The Quality Parasport Participation Framework

1. Integrating insights from the
parasport community to
understand optimal experiences:
The Quality Parasport
Participation Framework
Evans et al (2018)

2. 身体活動の参加者は、健常者より障がい者の方が少ない（van den
Berg-Emonsら、2010；Martin Ginisら、2010）
パラスポーツ（＝障がい者のためのスポーツ）は、障がい者の身体活
動を促進させる可能性がある（RimmerとRowland、2008）
→アクセスの改善、パラスポーツの経験によりさらに促進できるか？
最適なスポーツ経験とは、「個人のポジティブな体験とネガティブな
体験とのバランスにより基本的に規定される」
阻害要因
・競技開始及び参加継続：施設管理者へのアクセシビリティの事前確
認、クラス分け及び装具の修正等のクラシファイアへの相談
・スポーツの機会の創出：政策（プログラム予算等）、地域（器具の
有無等）、施設（設計等）、人間関係（他人の目等）
・コーチやチームメイトとの人間関係（トレーニングニーズの把握と
強化、パラスポーツ参加へのPR、チームの社会的孤立化等）
・社会的価値：アスリートとしての自我の確立、チームメイトとの
チーム形成、コミュニティとの交流等

3. 目的：
最適な経験を記述する方法で、科学的根拠を用いた質の高いパラスポーツ参
加の枠組みを開発すること
→パラスポーツ参加の質の定義、参加枠組みの原則の設定、競技団体が支援
する条件の特定を行う
方法：
１．先行研究の指標（23項目）について、診療ガイドラインを定量評価す
る国際的なツールであるAGREE II評価法（Brouwersら、2010）を用
いて以下の6つの主要な観点から評価→①指針の範疇とねらい、②エン
ドユーザーの視点、③厳密さの追求、④実践に影響を与える指針の実施、
⑤現実的な意味合いを持つこと、⑥本研究の限界
２．質の高いパラスポーツ参加の枠組みは、（1）その指針の範疇とねらい、
（2）文献レビュー、（3）ステークホルダーの知見を整理する過程を
通して開発された

4. （1）範疇とねらい：コアメンバーが以下の観点から議論
・目的→これまでの知見を整理した上で、配慮すべき事項及び今後の研究基
盤となる概念を提示し、パラスポーツのプログラムの策定や評価の在り方を
提言すること
・現場からの声→「参加後のポジティブな反応とは？」、「それらを促進す
るプログラムをどう策定するか？」、「質の高い経験をどう一般化、どう個
別化・独自性をもたせるか」
・ターゲットとなる対象→地域スポーツの関係者やコーチ
・エンドユーザー→年齢・競技レベル・競技種目に寄らないアスリートやそ
の家族及び障がい者に関わる競技団体等
（2）文献レビュー：Martin Ginisらの総論（2017）を中心に実施
（3）ステークホルダーの知見：
①根拠に基づいた枠組みの原則のたたき台：14個の原則（案）
②ステークホルダーへの調査：地域の家族、コーチ、アスリート、事務局
へのオンライン調査（N＝80）→順位付け（1番から14番）、フリードマ
ン検定＋ウィルコクソンの符号順位検定＋Kendall のW係数で順位付け
の合意性を検定、専門家による2時間の会議ｘ２回（N=16）
③枠組みの形成：文献レビュー、地域オンライン調査、2時間の会議の内容
④ステークホルダーからのフィードバック：研究者14名＋地方競技団体6名
のオンライン調査（N＝20）：5段階尺度
⑤枠組みの最終版の完成：修正版→コアメンバーによる最終版

5. 図1．質の高いパラスポーツ参加の枠組み
結果：

6. 図3．25個の条件（社会的環境）図2．25個の条件（物理的環境・活動）

7. 図4．質の高いパラスポーツ参加の枠組みにおける各要因の交互作用

8. 質の高い参加の定義：「アスリートによるスポーツ関与が満足で楽し
く、個人的に価値のある結果を生み出すという広い意味での主観的な
評価」
質の高い経験の定義：「アスリートによるパラスポーツ体験が自身の
スポーツの価値とニーズを1つ以上満足できるかの満足感と楽しさを
含む自己評価の状況
→スポーツ参加を通じた6つの体感で獲得される：①自律性、②帰属
性、③挑戦の経験、④従事感、⑤習熟感、⑥意義）
質の高い経験を支援する３つの条件：競技団体とメンバーによる①ス
ポーツ活動、②物理的な環境、③社会的環境
（スポーツ活動又はある場面におけるルール、施設、規範的な信念、
ポリシー等に関連し、これらは単に参加が起こるための場合もあれば、
質の高い経験を支援する場合も）

9. 本研究は、ステークホルダーと協力した枠組み構築の前に、文献レ
ビューを通してパラスポーツ参加に関する重要なテーマと概念を整理
する過程を経て地域に根ざした開発を行った
その結果、特にパラスポーツ経験の個別性が高いことが分かった
この枠組みが最適な経験の中核の要素（例：コア動機）であるという
先行研究と一致する一方で、最終的には、質の高い経験を定義する能
力が個人の中にあるというヒューマニストの立場に立っている
（Robbins、2008）
考察：

10. 本枠組みから得られた12項目の指標は、パラスポーツ経験の質を評価する
指標として活用できる可能性がある（Caronら、準備中）
転用戦略：ユーザーが使いやすいツールとして落とし込むため、本研究者
たちはオンラインで以下のリソースを公開している（www.cdpp.ca）
・本枠組みを分かりやすく視覚化した冊子
・プログラム実施者向けのプログラム自己評価ツール
まだ転用の初期段階であり、今後実践で最大活用されるために今後、更な
る研究が望まれる
出版後の5年後、本枠組みの見直しを行い、更新する予定