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グローバルベンチャー
キャピタルの最新動向 :
PREQINとVERTEXによる共同スタディ
2019年9月
Preqin & Vertex © 2019 1
目次
All rights reserved. The entire contents of Global Venture Capital Perspectives: A Preqin & Vertex Study are the Copyright of Preqin Ltd. No part of this publication or any information contained in it
may be copied, transmitted by any electronic means, or stored in any electronic or other data storage medium, or printed or published in any document, report or publication, without the express
prior written approval of Preqin Ltd. The information presented in Global Venture Capital Perspectives: A Preqin & Vertex Study is for information purposes only and does not constitute and should
not be construed as a solicitation or other offer, or recommendation to acquire or dispose of any investment or to engage in any other transaction, or as advice of any nature whatsoever. If the
reader seeks advice rather than information then he should seek an independent financial advisor and hereby agrees that he will not hold Preqin Ltd. responsible in law or equity for any decisions
of whatever nature the reader makes or refrains from making following its use of Global Venture Capital Perspectives: A Preqin & Vertex Study. While reasonable efforts have been made to obtain
information from sources that are believed to be accurate, and to confirm the accuracy of such information wherever possible, Preqin Ltd. does not make any representation or warranty that the
information or opinions contained in Global Venture Capital Perspectives: A Preqin & Vertex Study are accurate, reliable, up-to-date or complete. Although every reasonable effort has been made
to ensure the accuracy of this publication Preqin Ltd. does not accept any responsibility for any errors or omissions within Global Venture Capital Perspectives: A Preqin & Vertex Study or for any
expense or other loss alleged to have arisen in any way with a reader’s use of this publication.
Data Pack
The data behind all of the charts featured in this report is available to download for free. Ready-made charts are
also included that can be used for presentations, marketing materials and company reports.
To download the data pack, please visit: www.preqin.com/GVCP19
プロローグ
4 前書きPreqin CEO
Mark O'Hare, Preqin
6 前書きVertex Holdings CEO
Chua Kee Lock, Vertex Holdings
8 エグゼクティブサマリー
グローバルベンチャーキャピタル
12 世界の資金調達動向
16 ファンドマネジャーとAUM:
1兆米ドルへの道のり
18 世界中で注目を集めるベンチャーキャピタル
20 世界のディールとエグジット
24 グローバルパフォーマンス
28 フォーカス:その他地域
ベンチャーキャピタルエコシステム
32 Vertex イノべーションパートナーシップ
Chua Kee Lock, Vertex Holdings
34 フォーカス:北東アジア
36 東南アジアの未来に向けた投資
Chua Joo Hock, Vertex Ventures SEA & India
40 フォーカス:ASEAN
42 インドで次のITユニコーン企業を育てる
Ben Mathias, Vertex Ventures Southeast Asia &
India
45 フォーカス:南アジア
48 中国:経済変革期における有望な投資機会とは
Tay Choon Chong, Vertex Ventures China
51 フォーカス:中華圏
54 欧州におけるIT企業への投資
Jean Schmitt, Jolt Capital
58 フォーカス:欧州
60 スタートアップの国からスケールアップの国へ
Yanai Oron, Vertex Ventures Israel
63 フォーカス:イスラエル
66 米国: 堅調なエンタープライズ向けテクノロジー
Insik Rhee, Vertex Ventures US
69 フォーカス:北米
PREQINとVERTEXのラウンドテーブル
74 ラウンドテーブル:人工知能(AI)— Vertex の展望
81 ラウンドテーブル:グロースベンチャーキャピタル
の投資機会
86 ラウンドテーブル:躍動するVC—グローバルLP投
資家の視点
グローバルベンチャーキャピタルの最新動向 : PREQINとVERTEXによる共同スタディ
2
プロローグ
PreqinとVertexの共同執筆レポート
Preqin & Vertex © 2019 3
グローバルベンチャーキャピタルの最新動向 : PREQINとVERTEXによる共同スタディ
前書き
Preqin CEO
PreqinとVertexの共同執筆レポート「グローバルベンチ
ャーキャピタルの最新動向 : PreqinとVertexによる共
同スタディ」を手にしていただきありがとうございます。
なぜベンチャーキャピタル(VC)業界に焦点をあてたの
か― VCは1960年代を起点とし、他のアセットクラスの先
駆者となったことからプライベートキャピタルの中で最も
成熟していると言えます。しかしながらVCは、次のことか
ら最もダイナミックで活気に満ちたアセットクラスである
とも言えます:
•	 グローバルVC運用資産残高(AUM)は、過去5年間
で2倍以上に増加し、18年12月現在8,560億米ドル
に達しました。同期間において、年率17%の成長を
遂げています。
•	 この成長の結果、VC業界の市場規模は6.06兆米ドル
となり、プライベート資産市場全体の14%を占めてお
り、今後数年以内に、AUMで1兆米ドルに達すること
が予測されています。
•	 VCには、多様かつ独特なエコシステムがあります。こ
のレポートでは、VC投資に関わる5,000以上のアクテ
ィブなGPと、5,000以上のアクティブなLPの動向につ
いて解説しています。
•	 VCはグローバルコミュニティです。米国は引き続き
GPとLPの最大のエコシステムを持つ「VCの本拠地」
ですが、その他の地域も注目されています。アジアの
中では、世界トップ10のVC企業のうち3社が拠点を
置く中国(他7社は米国拠点)の注目度が高まってい
ます。
VCの役割と目的は、全ての産業における新たなアイデア
や事業に投資をすることです。中でも、テクノロジー、ヘ
ルスケア、人工知能関連の新たなベンチャーに資金を供
給することで、LP投資家に「次の大きな何か」から得られ
る膨大なリターンを提供します。したがって、VCは経済発
展のみならず、人類最大の課題を解決する上でも重要な
役割を担っています――良いことをして、成功するという
ことです。VCは、本質的にグローバル化を進めており、世
界経済の動向だけでなく、アジア太平洋地域および中国
経済の成長も反映しています。
このレポートを通じ、どのようなディールが行われている
か、どのような企業に投資されているか等の各地域の投
資環境を見てみると、世界的に一貫した巨大なテーマが
あることに気が付くでしょう。より多くのスタートアップ
企業がVCファンドマネジャーから資金提供を受け入れ、
ほとんどの地域でディール数が増加しています。同時に、
ディールの価値や取引規模は速いペースで成長していま
す。
平均取引規模の急成長は何を意味するのか―企業のライ
フサイクルを通じ、成長中のビジネスにより多くの資金を
提供することで、VCはスタートアップ企業の事業規模拡
大に貢献していると言えます。一方で、高まるバリュエー
ションに注視する必要があります。今日のエントリーバリ
ュエーションは、LPに十分な機会利益を与える余地はあ
るといえるか。
リターンの良さは言うまでもありません。世界金融危機後
のVCファンドのIRRは良好なため(24ページを参照)、LP
はVCファンドにより多くの資金を配分するようになり、力
強い資金調達環境と業界の成長を支えています。ここで
Mark O’Hare
Chief Executive Officer, Preqin
4
ベンチャーキャピタルは
経済発展のみならず、人
類最大の課題を解決する
上でも重要な役割を担っ
ています。
課題となるのは、キャッシュフローです。業界が急速に成
長するなか、VCは非常に多くの新しい(および大規模な)
ビジネスに資金を提供しています。このような環境下、ド
ローダウン及び投資への資金を確保するため、VCのキャ
ッシュフローはLPに分配されるリターンよりも大きくなっ
ています(24ページを参照)。一方LPは、高いIRRパフォ
ーマンスによりもたらされる分配を期待しています。世界
のVC産業が驚異的な勢いで成長するなか、必然的に期待
リターンを上回る良質な投資を行うことの重要性が高ま
っています。
VCは、革新的なビジネスに資金を供給し、LPに高いリタ
ーンを提供しながら、世界的に大きな成長を遂げ、著しい
勢いで進化しています。Preqinは、お客様とオルタナティ
ブ業界をサポートするデータやインサイトを提供できるこ
