものでも 2 点としたため、1 点が少ない
• 内容点は、安易な改善案は 1 点としたため、1 点が多い
(「手すりがない」の改善案に「手すりをつける」など)
内容
題材
0% 20% 40% 60% 80% 100%
0% 20% 40% 60% 80% 100%
合計 2 3 4 5 6
1 2 3
1 2 3
Figure: 得点分布 (提出分)
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13. 授業実践
感想 (抜粋)
• 本当の意味での「デザイン」は使う相手、対象のことを考えるという理
念が根本にあるのだと思いました。
• すべての人がふつうに過ごせるデザインを考えることは難しいと思いま
すが、デザインによって使いやすさが変化するので重要性を感じま
した。
• ユニバーサルデザインなどとかっこつけた言い方をせずに、そういうデ
ザインの社会が当たり前の世の中になればいいのにな、と思った。
BADUI 発見の難しさ
多様な視点の重要性
身近な BADUI の多さ
身近な UD の多さ
デザインの論理性
UD の重要性
UD の難しさ
UD の限界
人間中心主義
その他
0 5 10 15 20 25
Figure: 感想の分類結果 13 / 16
16. Reference I
David Paul Ralph. Fundamentals of software design science. 2010. url:
http://hdl.handle.net/2429/29536.
Louis H. Sullivan. サリヴァン自伝. 竹内 大, 藤田 延幸訳. 鹿島出版会, 1977, p. 269. isbn:
978-4306045828.
Admix Web. Design and Art: Are They the Same? url:
http://www.admixweb.com/2009/11/11/design-and-art-are-they-the-same.
Web クリエイターボックス. アートとデザインの違いは? url:
http://www.webcreatorbox.com/webinfo/art-design.
京都大学 デザイン学大学院連携プログラム. 「デザイン」の定義. url:
http://www.design.kyoto-u.ac.jp/smalltalk/smalltalk_01.
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