研修医人工呼吸セミナー2008
- 8. 病態に合わせた人工呼吸器設定
• 動脈血ガス分析結果が悪い:危機的状況から脱せない
• 通常の条件では換気できない:非生理的な圧力が必要
• 自発呼吸と合わせにくい
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今日のポイント
今日のポイント
今日はあまり扱いません
注意点:このセッションでは、患者の自発呼吸のない「調節呼吸」の条件で考えます。
• その他の特殊な例:
新生児、重度のエアリークのある患者 などなど
動脈血ガス結果が悪い
動脈血酸素分圧が低い:酸素化障害
動脈血炭酸ガス分圧が高い:換気障害
質問3:あなたの経験を振り返る
酸素分圧が低い場合、炭酸ガス分圧が高い場合
原因疾患を挙げてみましょう
その対策を挙げてみましょう
原因疾患
対策
酸素化分圧が低い
炭酸ガス分圧が高い
8
- 12. 病態に合わせた人工呼吸器設定
PreQuiz
呼吸不全患者に人工呼吸器が装着されている。自発呼
吸はなく、volume control 換気で管理が行われてい
る。設定は、1回換気量500ml 呼吸回数12回/分
吸気流速35L/分 プラトー時間は0秒、PEEP
5cmH2Oである。以下の問いに答えよ。
呼吸不全患者に人工呼吸器が装着されている。自発呼
1. 以下の設定変更は平均気道内圧をどう変えるか。
考えてみよう。ただし、他の設定は変えないもの
とする。
よ。
吸はなく、pressure control 換気で管理が行われて
いる。設定は、最高気道内圧30cmH2O(above
PEEPでは15cmH2O)、PEEP15cmH2O、呼吸回
数20回/分 吸気時間1秒である。以下の問いに答え
4. この設定で、気道内圧が理想的に変化していたも
のとして、以下の指標を求めよ。
1回換気量を増やす(上がる 下がる 変化な
し)
a)
吸呼気比( )
b) 平均気道内圧( )
呼吸回数を増やす(上がる 下がる 変化なし)
5. 以下の設定変更は1回換気量をどう変えるか。た
だし、他の設定は変えないものとする。PEEPを
上げる場合には、最高気道内圧はそのまま
35cmH2Oになるように調節する。
PEEPを上げる(上がる 下がる 変化なし)
吸気流速を下げる(上がる 下がる 変化なし)
プラトーを長くする(上がる 下がる 変化なし)
2. 以下の設定変更は、最高気道内圧をどう変える
か。
PEEPを上げる(増加 減少 変化なし)
最高気道内圧を上げる(増加 減少 変化なし)
1回換気量を増やす(上がる 下がる 変化なし)
6. 以下の設定変更は、分時換気量をどう変えるか。
呼吸回数を増やす(上がる 下がる 変化なし)
呼吸回数を上げる(増加 減少 変化なし その
他)
PEEPを上げる(上がる 下がる 変化なし)
吸気流速を下げる(上がる 下がる 変化なし)
吸気時間を延ばす(増加 減少 変化なし その
他)
プラトーを長くする(上がる 下がる 変化なし)
3. 上級者問題:以下の設定変更は最高肺胞内圧(プ
ラトー圧)をどう変えるか
呼吸不全患者に人工呼吸器が装着されている。自発呼
吸はなく、volume control ventilationで管理が行わ
1回換気量を増やす(上がる 下がる 変化なし)
れている。設定は、1回換気量500ml 呼吸回数12
呼吸回数を増やす(上がる 下がる 変化なし)
回/分 吸気流速35L/分 プラトー時間は0
PEEPを上げる(上がる 下がる 変化なし)
秒、PEEP 5cmH2Oである。以下の問いに答えよ。
吸気流速を下げる(上がる 下がる 変化なし)
7. この設定を、1回換気量250ml、呼吸回数24回と
した場合に、分時換気量は同等である。この場
合、以下の指標はどう変化すると考えられるか。
プラトーを長くする(上がる 下がる 変化なし)
最高気道内圧(上がる 下がる 変化なし)
平均気道内圧(上がる 下がる 変化なし)
動脈血炭酸ガス分圧(上がる 下がる 変化なし)
お互いの考えを相談して決めてみましょう。
次に、実際に1!6について人工呼吸器をさわって確認しましょう。
12
- 21. 病態に合わせた人工呼吸器設定
参考:基本となる「ARDSネット」の人工呼吸プロトコール
換気モード:量コントロールのアシスト換気
1回換気量:Predicted body weight (PBW) 1kgあたり6ml(6ml/kgPBW)
注:実体重あたり5.2ml/kg程度であったとされている。
気道内圧:プラトー圧を30-35cmH2O未満にする 困難な場合には4ml/kgPBWまで1回換気量を下げる
酸素飽和度:SaO2/SpO2を88-95%の間に保つ PaO2では55-80mmHgを目標とする
PEEP:以下の表を参考に設定する(表1)。ポイント:FiO2を50%からさらに上げる前にPEEPは
10cmH2Oにする。その後、High PEEPのプロトコールの有効性が検討されてたが、生存率を改善させる効果
がはっきりしないとされた。このHigh PEEPのプロトコールを表2に示した。
呼吸回数:pHができるだけ7.30以上が保たれるように調節する(35回まで)
アシドーシス対策:
pHが7.15未満になった場合には、一回換気量やプラトー圧を設定以上にすることを容認する
pHが7.15未満になった場合には、重炭酸の緩徐静注による補正をおこなう
PaCO2が20mmHg以下にもかかわらず、pHが7.25未満になった場合にも、重炭酸による補正を行う
PEEP設定の原則
表1:FiO2ごとのPEEP初期設定: 目標とする酸素飽和度が保たれる設定を選択
FiO2