とを誇りに思っています。
また、このレポートをVertexと一緒に出版できたことを嬉
しく思うと同時に、このレポートがお客様にとって役立つ
ものとなり、弊社とお客様との関係を深められるきっか
けになること願っています。
Preqin & Vertex © 2019 5
グローバルベンチャーキャピタルの最新動向 : PREQINとVERTEXによる共同スタディ
前書き
Vertex Holdings CEO
私たちは2018年に初めてPreqinと共同で、Asia’s
Venture Capital Eclipse: A Preqin & Vertex
Ventures Studyを発行しました。このレポートの主たる
目的は、両社の共通の関心である、投資家やステークホ
ルダー、より広いイノベーションコミュニティーに対してア
ジアのスタートアップエコシステムに関する私たちの見通
しを提供するというものでした。具体的には、Preqinが主
要なベンチャーキャピタル(VC)出資ならびにパフォーマ
ンストレンドをカバーし、Vertex Venturesのジェネラルパ
ートナーが中国、インド、東南アジアにおける投資機会や
リスクについての見解を提供しました。
今年、私たちは「グローバルベンチャーキャピタルの最
新動向 : PreqinとVertexによる共同スタディ」を発行
します。私たちのゴールは、欧州やイスラエル、日本、米
国の見方も加えることにより、グローバル市場について伝
えることです。欧州については、Jolt CapitalのManaging
PartnerからJean Schmittが、投資機会や課題を含
む現地の状況を伝えます。Vertex Venturesからは、当
社のGeneral PartnerであるTay Choon Chong、Ben
Mathias、Yanai Oron、Chua Joo Hock、Insik Rheeが、
中国、インド、イスラエル、東南アジア、米国におけるス
タートアップエコシステムの最新動向について取り上げ
ます。
日本については、最近当社が設定したVertex Master
Fund II (VMF II)に対する日本企業および機関の関心に言
及しています。VMF IIは、中国、イスラエル、米国、東南ア
ジア、インドにおけるIT分野のアーリーステージ企業に出
資する4つのファンドから構成されるVertexファンドに、ア
ンカー投資家として出資しています。また、ヘルスケアフ
ァンド、ならびに現在170以上のアーリーステージ企業を
抱える当社のポートフォリオのグロースステージ投資に特
化したグロースファンドの2つのVertexファンドにも投資
しています。
今年のレポートには、様々なステークホルダーによる視点
を含めるべく、3つのラウンドテーブルを加えました。当社
のリミテッドパートナー(LP)によるラウンドテーブルには
Brijesh Jeevarathnam(Partner & Co-Head of Global
Venture Fund Investments, Adams Street Partners)、
Roque Velasco(Managing Partner, Galdana
Ventures)、Jung Woo Sung(Managing Director &
CEO of the US, Hanwha Asset Management)、Naoto
Sato(Joint Head of the Investment Department,
Mizuho Securities Co)を迎え、投資活動やパフォーマン
ス、リスクだけでなく、どこに投資機会があり、そして今後
ベンチャーキャピタルを取り巻く状況がどのように発展し
ていくと考えるか、それぞれ見解を提示して頂きました。
グロースステージのベンチャーキャピタル投資に関し
ても、ラウンドテーブルを設け、James Lee(Managing
Director, Vertex Growth Fund)がベンチャーキャピタル
のグロースステージへの投資、Vertex Growth Fundの起
源、特徴、価値創造のためのアプローチについて語ってお
ります。Richard Ji(All-Star Investment)からは、中華圏
のインターネット分野におけるグロース/レイターステー
ジのリーダーを発掘した自身のチームの素晴らしい経験
と洞察について興味深い内容を共有して頂きました。
Nikhilesh GoelとPratik Gandhiはそれぞれ、当社のグロ
ースステージポートフォリオに名を連ねるValidusならび
にInstaReMの共同創設者です。自身が経験したビジネス
Chua Kee Lock
Chief Executive Officer, Vertex Holdings
6
の成長と資金調達の過程について、そしてスペシャリスト
(グロース/レイター)ステージの投資家を探す際に求め
るものについて、率直な意見を聞かせて頂きました。
人工知能(AI)の世界的な状況について、より深い情
報を提供するため、Vertex Ventureのパートナーである
Emanuel Timor、Liu Gen Ping、Sandeep Bhadra、
Xia Zhi Jinを迎え、中国、インド、イスラエル、東南アジ
ア、米国のスタートアップエコシステムに見られる重要な
展開について語ってもらいました。彼らはまた、自身の目
を通じて見たAIの発展の方向性に関して今後の見通しを
共有しています。
世界中から破壊的で変革をもたらす将来有望なリーダー
を探し出し、彼らをグローバルなチャンピオンに育てると
いう当社のミッションに従い、Vertexは今日、独立性が高
く、かつローカライズされたベンチャーキャピタルファン
ドのグローバルネットワークとして組織されています。
イノベーションは世界中で起こっており、それゆえ最善の
投資機会を掴むためには各地域に深い知識とネットワー
クを有する必要があると信じています。その一方で、革新
的なプロダクトやサービスは、グローバルな市場をターゲ
ットにしていると考えています。グローバルかつローカル、
複数のチームからなるチームという構造のおかげで、当
社の現地に精通した投資チームは、それぞれが担当する
イノベーションエコシステムに深く関与することができま
す。これはVertexのグローバルなネットワークからのサポ
ートという当社だけのアドバンテージを確保しつつ、投資
先を探し、ポートフォリオの価値を上げるという点におい
て重要なことです。現在Vertex全体では、90名以上のベ
ンチャーキャピタルプロフェッショナルを抱え、彼らは優
れた投資家およびオペレーターとしての経験と見識を提
供しています。
私たちは、ビジネス、ポートフォリオ、経済に変革をもたら
すと同時に、人々の生活をより良いものにし、社会に貢献
する素晴らしいテクノロジー企業を多く育ててきたことを
誇りに感じています。親会社であるTemasekからのサポ
ート、これまでに培った見識および実績を生かし、Vertex
は他とは一線を画し、永続的なグローバルベンチャーキ
ャピタルプラットフォームを目指していきます。
Preqin & Vertex © 2019 7
グローバルベンチャーキャピタルの最新動向 : PREQINとVERTEXによる共同スタディ
エグゼクティブ
サマリー
近年のマクロ経済の低迷をものともせず、ベンチャーキャ
ピタル業界にはかつてないほどのエネルギーと勢いがあ
ります。前代未聞のペースで成長を続けており、18年9月
の全体運用資産残高(AUM)は過去最大の8,520億米ド
ルとなりました。
かつてはサンフランシスコにIT系エリートたちが君臨し、
シリコンバレーには世界中から起業家および投資家が集
まり、米国経済に何十億米ドルという資金をもたらしまし
た。当然、世界各地の起業ハブはこの成功を真似しよう
と試みました。
そして成功した例もあります。中国をベースにする
China State-Owned Capital Venture Investment Fund
は、1,020億人民元を記録し、過去10年間でクローズした
最大のベンチャーキャピタルファンドとなりました。これ
らのハブは、米国に追いつこうとしているだけでなく、な
かには追い越しそうなハブもあります。
この成長の背景には何があるのでしょうか?過去5年間で
ベンチャーキャピタルがどのような進化を遂げたのか、簡
単に振り返ってみましょう。
テクノロジーの役割
自社のコアビジネスを強化する破壊的なテクノロジーを
求め、ベンチャーキャピタリストたちは人工知能、自動運
転、スマートトランスポート、バイオテック、ブロックチェ
ーン等の分野に何十億米ドルという出資を行っています。
技術の進歩がスタートアップ業界を牽引し続けるなか、
2017年と2018年は、2016年に記録したピーク(1,130
億米ドル)には及ばなかったものの、グローバルなベン
チャーキャピタルによる資金調達は増加傾向となって
います。2018年の年間資金調達合計は、970億米ドル
で、2013年のほぼ2倍となりました。
アジアのベンチャーブーム
アジアに特化したファンドに対する大きな需要は、世界的
なベンチャーキャピタル業界の急速な発展の主な原動力
の一つとなっており、過去5年間で17%の年平均成長率を
記録しました。
アジアに特化したベンチャーキャピタルファンドは18
年9月の時点で3,340億米ドルのAUMを誇り、これは5
年前と比較すると750億米ドル増加しました。アジア
は、AUM3,970億米ドルの米国に肩を並べようとしていま
す。世界的なイノベーションハブとして近年台頭してきた
中国は、こうしたアジアの躍進を牽引しています。
投資家の多様化
この業界のハブとして、米国は同資産クラスで最も多く
の投資家を抱えてきました。しかし、このようなアジアの
大躍進を考慮すれば、ベンチャーキャピタルに投資する
アジアをベースとした機関投資家の数がここ5年間で倍
増したことに驚きはありません。それらの内、94% が、ア
ジアのベンチャーキャピタルへの投資をターゲットとして
います。
ディールストーリー
中国マーケットの台頭をさらに裏付けるものとして、2018
年、中華圏におけるベンチャーキャピタルディールの合計
額(1,070億米ドル)は、米国の合計額(1,050億米ドル)
を上回りました。ただし、アジアで躍進しているのは中国
だけではありません。ディールの量で言えば東南アジア
も大きな伸びを見せており、そのディールバリューの年間
総額は2018年に初めて100億米ドルを突破しました。
米国とアジア以外では、欧州でのディールアクティビティ
が、政治的に不安定な状況が続いているにも関わらず引
き続き伸びています。2018年のディールバリュー総額は
初めて200億米ドルを超えました。
8
力強いグローバルパフォーマンス
北米はベンチャーキャピタル投資において最も開拓され
た地域となっており、この地域に投資されたファンドのリ
スク・リターンプロファイルは、その他の地域に比べると
低くなっています。一方アジアに特化したファンドはハイリ
スク・ハイリターンな環境で取引していますが、この新たな
業界ハブでは新しいファンドが次々と登場しています。
ベンチャーキャピタルファンドのパフォーマンスは世界的
に堅調で、2017年には過去最高となる1,000億米ドルの
投資が集められました。
これらは私たちが近年のベンチャーキャピタル業界で読
み取った重要なトレンドの一部です。以降、世界各地のエ
コシステムやそれらを取り巻くマクロ経済トレンド等、さ
らなる詳細に触れています。
技術の進歩がスタートアップ
業界を牽引し続けるなか、
2017年と2018年は2016 年
に記録したピーク(1,130 億
米ドル)には及ばなかったも
のの、グローバルなベンチャ
ーキャピタルによる資金調達
は上昇傾向となっています。
Preqin & Vertex © 2019 9
10
