2022年11月の韓国視察報告書です。 第１３９回鈴木あやこ区政報告座談会の資料です。 韓国大使館主催の自治体議員向けのプログラムで参加。 ・韓国政府 外交部・統一部の訪問 ・ソウル市瑞草区（ソチョ）区訪問 ・世宗（セジョン）特別自治市訪問 ・韓国の電子政府状況 ・行政首都機能移転について などが記載されています。 ・韓国視察報告のブログ https://www.suzukiayako.com/archives/52358448.html ・第１３９回あやこcafe 日時：11月29日19:00〜20:45 場所：オンライン開催（zoom） テーマ： 「江東区議会・江東区政の最新情報」 「韓国視察報告〜最新のICT政策など〜」 ・あやこcafe(区政報告資料 スライドシェア https://www.slideshare.net/suzukiayako2011/139cafe-pptx

1. 韓国視察報告
2022.11.13-16
2022年11月
江東区議会議員 鈴木綾子

2. 視察日程
■日時：2022年１１月13日〜１６日
■視察先：韓国 ソウル市・セジョン市など
■主催者：駐日本韓国大使館
11月14日：
大韓民国政府 統一部/外交部
瑞草区（ソチョ）視察
チョン・ソンス瑞草区庁長と面談
瑞草区議会議員と面談
瑞草区スマートハブセンター視察
瑞草区スマートユースセンター視察
11月1５日：
烏頭山統一展望台視察
世宗（セジョン）特別自治市視察
世宗市 CCTV管制センター視察
デジタル政府ショールーム視察

3. 大韓民国（韓国）の概要と政府関係者との面談
①統一部との面談
統一部は、朝鮮半島の南北統一及び韓国と北朝鮮との政
治的対話・交流・協力・人道支援に関する政策の樹立、
統一教育・広報、その他統一に関する事務を管掌。
韓国、北朝鮮は第二次世界大戦を境に70年分断し、特
殊な関係となっている。韓国憲法は、平和的統一政策を
推進。韓国政府・統一部にて朝鮮半島の南北統一に向け
た政治的対話や交流などの事務をおこなっている。
・北情勢の内部事情
・ユン大統領の施策、統一ビジョンや課題
・ユン大統領が進める南北問題について大胆な構想
についてお話を伺った。
②外交部との面談
韓国外交部を訪問。韓国政府と自治体議員レベルでの交
流・政策や文化を互いに理解し合う重要性について話し
た。
■首都圏人口/国内人口：2,500万人/5,1７３万人(日本の約40%)
国民の約半分が首都圏(ソウル・仁川・京畿道) に集中
■国土面積:100,339km2(日本の約26%)
■一人当たりGDP (20２０年):3万１６３８ドル

4. • 国連が発表している2020年の世界電子政府ランキングで
は、日本は１４位、韓国は２位。
（１位デンマーク、２位韓国、３位エストニア）
• 韓国の電子政府は、日本に比べてはるかに進んでおり、
行政の手続きや証明書交付もインターネットでワンステッ
プで可能。
• 個人認証が全ての行政サービスに紐付いており、行政
サービスが共通のプラットフォームで運用されていて、国
や地方自治体の情報が統一管理されているので、ワンス
トップ化できることが、日本と大きく違う部分。
• 韓国ではすでに、日本のマイナンバー制度である住民登
録番号については、60年前から導入され、あらゆる行政
サービスが一つの番号と紐ついている。
• 行政サービスについては、電子政府のポータルサービス、
政府２４という基礎となる仕組みが国主導で整備されてい
る。
• 自治体では、OK民願（民願２４）というサービスがあり、
PCやスマホで２４時間３６５日、行政サービスが申請でき
て、証明書の発行なども自宅から可能。
• 行政窓口を利用する場合も、ワンストップでサービスが
できるように窓口がワンフロアに集約されている。
• 住民からの要望や苦情の申告（道路、公園、ゴミの不法
投棄など）などもPCやスマホからで完結し、状況の確認な
ども可能になっている。
韓国のICT政策（電子政府について）

