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1
どさんこアクアポニックス
~魚が野菜を育てる!?~
北海道大学水産学部 アクポニ部
学生代表:小島悠暉
/13
世界の食糧問題
2
• 水問題
• 農地問題
増加する需要
より狭い土地、より少ない水でより多くの食料を作る
土壌の浸食・砂漠化
0
2 000 000
4 000 000
6 000 000
8 000 000
10 000 000
1900 1950 2000 2050
世界人口の推移
(World Population Prospects, the 2022 Revisionより作成)
低下する供給
• 人口増加
• 穀物の非効率的な消費
穀物が家畜のエサやバイオ燃料として消費
• 2050年には世界人口100億人に
• 一人あたりの資源量が減少
大規模な農業による
地下水のくみ上げ
→地下水の枯渇
/13
アクアポニックスとは?
3
魚の養殖 + 野菜の水耕栽培
• ろ過槽の微生物が魚の排泄物を植物の肥料へと分解
魚のエサが魚と野菜の両方を育てる
→微生物が魚と野菜を仲立ちする
• 養殖水槽と栽培水槽の間で水を循環させる
→魚と野菜が同じ環境で育つ
/13
アクアポニックスのメリット
4
• 肥料を使わない
• 栽培槽を立体的に配置
食料問題の解決策として注目!
少ない水、狭い土地で魚と野菜を育てることができる
• 農薬を使わない
• 野菜が水の汚れを吸収
• 飼育環境全体の水量が増える
魚の養殖 水耕栽培
水質の安定、魚が元気に! 土を使わない農業
• メンテナンスが簡単になる
/13
北海道で行うための課題点
5
• 水温を管理するためのエネルギーが必要になる
• 水温・気温が低いと魚、野菜の両方で生育が遅くなってしまう
/13
寒い地域に適したアクアポニックス
6
北海道生まれの寒い地域に適したアクアポニックスの開発
①サケ・マスの育成
②サケ・マスと共存できる植物の育成
• 冷たい塩水でも飼育できる
• 海水中で成長アップ
→水温管理のエネルギーを抑えられる
耐塩性植物
スイスチャード シーアスパラガス
耐低温性植物
/13
実験計画
7
酸素濃度上昇→魚が元気に?
どの程度の密度が魚に最適?
マスと植物が共存できる環境は?
植え方の検討 野菜をどう植える?
飼育密度の検討
酸素飽和度の実験
低温実験
塩分濃度の検討
好塩性植物は塩水栽培に耐える?
基礎研究
実証実験
/13
アクアポニックス実証実験システム
8
飼育槽
栽培槽
ろ過槽
貯水槽
オートサイフォン
オートサイフォン
サイフォンの原理
水面をつなぐ管の中を水が高い位置
から低い位置へ自動的に流れる
例:灯油ポンプ、排水口
水位が一定以上になると自動的
に水が流れ、水位を下げる
/13
これまでの結果:植え付け方の検討
9
サイフォンによって
水面が上下
根が空気に触れる
根が空気に触れない
養殖水槽:キンギョ
イカダ方式 vs 宙づり方式
水耕栽培槽:レタス
• 毎日魚体重量に対して2%のエサを給餌
• 31日間栽培
• ロックウールに植え付け
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魚体の成長
10
100
110
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130
140
150
160
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190
200
0 20 40 60 80 100 120
成長率
(%)
実験開始日の重量 (g)
• 平均132%の成長
• 初期体重に応じて成長率が変化
• 最低でも120%の成長
/13
イカダ方式 vs 宙づり方式
11
宙づり方式の方が安定した成長
0
1
2
3
4
5
10
15
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25
30
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65
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90
95
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個体数
可食部重量(g)
イカダ方式
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個体数
可食部重量(g)
宙づり方式
最大個体:
可食部重量 99.9g
最小個体:
可食部重量 10.5g
高価な魚・野菜の栽培
→より多くの収入
エサ:1.0㎏ 808円 (株式会社キョーリン, ひかり小粒)
キンギョ:500g 948円 (DC freshwaterfish, crucian carpより)
レタス:1.0kg 378円 (東京シティ株式会社, 10月22日の市況情報より )
1092+514-1102=
504円 (-電気料金)
収入:
支出 収入
合計給餌量
(g)
魚体重量増加量
(g)
草体可食部収量
(g)
重量 1363 590 1557
収支(円) 1102 1092 588
/13
これからの展望
12
サクラマスを用いたアクアポニックスへ向けて
酸素飽和度の実験
低温実験 塩分濃度の検討
酸素飽和度を通常の1.5倍程度にコントロール
→魚と野菜の成長が改善?
魚と野菜が共存できる条件の検討
• 好塩性植物、低温性植物の栽培 高濃度気体溶解装置 酸素ファイター
溶存酸素濃度を自然な状態の2倍程度まで高
めることができる
13
ありがとうございました
本研究は、北海道大学 ロバスト農林水産工学国際連携研究教育拠点
の助成により行われました

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