グローバルベンチャーキャピタルの最新動向 : PREQINとVERTEXによる共同スタディ
グローバルベンチャー
キャピタル
投資は多様化しており、ベンチャーキャピタルは世界規模に進
化しています
11Preqin & Vertex © 2019
12
グローバルベンチャーキャピタルの最新動向 : PREQINとVERTEXによる共同スタディ
今日のスタートアップ事業の無限の可能性に魅了される
投資家が増える中、ベンチャーキャピタルは世界中の機
関投資家から毎年十億米ドルを資金調達し続けていま
す。この10年間のベンチャーキャピタルによる資金調達の
伸びの背景には、テクノロジーに特化したファンドの存在
がありました。革新的なテクノロジーに投資を行うChina
State-Owned Capital Venture Investment Fundは2016
年に1,020億人民元を調達し、過去最大のベンチャーキ
ャピタルファンドとなりました。
テクノロジーへのこだわり
スタートアップ業界を支配してきた技術革新は健全な企
業環境を産出し、ベンチャーキャピタルによる資金調達*
を強化してきました。この10年間でクローズされた最も大
きなベンチャーキャピタルファンド上位10ファンドの内、8
つがテクノロジーに特化したものです。資金調達額は
2017年から2018年にかけて若干落ち込んだものの、マー
ケットは依然として堅調に推移しています。資金調達総額
は2013年から倍以上に増加し、2018年には970億米ドル
を記録しました(図1)。
図2では、年間の資金調達総額は2016年のピークから下
がったものの、市場に参入するベンチャーキャピタルファ
ンドが資金調達においてより大きな成功を収めているこ
とが分かります。ベンチャーキャピタルによる資金調達総
額は、2016年に過去最高の1,130億米ドルを記録しました
が、同年にクローズしたファンドのうち24%が当初の目標
調達額には到達しませんでした。一方2018年にクローズ
したファンドに関しては、20%に留まっています。2019年
に入ってからクローズしたファンドのうち、目標調達額を
下回ってクローズしたものはわずか17%です。
目標調達額に達するベンチャーキャピタルファンドの割
合は近年大きくなっていますが、ファンドによって資金調
達に要する期間が異なります。図4を見ると、2018年にク
ローズしたファンドの30%は資金調達に2年以上を費やし
た一方で、2019 年上半期にクローズしたファンドのうち
34%は、6カ月以内にクローズしていることが分かります。
世界の資金調達動向
拡大する投資家需要に応じファンドマネジャーが増加、目標調達額に見合うファンドも増
加傾向
図1:世界のベンチャーキャピタルによる年間資金調達額、2007年-2019年上半期
出所: Preqin Pro
0
20
40
60
80
100
120
0
200
400
600
800
1,000
1,200
1,400
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
2017
2018
H12019
No. of Funds Closed Aggregate Capital Raised ($bn)
クローズファンド数
資金調達額(十憶米ドル)
*ベンチャーキャピタルによる資金調達データは、コーポレートベンチャーキャピタルや共同運用ファンド、
セパレートアカウントも含む。
クローズファンド数 資金調達額(十憶米ドル)
13Preqin & Vertex © 2019
米国市場の復活
図5が示すように、2013年から2017年にかけてアジアに特
化したベンチャーキャピタルの資金調達が盛況し、世界
の調達額のうちの大半を占めました。それ以来、北米は
最大の資金調達マーケットとしての地位を奪取し、2018
年にはマーケットシェアの約50%となりました。
依然として経験豊富な米国のファンドマネジャーの多く
は、グローバルの投資機会を求め資金調達しているた
め、資金は世界中に行き渡っていると言えます。
一例として、ニューヨークをベースに構えるTiger Global
Managementは、インドおよび中国のインターネット、
メディア、テレコムセクターに投資をするTiger Global
Private Investment Partners XIを38億米ドルでクローズ
しました(図3)。
目標資金調達額の高騰
テクノロジーの移り変わりや進化を受け、投資家の需要
は急増しています。この需要に応えるためにファンドマ
図3:過去12カ月間にクローズしたベンチャーキャピタルファンド
ファンド ファーム ファンドタイプ ファーム 本社
ファーム規模
(百万) フォーカスする地域
Tiger Global Private Investment
Partners XI
Tiger Global
Management
ベンチャーキャピタ
ル(全ステージ)
米国 3,750 USD
中国、世界、
インド、米国
Sequoia Capital China Yuan Fund Sequoia Capital
ベンチャーキャピタ
ル(全ステージ)
米国 15,000 CNY 中国
Bessemer Venture Partners X
Bessemer
Venture Partners
アーリーステージ 米国 1,850 USD
世界、インド、イスラ
エル、米国
H.I.G. Strategic Partners Fund
H.I.G. BioHealth
Partners
ベンチャーキャピタ
ル(全ステージ)
米国 1,275 USD 米国
GGV Capital VII GGV Capital
ベンチャーキャピタ
ル(全ステージ)
米国 1,090 USD 中国、米国
Abu Dhabi Catalyst Partners Mubadala Capital
ベンチャーキャピタ
ル(全ステージ)
アラブ首長国
連邦
1,000 USD アラブ首長国連邦
Morningside China USD Fund
Morningside
Venture Capital
アーリーステージ:ス
タートアップ
中国 1,000 USD 中国
Mirae Asset-Naver Asia Growth
Fund
Mirae Asset
Global
Investments
ベンチャーキャピタ
ル(全ステージ)
韓国
1,000,000
KRW
アジア、中国、イン
ド、インドネシア、日
本、韓国、ベトナム
Flagship Pioneering Special
Opportunities Fund II
Flagship
Pioneering
ベンチャーキャピタ
ル(全ステージ)
米国 824 USD 米国
Third Rock Ventures V
Third Rock
Ventures
アーリーステージ 米国 770 USD 米 国
出所: Preqin Pro. 2019年6月時点
図2:クローズしたベンチャーキャピタルファンドの資金調達成功率、2007年-2019年上半期
出所: Preqin Pro
37%
26%
13%
26% 26% 23% 27% 32% 35% 31% 30% 29% 26%
28%
33%
33%
35% 41%
33%
38%
37%
41% 45% 45% 50% 56%
35% 42%
55%
39% 33%
43%
35% 31% 24% 24% 25% 20% 17%
0%
20%
40%
60%
80%
100%
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
2017
2018
H12019
Above Target At Target Below Target
クローズ年
目標額以上 目標額 目標額以下
14
グローバルベンチャーキャピタルの最新動向 : PREQINとVERTEXによる共同スタディ
ネジャーはこれまで以上に多くのファンドを市場に持ち
込み、これと並行して目標資金調達総額が膨らんでいま
す。19年1月、マーケットには2,163ものベンチャーキャピ
タルファンドが存在し、ターゲット総額は1,560億米ドル
に上りました(図7)。
新たに登場するテクノロジースタートアップ数、並びに資
金調達市場が健全であることを考えれば、ベンチャーキ
ャピタルのファンドマネジャーは世界中で魅力的な投資
機会に投資できる可能性が高いと言えます。
図4:ベンチャーキャピタルファンドのクローズまでの平均期間、2007年-2019年上半期
出所: Preqin Pro
29% 25%
13% 12%
31%
23%
14%
24% 27%
18% 19% 20%
34%
29%
16%
25%
15%
33%
16%
21%
14% 13%
19% 17%
22%
24%
37%
40%
38%
44%
20%
37% 44% 36% 37% 35% 41% 28%
14%
5%
18% 25% 29%
16%
24% 22% 26% 23% 28% 23% 30% 28%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
2017
2018
H12019
1-6 Months 7-12 Months 13-24 Months 25 Months or More
図5:地域別世界のベンチャーキャピタルによる年間資金調達額の内訳、2007年-2019年上半期
出所: Preqin Pro
27.7 29.3 15.1 16.0
18.6
25.1 21.3
33.6
36.3 42.6 37.9
49.2 25.1
7.0 10.1 5.2
3.4
5.6
3.5
5.5
6.7
9.2 10.3 9.8
12.4
4.7
10.3 12.0 7.2
11.2
26.5
17.0
9.0
27.1 41.7 57.1 48.2
31.1 10.8
2.8 2.5 1.7 1.5 2.3 3.7 2.1 2.3 2.5 3.1 5.4 4.7 3.2
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
2017
2018
H12019
North America Europe Asia Rest of World
資金調達総額(十憶米ドル)
クローズ年
クローズ年
1-6カ月 7-12カ月 13-24カ月 25カ月またはそれ以上
北米 欧州 アジア その他地域
15Preqin & Vertex © 2019
図6:ストラテジー別ベンチャーキャピタルの資金調達額の推移、2007年-2019年上半期
出所: Preqin Pro
0
20
40
60
80
100
120
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
2017
2018
H12019
Early Stage Early Stage: Seed Early Stage: Start-up Expansion/Late Stage Venture Capital (General)
図7:ベンチャーキャピタルファンドの資金調達の推移、2010年-2019年
出所: Preqin Pro
0
50
100
150
200
250
0
500
1,000
1,500
2,000
2,500
Jan-10
Jan-11
Jan-12
Jan-13
Jan-14
Jan-15
Jan-16
Jan-17
Jan-18
Jan-19
Jul-19
No. of Funds Raising Aggregate Capital Targeted ($bn)
調達中のファンド数
目標資金調達額(十億米ドル)
クローズ年
アーリーステージ:スタートアップアーリーステージ
拡大期/レイタース
テージ
アーリーステージ:シード
ベンチャーキャピタル(全ステージ)
調達中のファンド数 目標資金調達額(十億米ドル)
資金調達額(十億米ドル)
16