5. • 行政のデジタル化については、瑞草（そちょ）区役所と、世宗市
市役所、セジョン市のあるデジタル政府ショールームで、国と地方
自治体両方のお話を伺った。
私自身、マイナンバーカードの導入で、江東区の行政サービスの
オンライン化を進めようという提案は議会質問で何度もやっている
が、韓国では国主導で電子政府の仕組みが統一化されているのに対
し、日本の自治体の場合には、各自治体が電子行政を利用できる
サービスを個別に対応させなければならないため、手間や時間がか
かる。
その結果、自治体ごとに電子行政サービスのメニューに差が出てし
まう。
• 韓国では電子化が進んでいる一方で、オフラインの交流にも力を
入れている印象。
• 瑞草区では、チョン・ソンス区長が、「共感・成果を出す・分か
ち合う」をキャッチフレーズにしていて対話に力を入れていた。
• 直接話ができる直通電話（「ソンスさんと話そう」）を設けてい
たり、区長室の前が「創造カフェ」と呼ぶオープンスペースになっ
ていて対話できる環境を作っている。
韓国のICT政策（日韓比較）

6. • 施設見学では、瑞草区の「スマート
ユースセンター」という青少年向けの施
設を視察。
• 江東区にも、青少年向けの施設として、
「江東区青少年交流プラザ」が亀戸にあ
り、会議室やダンス・演劇・楽器演奏な
どができる場があるが、瑞草区（ソチョ
ク）のスマートユースセンターは、メタ
バースやバーチャルリアリティのスタジ
オがあったり、オンラインで学習ができ
るようになっていたり、遠隔で心理相談
ができるコーナーもあった。
・心理相談のコーナーでは、センサーを
つけると、ストレス度が測定できるツー
ルもあり、カウンセラーが相談者のスト
レス度もチェックしながらカウンセリン
グできる空間になっていたり、ICTをフル
活用した最先端の素晴らしい施設だった。
韓国のICT政策（ソウル市瑞草区「スマートユースセンター」）

7. 韓国のICT施策（ネットワーク化された監視カメラ「CCTVカメラ」）
ソウル市の１６の自治区では、CCTVと呼ばれる
ネットワーク化された監視カメラが市内全域、瑞
草区では５０００台設置されており、瑞草（ソ
チョク）区役所にある「スマートハブセンター」
というCCTVの管制センター」で集中コントロール
されている様子も視察。
CCTVカメラは、駐停車の取り締まり、防犯、不法
投棄、通学路や学校の安全対策を目的に設置され
ていて、センターにはモニタリング要員のほか、
警察官も常駐しているため、カメラを見て、事件
や事故などの発生につながる時には即座に警察の
関係所管に情報提供され、迅速な対応が可能に
なっている。
センサーで怪しい行動を検知するAIの仕組みも進
んだ自治体、セジョン市では導入されていて、瑞
草区（ソチョク）でも、導入予定だそう。
ボタンを押すと通報でき、スピーカー通話できる
CCTVカメラも一部ある。
ソウル市では駐車違反の取り締まりも市で行なっ
ており、CCTVにより、取締の効率化にも役立って
いる。

8. 日本の場合は、公共空間への監視カメラなどはあるが、
行政が設置しているもの、町会や商店街が自治体からの助
成金で設置したものなどいろいろな種類があり、それぞれ
が管理をしていて、ネットワーク化はされていないのが大
きな違い。
事件がおこった際のみ、捜査の一環としてカメラの撮影
データを警察に提供するという形を取ることが多い。
ソウル市のように、自治体がセンターで集中管理し、警察
や消防、行政機関と連携して随時動いていくほうが、犯罪
の抑止や課題解決が早い。
日本では縦割り行政なのと、法整備、個人情報保護が厳し
いなどの面でもハードルが高いと思います。
韓国では、国主導の中央集権という色が強く、日本は自治
体に権限が移譲されているということで制度も違い、日本
ではすぐに導入できない部分もある。
とはいえ、韓国の電子自治体やICTを活用した行政サービス
の視察は大変刺激になるものだっt。
日本でも取り入れられる要素はあると思うし、数年後、韓
国視察で見たものが日本で導入される可能性も大きい。
日本の先進事例だけでなく、韓国の事例などもしっかり学
び、江東区に提案できるものは取り入れていきたい。
韓国のICT施策（韓国の「CCTVカメラ」と日本のカメラの違い）

