2018年2月25日(日)中谷報恩講での法話です。

1. 法話「すべての執着を離れてさとり
へ至るというこの浮世離れしたこと」
2018年2月25日(日)中谷報恩講（於・中谷会館）
真光寺住職 金川信亮

2. 法話とは（私なりの定義）
死にきちんと向き合うことでより良く生きようとする
ことをお伝えする話

3. 質問
皆さんは遺言をお書きになっていますか？

4. お礼のひとこと遺言のススメ
• 私も明日死ぬかもしれない（交通事故、心臓麻痺、
etc.）
• ちょっとかっこつけて「いやーこんな早く死ぬとは
思わなかった。でもおかげで何の悔いもない幸せな
人生だったよ、ありがとう。あんまり悲しまないよ
うにね」と書き残しておこう

5. 大人の成熟
• たとえ強がりでも、今死んでも悔いはないと言える
のが成熟した大人だ。
• 小さい子供はそうはいかない。人生の苦しみの多く
の部分を子供が死ぬということが占めている。（親
にとっても、子供本人にとっても）

6. 例：私の知人夫婦の話
• 初めてのお子さん（女の子・3歳）を医療事故で亡
くされた。虫歯の治療中に詰め物用のガーゼが喉に
落下し、窒息死
• 事故を起こした歯医者さんは廃業
• 葬儀ではみんな涙に暮れて何も言えない

7. しかし･･･
世にはさまざまな親子関係がある
• 札幌の四人家族で起こった殺人事件
• 高校二年生の三女が祖母と母を包丁で刺し殺した。
• 三女は祖母から10年以上にわたって虐待を受けて
いた。母は祖母の言いなりだった。幻冬舎新書『きょうも
傍聴席にいます』 第一部 絶対君主が支配する虐待の家（朝日新聞社会部）

8. 仏教には何ができるのか？

9. 仏教とは･･･
• 無常・苦・無我をありのままに受け容れる
• すべての執着・我執から解放され、さとりへと至る
• ニルヴァーナ（涅槃）の境地

10. 亀と魚の話
亀「魚くん、ぼくはこないだ陸に行ってきたよ」
魚「へえー。そう。その陸ってところでも、もちろん
泳いだんだろ？」
（ニルヴァーナの境地が普段のわれわれの常識的感覚とは全く異なることをいう
ための譬え話）

11. しかし･･･
• 誰でもさとりへと至ることができる
• 一度や二度や三度やそれ以上、誰でも無我の境地に
至ったことがあるはずだ（例：一心不乱に野球のバットを素振り
しているとき、仕事があまりにも忙しくて体が勝手に動くようなとき、etc.）
• ただその状態をずっと持続させるのが難しい

12. 最後に本題
• すべての執着から解放されることが本当に人間にとって必要
なのか
• 人間の偉大、美しさは我執に囚われて苦悩するところにこそ
あるのではないか
• すべての文学・芸術はそうやって生まれてきたのではないか
（仏教への、最も本質的な批判であると思われる）

13. ⇒この批判にどう答えるか
1. 苦悩・執着を肯定できた時点でそれは結果的には仏教と同じとこ
ろを目指しているのではないか？
2. 現代が恵まれた時代だからこそ「苦悩が尊い」などという甘いこ
とが言えるのではないか？
3. 文学・芸術の生産行為は我執を離れた静謐のうちにこそよりよく
行われるのではなかろうか？
（このほかにもあると思います。どうぞ皆さん考えてみてください。）

14. ありがとうございました。
（このスライドは実際の法話を終えたあとにまとめました。またタイトルも
あとから付加しました。）