グローバルベンチャーキャピタルの最新動向 : PREQINとVERTEXによる共同スタディ
世界のベンチャーキャピタル業界は過去5年間で、17%の
年間成長率を記録する等、急速に拡大しています。18年
12月のベンチャーキャピタル運用資産残高(AUM)は、
過去最大の8,560億米ドルとなり、業界におけるマイルス
トーンである1兆米ドルに着実に近づいています(図8)。
なお、この数値は、プライベートエクイティとベンチャーキ
ャピタル合算資産総額の3分の1に相当します。
ここでは、グローバルなベンチャーキャピタルの台頭を牽
引する主な原動力について見ていきます。
アジアのベンチャーキャピタルの急成長
アジアに特化したベンチャーキャピタルファンドに対する
投資家の需要は、グローバルなベンチャーキャピタルの
急速な拡大において重要な役割を果たしています。図10
を見てください。2007年から2018年にかけてのアジアの
ベンチャーキャピタルのAUMの伸びを、北米のベンチャ
ーキャピタルと比較したものです。二つの地域の差が急
激に縮まりつつあるのが分かります。
18年12月時点でのその差はわずか740億米ドルです。
北米に特化したベンチャーキャピタルファンドのAUMは
3,970億米ドルで、一方アジアをターゲットとするファンド
のAUMは3,230億米ドルとなっています。わずか5年前、
北米に焦点を置くベンチャーキャピタルのAUM(2,410億
米ドル)は、アジアに狙いを定めるベンチャーキャピタル
のAUM(720億米ドル)の2倍を優に超えていました。
アジアのベンチャーキャピタルに向けられた投資家の需
要の背景には一体何があるのでしょうか?一言で言えば、
中国です。一人あたりの国民所得では若干米国を下回る
中国ですが、イノベーションという点においては急速に力
を付けてきています。
確かに、北京や上海は世界的なイノベーションのハブとし
て認識されるようになり、ベンチャーキャピタルも数十億
米ドルという資金を集めています。
ファンドマネジャー
とAUM:1兆米ドルへ
の道のり
アジアに特化したベンチャーファンドに投資家の注目が集まるなか、業界のAUMは過去最
高を記録
図8:グローバルベンチャーキャピタルの運用資産残高、2007年-2018年
出所: Preqin Pro
112 110 105 101 105 98 102 110 119 146 198 243
173 161 175 210 225 245 290 332 362
401
472
613
0
100
200
300
400
500
600
700
800
900
Dec-07
Dec-08
Dec-09
Dec-10
Dec-11
Dec-12
Dec-13
Dec-14
Dec-15
Dec-16
Dec-17
Dec-18
Dry Powder ($bn) Unrealized Value ($bn)
AUM(十億米ドル)
未実現損益(十億米ドル)ドライパウダー(十億米ドル)
17Preqin & Vertex © 2019
明るい未来
数十億米ドルという資金力を誇るアジアに特化したベン
チャーキャピタルファンドは、この地域のイノベーション
の急速な発展の恩恵を受ける絶好のポジションにありま
す。アジアベースのベンチャーキャピタルファンドのトップ
10は、その全てが中国に本社を置いており、中国はベンチ
ャーキャピタル界における強い存在感を示しています。
図10:主要地域のベンチャーキャピタル運用資産残高(北米対アジア)、2007年-2018年
出所: Preqin Pro
203
186 190 200 212 213
241
272 283
301
343
397
27 31 33
50 54 64 72 85
107
142
210
323
0
50
100
150
200
250
300
350
400
450
Dec-07
Dec-08
Dec-09
Dec-10
Dec-11
Dec-12
Dec-13
Dec-14
Dec-15
Dec-16
Dec-17
Dec-18North America Asia
2,240 1,186 919
335 312
97121 118
図9:地域別ベンチャーキャピタルファンドマネジャーの数
北米 中華圏 欧州 北東アジア その他の地域南アジア ASEAN イスラエル
出所: Preqin Pro
図11:地域別ベンチャーキャピタルファンドマネジャーの設定ファンド数の内訳
出所: Preqin Pro
51% 55% 60% 62%
31%
32% 23%
30%
9%
9%
8%
5%9% 5% 9%
3%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
90%
100%
North America Europe Asia Rest of World
1 Fund Raised 2-3 Funds Raised 4-5 Funds Raised 6 or More Funds Raised
北米 欧州 アジア その他地域
AUM(十億米ドル)
北米 アジア
設定済みファンド数:1 設定済みファンド数:2-3 設定済みファンド数:4-5 設定済みファンド数:6以上
18
グローバルベンチャーキャピタルの最新動向 : PREQINとVERTEXによる共同スタディ
ベンチャーキャピタルファンドは、投資家のポートフォリ
オの多くにとって 重要な構成要素となっています。プライ
ベートマーケットにおいて史上最高のリターンをもたらす
可能性(25ページ)を持っており、これらのファンドはよ
り保守的なリスク/リワードプロファイルにより、その他の
プライベートマーケットストラテジーを補完しています。
その一方で、ベンチャーキャピタルへの投資の利点はパ
フォーマンスだけではありません。多くの投資家が、例え
ばフィンテックといった関連業界における将来的な応用
についてより深い理解を得られるよう、技術革新の最前
線へのアクセスを求めています。
長年続く高いリターンと、注目を集めたサクセスストーリ
ーを受けて、ベンチャーキャピタル投資家の世界はファン
ド数、そしてマーケットに投じられる資金総額の両面にお
いて拡大してきました。
2016年以降、ベンチャーキャピタル業界には、毎年平均
1,000億米ドルの機関投資家の資金が投じられています。
アクティブな機関投資家の数は過去5年間で50%増加し
ましたが、その中でもアジアが顕著な伸びを示しています
(図12)。
成長は世界規模で
最も多くの投資家を抱える米国は、ベンチャーキャピタ
ル業界の長年のハブです。米国に拠点を置く機関投資家
の数はこの5年間で順調に伸びている一方で、ベンチャー
キャピタルに対する投資家の増加は世界規模となってい
ます。世界中のあらゆるベンチャーキャピタルが存在感
を増しつつあり、国内外の機関投資家から資金を集めて
います。
ベンチャーキャピタルに投資するアジアの機関投資家の
数は過去5年間で倍増しました。この急成長は、アジア
がこの業界の世界的な拡大を後押ししていることを意味
しています。世界的なベンチャーキャピタル投資家の地
域別資産配分をみると、米国への配分率は過去5年間で
2013年の55%から50%へと減少しました(図13)。
また、より多くの投資家がいる地域には、より多くの投資
機会があると言えます。実際にアジアに拠点を置く投資
世界中で注目を集める
ベンチャーキャピタル
力強いパフォーマンスとテクノロジーインサイトは引き続き投資家の関心の的
0
1,000
2,000
3,000
4,000
5,000
6,000
2015 2016 2017 2018 2019
North America Europe Greater China
Northeast Asia ASEAN South Asia
Israel Rest of World
図12:地域別ベンチャーキャピタル投資家数
2015年-2019年
出所: Preqin Pro
50%
24%
8%
6%
2%
2%
1% 7%
North America
Europe
Greater China
Northeast Asia
ASEAN
South Asia
Israel
Rest of World
図13:地域別ベンチャーキャピタル投資家の割合
出所: Preqin Pro
北米
北東アジア
中華圏
南アジア
イスラエル
欧州
ASEAN
その他地域
北米
欧州
中華圏
北東アジア
ASEAN
南アジア
イスラエル
その他地域
19Preqin & Vertex © 2019
家の94%が、アジアのベンチャーキャピタルへの投資を
ターゲットとしています。
様々な投資家に向けた投資機会
ベンチャーキャピタルの投資家層には多様性がありま
す。ベンチャーキャピタルファンドへの最低投資額は、そ
の他のプライベートキャピタルファンドタイプと比較して
小さいことから、広範囲の機関投資家からの投資を受け
入れることができます。オルタナティブ資産における最も
アクティブな機関投資家の一つとして、年金基金ならびに
各種基金はベンチャーキャピタル投資家の大きな割合を
占めています(図14)。
未来に向けた課題
ベンチャーキャピタルの資金調達は長年にわたって順調
に行われてきました。米国とアジアが圧倒的な力を持つ
マーケットにおいて、欧州の投資家がより強固な足掛か
りを築こうとしている兆候が見られます。実際、欧州に拠
点を置く148の投資家が、今後12ヶ月間において積極的
に投資をする方針を示しています。
ベンチャーキャピタルへの投資にはチャレンジもありま
す。プールされたファンドに対する投資家の高い需要、共
同投資やセパレートアカウントのような、よりカスタマイ
ズされた投資資産に対する高い需要を受け、ジェネラル
パートナーとの関係構築は依然として重要だと考えられ
ます。また、ファンドの選択も重要です。ベンチャーキャ
ピタルファンドのパフォーマンス上位25%と下位25%の差
は大きくなっています(28ページ)。
ベンチャーキャピタルへの資産配分による恩恵は、高い
リターンだけでなく、イノベーションを世界の最前列で見
る機会を享受できることにもあります。これらを手にする
には、前述のチャレンジを乗り越えなければいけません。
図15:地域別世界のベンチャーキャピタル投資家の運用資産残高(AUM)
出所: Preqin Pro. Data, 2019年6月時点
56,567
39,891
26,539
13,673
1,830 1,398 1,194
9,054
50
17
89
55
29
17
44
30
0
10
20
30
40
50
60
70
80
90
100
0
10,000
20,000
30,000
40,000
50,000
60,000
Europe North
America
Northeast
Asia
Greater
China
ASEAN South
Asia
Israel Rest of
World
Sum of AUM ($bn) Average AUM ($bn)
平均AUM(十億米ドル)
図14:タイプ別世界のベンチャーキャピタル投資家
出所: Preqin Pro
13%
10%
9% 9% 8% 8%
7% 6% 6% 6% 5%
4% 4%
6%
Foundation
PrivateSectorPension
Fund
FamilyOffice
CorporateInvestor
EndowmentPlan
PublicPensionFund
Bank
InsuranceCompany
FundofFunds
Manager
InvestmentCompany
WealthManager
AssetManager
GovernmentAgency
Other
民間年金基金
ファミリーオフィス
機関投資家
寄付基金
公的年金基金
銀行
保険会社
ファンドオブファンズ
投資会社
ウェルスマネジャー
アセットマネジャー
政府機関
その他
AUM (十憶米ドル) 平均AUM (十億米ドル)