9. 行政複合都市「セジョン市（世宗市）」について
世宗市は、ソウルから南に120km、韓国の中部にある特別自治市
で面積465km²、
行政複合都市、韓国の行政上の首都として既存自治体の行政区域
から独立して2012年7月に 誕生。今年で設立10年になる新しい都
市。
人口は36万人で、平均年齢は37.3歳。
日本の都道府県レベルに相当する広域自治体でありながら管轄区
域には日本の市町村区に相当する基礎自治体を 置かない特別な市。
予算は1兆6,050億。
韓国はソウルに京畿道（キョンギド、けいきどう）、仁川（イ
ンチョン）を加えた首都圏があり、そこに一極集中して過密に
なっていたことから、首都圏の過密化による弊害を最小限に抑え、
国家の均衡ある発展を実現するために、ソウルにあった政府機関、
中央官庁を移転させ、集約させて急速に開発されたニュータウン
が世宗（セジョン）市です。
首都をソウルから移すことは憲法裁判所の違憲判決やソウルの反
対もあって頓挫をしたそうですが、その代わり行政中心都市とし
て官公庁機能を移転することを成功し、すでにソウルにある大半
の官公庁（中央行政機関が４４）がセジョン市に移転しています。
5年後には、世宗に国会議事堂が移る予定。

10. 行政複合都市「セジョン市（世宗市）」副市長とのQ &A
行政上の首都をセジョン市に移転するのは、2003年に
話がはじまり、2012年には特別自治市として設立とい
うスピード移転。
Q.「どうしてそんなに早く、首都機能の移転が実現で
きたのですか？」
と質問したところ、
A.計画自体は1970年代からあり、別の地域の話もあっ
たが、北朝鮮の保安上の問題もあり、その場所には決
まらなかったことはあったけど、セジョン市の話が出
てきてからは、早く決まったと補足をしてから、
韓国人は早く話を始めるのが好き。
決断が早く、スピード重視、動きながら考えるタイプ
という回答。
国民性の違いの他には、大統領制の韓国と日本では統
治構造の システムが違う点や当時の盧武鉉ノ・ム
ヒョン大統領のリーダーシップもあったということで
した。
また、話がなかなか進まず、移転ができなかった
日本の議論も参考にしたとのこと。

11. 行政複合都市「セジョン市（世宗市）」の住宅事情
セジョン市では、ソウルから中央官庁を移転させ
るとともに、公務員たちの住む高層マンションも
確保され、多くの公務員の方々が民間人ともに暮
らしています。
庁舎を整備するだけでなく、公務員がこれまで住
んでいたソウルを離れてセジョンに引っ越しする
のは大変だったのでは？
公務員が引っ越して家を購入する際、優遇などは
あったのか？
という質問を私からしたところ、こんな答えが
返ってきました・
移転にあたっては、公務員の方がソウルから引っ
越してきやすいように、民間の分譲価格の半額で
アパート（タワーマンション）を購入できるよう
な優遇措置もとったとのこと。５０代くらいの公
務員の方は、ソウルに家を持っている方も多いそ
うですが、若い世代はセジョン市に家を購入して
転居するなど、公務員の方も定着してきたそうで
す。

