地域医療の中核を担う自治体病院の約半数が赤字を計上する今日、自治体病院の効率化と経営改善が叫ばれている。しかしながら、自治体病院の中には、不採算医療や僻地医療の問題を抱え、国や自治体からの補助金等を除いた医業収支単体での黒字化が困難な状況が見受けられる。そこで、本研究では、病院オープンデータを用いて、黒字経営においてキーとなる指標の抽出と抽出された指標間の関係性を分析することで、黒字化に向けた策とその可能性を検討することを目的とした。
自治体病院に関しては、総務省地方公営企業年鑑を始めとして、多くのデータが公開されており、組織としての透明性の確保や維持に努めている。そこで、本研究では、国内681施設の市町村立病院を対象として、データベースを構築し、施設毎に各指標を集約した。そして、DPC/PDPS(Diagnosis Procedure Combination/Per-Diem Payment System;診断群分類包括評価)を導入済みの中規模自治体病院90施設(200-399床)を対象として、回帰分析、因子分析、共分散構造分析を適用して解析を行った。
分析の結果、20項目のキーとなる指標が抽出され、指標は6つのカテゴリー「地域特性」「医療・介護ニーズ」「受療件数」「入院単価」「外来単価」「経営財務」に集約された。また、カテゴリー間の関係性については、「地域特性」から「医療・介護ニーズ」「受療件数」「入院単価」に有意に影響し、「受療件数」から「入院単価」「外来単価」に有意に影響を与え、最終的に「経営財務」に対しては「受療件数」「入院単価」が影響を与えていることが示唆された。