AUM(十億米ドル)
欧州 北米 北東アジア 中華圏 ASEAN 南アジア イスラエル その他地域
基金
20
グローバルベンチャーキャピタルの最新動向 : PREQINとVERTEXによる共同スタディ
世界のベンチャーキャピタルのディール総額は、過去5 年
間で急増しました。ディール数は、毎年比較的安定してい
るものの規模が大きくなっています。2013年には、670 万
米ドルだった平均ディールサイズは、2018年には2,300 万
米ドルに上昇しました。
毎年、多くの資産がベンチャーキャピタルに投資されるよ
うになっており、これにより各投資ラウンドは拡大傾向に
あります。2013年には存在しなかったメガディール(十億
米ドルの価値がつくもの)ですが、2018年には24件のメ
ガディールがクローズされました。
中国が米国を上回る
2018年、北米では他の地域と比較して最も多くのベンチ
ャーキャピタルディール(5,781件)がありました(図16)。
しかし、中華圏で行われた4,727件のディールの総額は
1,070億米ドルとなり、米国の1,050億米ドルを上回りまし
た。中華圏はここ数年でスタートアップにとって魅力的な
ハブとなっており、その中でもテクノロジーならびに人工
知能に焦点を置くスタートアップの多くが同地域に拠点
を置いています。中華圏におけるディールを取り巻く状況
は良好である一方、エグジットの状況は厳しいものとなっ
ています。中華圏の投資環境が比較的発展途上であるた
めに、エグジットレベルは低くなっていると考えられます。
ただし、同地域が今後発展し、さらに資金が入ってくるよ
うになれば、エグジットレベルも上昇するでしょう。2018
年の中華圏でのエグジット総額は410億米ドルで、これは
米国の半分以下です。しかし、410億米ドルという数字は
2017年のエグジットバリュー総額(130億米ドル)の2倍以
上となっています。
緩やかな成長を遂げ安定した欧州
米国と中国に押される形となり、欧州のベンチャーキャ
ピタル市場は高い成長を実現できていません。図16が示
すように、2009年以降の欧州のディール締結数の継続的
な増加は、同地域のベンチャーキャピタルの発展を意味
しています。ディール額も大きくなっており、2018年には
3,025件のトランザクションを通じ、ディール総額220億
米ドルを記録しました。平均ディールサイズは2013年から
2018年にかけて430万米ドルから860万米ドルに増大しま
した。しかし、この増加も、米国と中国に比較すると低く
なっています。
世界のディールと
エグジット
中国でのディールが最高額に達し、北米は史上初のエグジット数値を記録
図16: 地域別ベンチャーキャピタルディール*、2007年-2019年上半期
出所: Preqin Pro
0
50
100
150
200
250
300
0
4,000
8,000
12,000
16,000
20,000
2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 H1 2019
North America Europe Greater China
South Asia Northeast Asia Israel
ASEAN Rest of World Aggregate Deal Value ($bn)
ディール数
ディールバリュー総額(十憶米ドル)
*アドオン企業および資産、助成金、合併、セカンダリー株式買付、ベンチャーデットを除く。
北米 欧州 中華圏
南アジア 北東アジア イスラエル
ASEAN その他地域 ディールバリュー総額(十憶米ドル)
21Preqin & Vertex © 2019
2018年のエグジット件数は201件、その総額は180億米ド
ルと、欧州は近年で最も活発なベンチャーキャピタルエグ
ジットを記録しました。スウェーデンのSpotifyや英国の
Funding CircleのIPOがその一例です。しかし欧州におい
て大型エグジット案件は比較的少なく、小さなディールに
よるエグジットが多くなっています。
アジアと北米に先行を許していた欧州のベンチャーキャ
ピタルファンドですが、近年政治的および経済的な不透
明性が高まる環境にも関わらず、2018年には過去最高と
なる資金調達額130億米ドルを記録しました。成長スピー
ドは、緩やかなものの、欧州のベンチャーキャピタルの
機会に対する需要は高まりつつあるとも言えます。
エグジットの動向
世界のエグジットバリュー総額は2018年に劇的に伸び、
史上最高の1,700億米ドルを記録しました(図18)。同時
に、合計エグジット数は2017年の記録から減少に転じて
います。前述の通り、世界で最も多くのエグジットを記録
したのは米国で、その総額(880億米ドル)は他地域を大
きく引き離す結果となりました。これは、2017年総額の
300億米ドルを上回り、過去最大となりました。
さらに多くの機会がアジアのベンチャーキャピタル市場
に生まれています。今後も力強いディールメイキングの継
続が予想され、米中貿易の議論も同地域に健全な競争を
もたらす要素になると考えられます。
図17:2019年上半期の主要ベンチャーキャピタルディール*
企業名
ディール
時期 ステージ
ディールサ
イズ(百万) 投資家 業界 国
WeWork Companies Inc. 19年1月 非公開 2,000 USD SoftBank 商業用不動産 米国
Grab Holdings Inc.** 19年3月
シリーズH /
ラウンド8
1,460 USD SB Investment Advisers 交通サービス
シンガポ
ール
OneWeb LLC 19年3月 非公開 1,250 USD
Qualcomm Ventures, SoftBank,
Government of Rwanda, Grupo
Salinas
インターネット 米国
Rappi S.A.S. 19年4月 非公開 1,000 USD
SB Investment Advisers, Softbank
Latin America Ventures
インターネット コロンビア
Go-Jek Indonesia 19年4月
シリーズF/
ラウンド6
920 USD
JD.com, Tencent, Google Inc.,
Mitsubishi Corporation, Provident
Capital
インターネット
インドネ
シア
Horizon Robotics***
19年2
月
シリーズ
B /ラウン
ド2
600 USD
China Oceanwide Holdings Group,
Morningside Venture Capital,
CLSA Capital Partners, Linear
Venture, V Fund, Hillhouse Capital
Management, SK China, SK Hynix,
China Minsheng Investment Group,
CITIC Securities International,
Oceanpine Capital
ソフトウェア 中国
出所: Preqin Pro
図18:地域別ベンチャーキャピタルエグジット、2007年-2019年上半期
出所: Preqin Pro
0
20
40
60
80
100
120
140
160
180
0
200
400
600
800
1,000
1,200
1,400
1,600
1,800
2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 H1 2019
North America Europe Greater China
South Asia Northeast Asia Israel
ASEAN Rest of World Aggregate Exit Value ($bn)
エグジット数
エグジットバリュー総額(十憶米ドル)
*アドオン企業および資産、助成金、合併、セカンダリー株式買付、ベンチャーデットを除く。
**Vertex Ventures SEA & IndiaはGrabの第1号機関投資家で、資金調達ラウンドシリーズA、B、C に投資。
***Vertex Ventures Chinaは資金調達ラウンドシリーズAに投資。
北米 欧州 中華圏
南アジア 北東アジア イスラエル
ASEAN その他地域 ディールバリュー総額(十憶米ドル)
22
グローバルベンチャーキャピタルの最新動向 : PREQINとVERTEXによる共同スタディ
図19:2019年上半期の主要ベンチャーキャピタルエグジット
企業名 投資家(エントリー)
調達総額(百万、
公開データ)
Uber Technologies, Inc.**
Axel Springer AG, Baidu, Barclays, Benchmark Capital, BlackRock, Caspian Venture
Capital, Citigroup, Didi Chuxing, Dragoneer Investment Group, Fidelity Investments,
First Round Capital, Founder Collective, Glade Brook Capital Partners, Goldman
Sachs, Goldman Sachs Merchant Banking Division, GV, Innovation Endeavors,
Kleiner Perkins Caufield & Byers, Kumpulan Wang Persaraan, LetterOne, Lone
Pine Capital, Lowercase Capital, Menlo Ventures, Microsoft, Morgan Stanley, New
Enterprise Associates, Public Investment Fund, Qatar Investment Authority, SB
Investment Advisers, SBT Venture Capital, Sequoia Capital, Signatures Capital
Partners, SoftBank, Summit Partners, Summit Series, Tata Capital Private Equity,
Tencent, Times Internet, Toyota Financial Services, Toyota Motor Corporation, TPG,
Tuesday Capital, Valiant Capital Partners, Wellington Management
14,741 USD
Slack Technologies,
Inc.**
Accel, Andreessen Horowitz, Atlassian Pty. Ltd., Baillie Gifford, Comcast Ventures,
Dragoneer Investment Group, DST Global, FundersClub, General Atlantic,
GGV Capital, Global Founders Capital, GV, Horizons Ventures, Index Ventures,
Institutional Venture Partners, Kleiner Perkins Caufield & Byers, Riverside Ventures,
Sands Capital Ventures, SB Investment Advisers, Social Capital, Spark Capital, SV
Angel, T Rowe Price, Thrive Capital, Wellington Management
1,217 USD
Auris Health, Inc.