12. 行政複合都市「セジョン市（世宗市）」の街並みについて
セジョン市は街の一帯に住宅や官公庁の高層ビルが立
ち並んでいる風景が広がり、水辺や公園などの緑地も
ある新しくて綺麗な景観。
ICTを活用した、便利で近代的な暮らしができるエリ
アになっています。
江東区の豊洲や有明エリアにも似た風景であり、水辺
にも面しているので、個人的には親近感も感じる風景
です。
街中にはAI機能を搭載した最新鋭のCCTVカメラが設置
されており、安心、安全も確保されたスマートシティ。
今はテスト段階。水素自動車、ドローンなどの実験を
しているとのことでした。
東京都がベイエリアを舞台に、未来の「東京ベイエリ
アeSGプロジェクト」のサステナブルな都市を目指し
て様々な取り組みを始めようとしていますが、それに
似ている感じがしました。
「未来志向で発展する幸せな街、市民主権の街」とい
うのがコンセプトだそうです。
こんなに立派な都市、ぎっしりとビルが立ち並び、水
辺と緑などの景観に配慮された未来都市が短期間に建
設できていることに大変大きな驚きを受けました。

13. 日本国内の首都移転の議論と、韓国から学んだこと
日本国内の首都機能の移転については、昭和、平成の
時代から東京一極集中による過密の解消や大規模災害
への対応など、様々な理由から議論され続けており、
首相の諮問機関である「国会等移転審議会」が平成11
年に移転の候補地として、１０地域を挙げられていま
したが、現時点で具体的なことは何も決まっていない、
進捗していない状況です。
国土交通省の「首都機能移転の考え方」や報道等の経
緯や現状なども確認しましたが、まだ国民的な議論に
なっておらず、賛否も含めた意見の集約もできていな
い状況にあることがわかりました。
私自身は生まれてからずっと東京で育っており、「東
京一極集中」で東京に様々なリソースが集まっている
ことは実感しています。「東京はとても便利」という
プラスの認識を持っていて。混雑などは感じる時はあ
るものの、一極集中の弊害、というものは体感できて
いません。
一方で、地方の人口減少、経済の衰退などは視察をし
たり、全国の自治体議員の方とお話しする中で、感じ
ている部分はあります。

14. 日本国内の首都移転の議論と、韓国から学んだこと
しかし、今は全国各地で地方創生の取り組みも進んでおり、
「首都機能を日本のどこかに移転して、東京一極集中をや
める」必要性は個人的には感じていません。
首都機能移転については、住んでいる地域や立場などによ
り、様々な意見を持っている人はいると思いますが、「首
都機能移転が必要かどうか」「するとしたらいつどこで、
どのような方法でやればよいのか」と議論ができる状況に
は至ってないように思えます。
今回、韓国のセジョン市を視察したことで、「首都機能移
転」について、実際に起こったらどんな感じかが少しイ
メージできました。
日本と韓国では行政の仕組みや、政治の意思決定の方法、
国民性など違う部分もあり、同じような形で実現できるか
はわかりませんが、韓国の事例からは学べる部分は大きい
と思います。大変良い刺激になり、人脈もできましたので、
これからの江東区政に提言できる部分などは行っていきた
いと思います。

15. ほぼ週刊あやこcaféラジオで紹介しています
今回も先週に引き続き韓国の先進事例を視察する
プログラムに参加した際に学んだ内容のご報告で
す。２０１２年にソウルから行政機能を移したセ
ジョン市を訪れ、その最新ICT事情、街並みやまち
づくりのについて目にしたこと感じたことをお話
しています。また日本の首都移転の議論の現状に
ついてもお話しています。ひご視聴ください。
今回は先日韓国の先進事例を視察するプログ
ラムに参加しまして、そのご報告、最新ICT事
情のお話です。 最先端を行く電子政府のサー
ビスやネットワーク化された監視カメラなど
色々とご紹介しているのでぜひご視聴くださ
い。今後、江東区に提案できるものはやって
いきたいと思います。
韓国視察報告①
最新ICT事情ー『国連電子政府ランキング世界2
位』『スマホ１つで行政手続き』『ネットワー
クされた監視カメラ（CCTV）』
【ほぼ週刊あやこcafeラジオ 第３１回】
韓国視察報告② 行政中心複合都市「セジョン
市」ってどんな都市？日本の首都移転の議論は
進んでいるの？
【ほぼ週刊あやこcafeラジオ 第３２回】