PEEP
0.3 0.4 0.4 0.5 0.5 0.6 0.7 0.7 0.7 0.8 0.9 0.9 0.9
5
5
8
8
10
10
10
12
14
14
14
16
1.0
18 18-24
ポイント:FiO2を0.5以上にする前に、PEEPは10にする。FiO2を0.7以上にする前に、PEEPは14にする。
表2:参考 High PEEPのプロトコール <注意!>表1のプロトコールに比して改善はなかった
FiO2
0.3 0.3 0.4 0.4 0.5 0.5 0.5-0.8 0.8 0.9
PEEP
12
14
14
16
16
18
20
22
22
1.0
22-24
注:High PEEPプロトコールは、ランダム化比較試験で検討され通常のプロトコールに比較して生存率を改善する
効果は示されなかった(NEJM 351: 327-336, 2004年)。また、多くの患者では、PEEP 10cmH2Oまでに酸
素化は改善する。それ以上のPEEPに反応してさらに酸素化が改善するかどうかは、個々の患者の肺の状態に強く
依存することが示唆されている(NEJM 354: 1775-86, 2006年)。
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- 22. 病態に合わせた人工呼吸器設定
身長・性別でのPredicted body weight (PBW)とARDSネットのプロトコールで用いられた1回換気量の換算表
身長cm
PBW kg
男性
6ml/kgPBW 4ml/kgPBW
PBW kg
女性
6ml/kgPBW
4ml/kgPBW
134
33.3
200
133
28.8
173
115
136
35.1
211
140
30.6
184
122
138
36.9
221
148
32.4
194
130
140
38.7
232
155
34.2
205
137
142
40.5
243
162
36
216
144
144
42.4
254
170
37.9
227
152
146
44.2
265
177
39.7
238
159
148
46
276
184
41.5
249
166
150
47.8
287
191
43.3
260
173
152
49.6
298
198
45.1
271
180
154
51.5
309
206
47
282
188
156
53.3
320
213
48.8
293
195
158
55.1
331
220
50.6
304
202
160
56.9
341
228
52.4
314
210
162
58.7
352
235
54.2
325
217
164
60.6
364
242
56.1
337
224
166
62.4
374
250
57.9
347
232
168
64.2
385
257
59.7
358
239
170
66
396
264
61.5
369
246
172
67.8
407
271
63.3
380
253
174
69.7
418
279
65.2
391
261
176
71.5
429
286
67
402
268
178
73.3
440
293
68.8
413
275
180
75.1
451
300
70.6
424
282
注:この表はARDSネットのプロトコールの理解のために示したものである。PBWは身長と性別で決められる。このプロト
コールの一方で、実際の患者の体重(actual body weight)を指標とした研究や調査も多い。ARDSネットの低一回換気量の
論文の患者の平均体重はPBWの20%程度大きく、実際の体重あたりの一回換気量は低一回換気量グループで平均5ml/kg程
度、通常一回換気量グループで10ml/kg程度であったとされている。論文や研究結果を見る場合には、どの「体重」を用いて
いるか確認しておく必要がある。
ガイドライン使用上の注意点: このガイドラインの目的は、生存率の改善と人工呼吸器装着時間の短縮である。一
時的な酸素化の改善効果では、肺保護アプローチは劣っている。しかしながら、最終的な転帰は改善する。肺保護
アプローチは、一時的な生理学的指標の改善ではなく、生存率の改善をもたらす治療戦略である。
文献
Fan E, Needham DM, Stewart TE: Ventilatory management of acute lung injury and acute respiratory
distress syndrome. JAMA 294: 2889-2896, 2005.
Gattinoni LG, Caironi P, Cressoni M et al: Lung recruitment in patients with the acute respiratory
distress syndrome. N Engl J Med 354: 1775-1786, 2006.
Bernard GR: Acute respiratory distress syndrome: a historical perspective. Am J Respir Crit Care Med
172: 798-806, 2005.
Kallet RH: Evidence-based management of acute lung injury and acute respiratory distress syndrome.
Respir Care 49: 793-809, 2004.
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