Coatue Management, D1 Capital Partners, E15VC, Highland Capital, Highland
Capital Partners, Lux Capital Management, Mithril Capital Management, NaviMed
Capital, Partner Fund Management, Section 32, Senator Investment Group, Viking
Global Investors, Wellington Management
783 USD
Looker Data Sciences,
Inc.
CapitalG, Cross Creek Advisors, First Round Capital, Geodesic Capital, Goldman
Sachs, Kleiner Perkins Caufield & Byers, Meritech Capital Partners, PivotNorth
Capital, PremjiInvest, Redpoint Ventures, Sapphire Ventures
281 USD
Lyft, Inc.**
AB, Alibaba Group, Andreessen Horowitz, AutoTech Ventures, Baillie Gifford,
CapitalG, Chromo Invest, Coatue Management, Didi Chuxing, Facebook, Fidelity
Management & Research Company, Flat World Partners, Floodgate, Fontinalis
Partners, Fortress Investment Group, Founders Fund, General Motors, Glade Brook
Capital Partners, Graphene Ventures, Icahn Enterprises, InMotion Ventures, Janus
Capital Group, K9 Ventures, Kingdom Holding Company, KKR, Machine Shop
Ventures, Magna International, Mayfield, Olympus Partners, Ooga Labs, Public
Sector Pension Investment Board, Rakuten, Inc., Senator Investment Group,
SharesPost, Tencent, Third Point Management, UTA Capital
4,913 USD
Bigo Technology Pte. Ltd.
BAI Fund, Gaorong Capital, Morningside Venture Capital, Ping An Insurance Group,
YY
272 USD
Pinterest, Inc.**
Acequia Capital, Andreessen Horowitz, Bessemer Venture Partners, Blisce,
Fidelity Investments, FirstMark Capital, Founders Circle Capital, Goldman Sachs,
Manatt Venture Fund, Rakuten, Inc., SV Angel, Valiant Capital Partners, Wellington
Management, You & Mr Jones
1,466 USD
Harry's, Inc.
Alliance Consumer Growth, BoxGroup, Grace Beauty Capital, Harrison Metal
Capital, Highland Capital Partners, Lakestar, Red Swan Ventures, SV Angel, Tao
Capital Partners, Temasek Holdings, Thrive Capital, Thrive Capital Partners, Tiger
Global Management, Wellington Management
463 USD
Paragon Bioservices, Inc. Camden Partners, Eagle Private Capital, NewSpring Capital 22 USD
Peloton Therapeutics,
Inc.
BVF Partners, Cancer Prevention & Research Institute of Texas, Curative Ventures,
Driehaus Capital Management LLC, EcoR1 Capital, Eventide Asset Management,
Foresite Capital, Nextech Invest, OrbiMed Advisors, RA Capital, Remeditex Ventures,
The Column Group, Tichenor Ventures, Topspin Partners, Vida Ventures
254 USD
**部分的なエグジット
23Preqin & Vertex © 2019
エグジットタ
イプ
エグジット
時期
エグジット
バリュー(百万)
エグジット先
(買収者) 業界 エコシステム 国
IPO 19年5月 8,100 USD - 交通サービス 米国 米国
IPO 19年6月 4,560 USD - 通信 米国 米国
トレードセール 19年2月 3,400 USD Ethicon, Inc. 医療機器および 装置 米国 米国
トレードセール 19年6月 2,600 USD Google Inc. ソフトウェア 米国 米国
IPO 19年3月 2,340 USD - 交通サービス 米国 米国
トレードセール Mar-19 1,453 USD YY インターネット ASEAN シンガポール
IPO Apr-19 1,430 USD - インターネット 米国 米国
トレードセール May-19 1,370 USD
Edgewell Personal
Care Company
コンシューマ製品 米国 米国
トレードセール Apr-19 1,200 USD Catalent, Inc. 医薬品 米国 米国
トレードセール May-19 1,050 USD Merck バイオテクノロジー 米国 米国
出所: Preqin Pro
24
グローバルベンチャーキャピタルの最新動向 : PREQINとVERTEXによる共同スタディ
ベンチャーキャピタルは急速に発展している業界です。よ
り多くのファンドが業界に参入し、これまで以上の資金が
流入しています。2017年、アジアでは新たなファンドが数
多く誕生し、結果として世界のネットキャッシュフローが
激減しました。 2016年の82憶米ドルの純キャッシュフロ
ーとは対照的に、2017年のキャピタルコール済み資金は、
分配済み資金を遥かに超え、年間ネットキャッシュフロ
ーは-480億米ドルとなりました(図20)。
このレポートを通じて見てきたように、アジアのベンチャ
ーキャピタル業界は急速に成長しています。しかしなが
ら、その若さを考えれば、同アセットクラスの投資家は欧
州や米国に特化したファンドよりも高いリスクを取ってい
ると言えます。
リスクとリターン
長年にわたってベンチャーキャピタルの中心地となって
いた北米は、AUM 3,970億米ドルを有し(2018年12月時
点)、2018年に調達された同地域のファンド総額は580
億米ドルとなりました。北米をターゲットに定めるベン
チャーキャピタルファンドは、リスクを抑えたプロファイ
ルで、ある程度の潜在リターン(ただし、非常に高いとい
うわけではない)を提供し続けてきました。図21が示す
通り、アジアに軸を置くファンドはリスクがある程度高い
代わりに、期待リターンも魅力的なものとなっている一方
で、2006年から2016年に設定された北米に特化するファ
ンドのリスクリターンは相対的に低くなっています。
いくつかのテックユニコーンの出現と、ローカルエコノミ
ー全体に見られる急速なデジタル化を受けて、過去数年
さらに多くのベンチャーキャピタルファンドがアジア、中
でも特に中国に誕生しました。アジアの多くの機関投資
家にとって、依然としてベンチャーキャピタル市場は馴染
みのないものとなっています。少なくとも現時点では、欧
州および北米に特化したファンドの方が低いリスクで投
資できると言えます。
アジアと欧州の成長
アジアのベンチャーキャピタルマーケットが驚くべき速度
で発展するなか、アジアを含めたベンチャーキャピタル
ファンドのリターンを示すPrEQIn Indexのパフォーマンス
は、過去10年で突き抜けて上昇しており、他地域のパフ
グローバル
パフォーマンス
アジアおよび欧州でのパフォーマンスは堅調な一方、飽和状態のマーケットではマネジャ
ーの真価が問われる
図20: グローバルベンチャーキャピタルファンドの年間キャピタルコール、分配、ネットキャッシュフロー、
2005年-2018年
出所: Preqin Pro. Most Up-to-Date Data
-60
-40
-20
0
20
40
60
80
100
120
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
2017
2018
Capital Called up ($bn) Capital Distributed ($bn) Net Cash Flow ($bn)キャピタルコール済み資金(十億米ドル) 分配済み資金 (十億米ドル) ネットキャッシュフロー(十億米ドル)
25Preqin & Vertex © 2019
ォーマンス、およびプライベート市場全体を示すRussell
2000 TR Indexをアウトパフォームしています(図24)。
北米に狙いを絞ったファンドの同期間のインデックスパ
フォーマンスは安定しているものの、2017年のパフォー
マンスは他のどの地域よりも悪いものとなりました。ただ
し、これは北米に特化したファンドのリターンが下がった
というわけではなく、欧州に軸足を置いたファンドのパフ
ォーマンスが向上したことが背景にあります。2014年終
盤から2016年の前半にかけて、欧州に特化したファンド
のリターンが低くなっていたが為に、それ以降の実績が他
地域以上に良く出たのです。
飽和状態にあるマーケット
世界各地で新たなベンチャーキャピタルファンドが次々
と誕生しており、集められる資金は今後も高水準にな
ると予測されています。業界全体として好調に推移する
なか(特に、2016年に設定されたファンドの上位25%
は、33.9%もの高いリターンを上げています(図25))、フ
ァンドマネジャーが直面する課題は、飽和状態にある業
界の中で魅力的な投資機会を探し出せるかということに
あります。また、実際に市場の低迷期が訪れた際には、そ
のようなマーケットの中でいかに舵取りするかの力量が
求められています。
0%
5%
10%
15%
20%
25%
10% 11% 12% 13% 14%
Early Stage Expansion/Late Stage
Venture Capital (General)
図22:ベンチャーキャピタルのファンドタイプ別リス
クリターン率(設定年2006年-2016年)*
出所: Preqin Pro. Most Up-to-Date Data
リスク(ネットIRR標準偏差)
リターン(ネットIRR標準偏差)
0%
5%
10%
15%
20%
25%
30%
9% 11% 13% 15% 17% 19%
North America Europe Asia Rest of World
図21:ベンチャーキャピタルの地域別リスクリター
ン率(設定年2006年-2016年)*
出所: Preqin Pro. Most Up-to-Date Data
リターン(ネットIRR標準偏差)
*各円の大きさはファンド規模を示す。
図23:PrEQIn Indexベースファンドタイプ別ベンチャーキャピタル対パブリックマーケット(2000年12月31日
時点を100に設定)
出所: Preqin Pro
0
50
100
150
200
250
300
350
400
450
500
Dec-00
Jun-01
Dec-01
Jun-02
Dec-02
Jun-03
Dec-03
Jun-04
Dec-04
Jun-05
Dec-05
Jun-06
Dec-06
Jun-07
Dec-07
Jun-08
Dec-08
Jun-09
Dec-09
Jun-10
Dec-10
Jun-11
Dec-11
Jun-12
Dec-12
Jun-13
Dec-13
Jun-14
Dec-14
Jun-15
Dec-15
Jun-16
Dec-16
Jun-17
Dec-17
Jun-18
Dec-18
Early Stage Expansion/Late Stage Venture Capital (General) Russell 2000 TR
インデックスリターン
(2000年12月31日時点を100に設定)
リスク(ネットIRR標準偏差)
北米 欧州 アジア その他地域
アーリーステージ 拡大期/レイタース
テージベンチャーキャピタル
(全ステージ)
アーリーステージ 拡大期/レイターステージ ベンチャーキャピタル(全ステージ) Russell 2000 TR
26
グローバルベンチャーキャピタルの最新動向 : PREQINとVERTEXによる共同スタディ
図24:PrEQInインデックスベース投資地域別ベンチャーキャピタル対パブリックマーケット(2007年12月31日
時点を100に設定)
出所: Preqin Pro
0
50
100
150
200
250
300
350
400 Dec-07
Jun-08
Dec-08
Jun-09
Dec-09
Jun-10
Dec-10
Jun-11
Dec-11
Jun-12
Dec-12
Jun-13
Dec-13
Jun-14
Dec-14
Jun-15
Dec-15
Jun-16
Dec-16
Jun-17
Dec-17
Jun-18
Dec-18
North America Europe Asia & Rest of World Russell 2000 TR
図25:ベンチャーキャピタルのビンテージイヤー別ネットIRR(中央値と上位四分の一)
出所: Preqin Pro. Most Up-to-Date Data
-20%
-10%
0%
10%
20%
30%
40%
2000
2001
2002
2003
2004
2005
2006
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
Top Quartile Net IRR Boundary Median Net IRR Bottom Quartile Net IRR Boundary
インデックスリターン
(2007年12月31日時点を100に設定)
設定来ネットIRR
ビンテージイヤー
北米 欧州 アジアおよびその他地域 Russell 2000 TR
ネットIRR(上位四分の一) ネットIRR(中央値) ネットIRR(下位四分の一)
27Preqin & Vertex © 2019
28
グローバルベンチャーキャピタルの最新動向 : PREQINとVERTEXによる共同スタディ
フォーカス:
その他地域
*アドオン企業および資産、助成金、合併、セカンダリー株式買付、ベンチャーデットを除く。
「その他の地域」にはアフリカ、オーストラリア、ラテン米国、中近東が含まれる。
0.0
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
0
5
10
15
20
25
30
35
40
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
2017
2018
H12019
No. of Funds Closed Aggregate Capital Raised ($bn)
図26:その他地域のベンチャーキャピタル年間資金
調達、2007年-2019年上半期
出所: Preqin Pro
クローズファンド数
資金調達額(十億米ドル)
南米で初の10億米ドルディールが誕生した事実は、ベンチャーキャピタル市場が世界全体
で発展していることを示唆しています
図28:2019年上半期のその他地域における主要ベンチャーキャピタルディール*
企業名
ディール
時期 ステージ
調達額
(百万) 投資家 業界 国
Rappi S.A.S. 19年4月 非公開 1,000 USD
SB Investment Advisers, Softbank Latin
America Ventures
インター
ネット
コロンビア
Creditas
Soluções
Financeiras
Ltda.
19年6月
シリーズD /
ラウンド4
231 USD
Softbank Latin America Ventures, Vostok
Emerging Finance, Amadeus Capital
Partners, Santander InnoVentures
金融サービス ブラジル
Loggi
TECHNOLOGY
Ltd.
19年6月
シリーズE /
ラウンド5
150 USD
GGV Capital, Fifth Wall Ventures, VELT
Partners, Microsoft, SB Investment
Advisers
消費者
サービス
ブラジル
PayClip, S. de
RL de CV
19年5月 非公開 100 USD General Atlantic, SoftBank 金融サービス メキシコ
Selina LTD 19年4月
シリーズC /
ラウンド3
100 USD
Access Industries, Colony Capital,
Wiese Capital
旅行&
レジャー
パナマ
出所: Preqin Pro
5.6 6.0 6.0
8.9
10.8 10.6
13.0 13.0
13.9 14.0
16.8
20.5
0
5
10
15
20
25
Dec-07
Dec-08
Dec-09
Dec-10
Dec-11
Dec-12
Dec-13
Dec-14
Dec-15
Dec-16
Dec-17
Dec-18
Dry Powder ($bn) Unrealized Value ($bn)
図27:その他地域のベンチャーキャピタル
AUM、2007年-2018年
出所: Preqin Pro. 2019年6月時点
AUM(10億米ドル)
クローズ年
クローズファンド数 資金調達額
(十億米ドル)
未実現損益
(十憶米ドル)
ドライパウダー
(十憶米ドル)
29Preqin & Vertex © 2019
マーケットの中心は依然として米国ならびにアジアにあ
るものの、これらの成熟したマーケットにおける競争が激
化するにつれて、より多くの資金が世界各地の成長著しい
エコシステムに流れ込んでいます。
南米は近年力をつけてきたベンチャーキャピタルマーケ
ットのひとつです。この躍進の先頭に立つのが、2019年
前半に設定されたSoftbank Latin America Venturesの
SoftBank Innovation Fundで、南米全域の投資に50億
米ドルという目標を掲げています。
南米に参入するファンドが多くなるにつれて、ディール規
模も拡大しています。SoftBank Innovation Fund がコロ
ンビアに本社を置く宅配スタートアップ Rappi S.A.S. に
10億米ドルを出資したディールは、南米で初となる10億
米ドル以上のベンチャーキャピタルディールとなりました
(図28)。
2018年には200以上のトランザクションが完了され、その
総額は28億米ドルを記録しました。件数および金額共に
過去最高となりました(図30)。2019年前半だけで総額
20億米ドルのディールを成功させ、好調な滑り出しを見
せています。南米でも数十億米ドル規模のディールが多く
見られるようになっています。
世界的に見れば依然として新興マーケットであるものの、
その他の地域でのベンチャーキャピタルの活動は間違い
なく活発化しています。18年12月時点の「その他の地域」
を焦点としたドライパウダーは46億米ドルを誇っています
(図27)。投資予定資本と、2019年のコロンビア税法改
正等の近年の経済改革を受け、これらの新興市場のエコ
システムは今後も世界から資本を呼び込むものと考えら
れます。
0
500
1,000
1,500
2,000
2,500
3,000
3,500
0
50
100
150
200
250
300 2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
2017
2018
H12019
No. of Deals Aggregate Deal Value ($mn)
図30:その他地域のベンチャーキャピタルディール*、
2007年-2019年上半期
出所: Preqin Pro
ディール数
ディールバリュー総額(百万米ドル)
*アドオン企業および資産、助成金、合併、セカンダリー株式買付、ベンチャーデットを除く。
図29:過去12ヶ月間にクローズしたその他地域に
拠点を置く主要ベンチャーキャピタルファンド
ファンド ファーム
ファーム規模
(百万) ファーム本社
Abu Dhabi
Catalyst Partners
Mubadala
Capital
1,000
USD
アラブ首長国
連邦、アブダビ
Monashees
Capital VIII
Monashees
Capital
150 USD
ブラジル、サン
パウロ
Agri-Vie II Fund EXEO Capital 146 USD
ベルビル、
南アフリカ
Ghadan
Ventures Fund
Ghadan
Ventures
353 AED
アラブ首長国
連邦、アブダビ
Iron Pillar Fund I Iron Pillar 90 USD
モーリシャス、
エベネ
出所: Preqin Pro. 2019年6月時点
ディール数 ディールバリュー総額
(百万米ドル)
29Preqin & Vertex © 2019
30
グローバルベンチャーキャピタルの最新動向 : PREQINとVERTEXによる共同スタディ
ベンチャーキャピタル
エコシステム
世界各地のイノべーションハブの深層に迫る
31Preqin & Vertex © 2019
32
グローバルベンチャーキャピタルの最新動向 : PREQINとVERTEXによる共同スタディ
Vertex イノべーション
パートナーシップ
Vertexが直近組成した(Vertexが現地チームを有す
る)米国、イスラエル、中国、インド、東南アジア等の国
の次なるユニコーン企業をターゲットとした7億米ドル
超のフィーダーファンドに日本企業が投資家として参加
しています。
日本をベースにした機関投資家が海外への投資を積極
化させてきた動きを捉えたものです。コーポレートベンチ
ャーキャピタルを含めた、日本のベンチャーキャピタルの
2018年の国外企業に対する投資額は2017年の2倍となり
ました。投資金額としては10億米ドルに倍増したわけで
すが、これは同年のスタートアップに出資された総額22
億米ドルの約半分に相当します。
日本をベースとした機関投資家とパートナーシップを結ぶ
ことで、我々はVertexのイノべーションパートナーシップ
を既存の投資家、およびTemasekのポートフォリオの域
を超えたものに拡大しようと試みています。当社の新しい
ファンドの投資家は、日本企業と日本国外のスタートアッ
プを繋げる役割を果たしてくれると期待しています。
日本企業がこれまで以上にイノべーションパートナーシ
ップや海外スタートアップ投資を進めている理由につい
てはどうお考えですか?
潤沢な資産を保有し、主に日本を中心とした堅調な事業
を展開する多くの日本企業が、新たなマーケットや事業
変革の可能性を求めています。こうした企業は、自分たち
の成長戦略にポジティブな影響をもたらす可能性のある
破壊的なテクノロジーやビジネスモデルを学ぶことに積
極的です。実際、我々のポートフォリオに名を連ねるスタ
ートアップ企業の多くが、革新的なテクノロジーを求める
日本企業からの問合せを頻繁に受けています。
こうした動きを踏まえ、例えば北京を拠点とするロジステ
ィクスや倉庫自動化ソリューションに使われる先進ロボテ
ィクスおよびAIテクノロジーを提供するGeek+は、東京に
も支社を構えています。これは日本におけるクライアント
リレーションを進化・拡大させ、費用対効果の高い方法で
クライアント企業のオペレーション効率化を推進していこ
うとしているためです。
日本企業が関心を持つテクノロジースタートアップでは
他にどういった企業がありますか?
送金や貸付の新たなビジネスモデルを探している日本
の銀行にとって、当社のポートフォリオ内のフィンテック
企業は関心を引く存在です。例えばシンガポール発の
soCashは一般店舗やカフェ、スーパーでATMのように現
金がおろせる仕組みをアプリを通じて提供しています。
サイバーセキュリティーもその一例です。当社のスタート
アップは、日本の鉄道や飛行機、モビリティといった交通
分野やユーティリティー分野の企業が自社の重要なアセ
ット / インフラストラクチャーをサイバー攻撃から保護す
ることを支援しています。当社のポートフォリオには、米
国発のCyberArkのように、高度なサイバー脅威をプロア
クティブに阻止できるソリューションを有するスタートアッ
プもありますが、同社は米国に加え、アジア太平洋地域、
およびEMEA地域(欧州、中東、アフリカ)にまでオフィス
網を広げています。
Chua Kee Lock
CEO, Vertex Holdings
Vertexは日本企業の海外投資機会の見定めをサポート
33Preqin & Vertex © 2019
イノべーションパートナーシップと共同投資の機会によっ
て、Vertexは日本企業と将来有望な(そして破壊的な、あ
るいは大胆なトランスフォーメーションを可能にする)国
外スタートアップとが繋がる橋渡し役を果たしています。
投資家およびスタートアップがVertexを選ぶのはなぜ
でしょうか?キーとなる差別化ポイントを教えてください。
当社は、アーリーステージを投資対象とする、4つのIT特
化のローカルファンドと(拠点:中国、インド、東南アジ
ア、イスラエル、米国)、ヘルスケア特化のグローバルファ
ンドから構成されていますが、それぞれが独立運営かつ、
ローカル市場に精通したベンチャー投資家・オペレータ
ーです。また、ポートフォリオ内のアーリーステージ企業の
フォローオン機会を狙う、グロースステージを投資対象と
したファンドも保有しています。
このネットワーク設計のおかげで、我々のパートナーは
最高の企業にアクセスすることが可能であり、それが投
資家から選ばれる理由になっています。また、投資を受
けたスタートアップにとっては、Vertexの世界的なネット
ワークとTemasekのポートフォリオを活用することで、海
外へより大きく事業展開できる点を差別化要因となって
います。
事業開発の他に、Vertexネットワークとしてどのような
サポートを提供しているのでしょうか?
スタートアップが成功を収め、ハイペースで成長していく
為には人的資産が極めて重要です。Vertexでは、金融資
本や事業開発の機会を提供する他に、ポートフォリオ企
業の採用活動も積極的にサポートしています。
Chua Kee Lockの経歴
Chua Kee LockはVertex HoldingsのCEOとして、Vertex全体の投資戦略の方向性を示す役割を果たしている。投資関連
の実務経験から様々な企業のマネジメントまで豊富な経験を有する。
VertexのCEO就任以前は、インターヴェンション心臓病学や救命救急処置に使われる医療機器の開発 / 製造を手掛ける
シンガポールの上場企業、Biosensors社のPresidentおよびExecutive Directorを務めた。2003年から2006年にかけて
は、米国に本社を置くべンチャーキャピタルWalden International社のManaging Directorとして南アジアマーケットの
投資活動の総責任者を務めた。
潤沢な資産を保有し、主に
日本を中心とした堅調な事
業を展開する多くの日本企
業が、新たなマーケットや事
業変革の可能性を求めてい
ます。
34
グローバルベンチャーキャピタルの最新動向 : PREQINとVERTEXによる共同スタディ
フォーカス:
北東アジア
*アドオン企業および資産、助成金、合併、セカンダリー株式買付、ベンチャーデットを除く。
0
1
2
3
4
5
6
0
20
40
60
80
100
120
140
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
2017
2018
H12019
No. of Funds Closed Aggregate Capital Raised ($bn)
図31:北東アジアのベンチャーキャピタル年間資金
調達、2007年-2019年上半期
出所: Preqin Pro
クローズファンド数
資金調達額(十億米ドル)
クローズ年
1.7 1.7 2.1 2.3
3.8
5.0
6.0
7.3
9.5
17.6
19.4
24.8
0
5
10
15
20
25
30
Dec-07
Dec-08
Dec-09
Dec-10
Dec-11
Dec-12
Dec-13
Dec-14
Dec-15
Dec-16
Dec-17
Dec-18
Dry Powder ($bn) Unrealized Value ($bn)
図32:北東アジアのベンチャーキャピタルAUM、
2007年-2018年
出所: Preqin Pro. 2019年6月時点
ベンチャーキャピタリストにとって先端IT技術は注目すべき投資セクター
図33:2019年上半期の北東アジアにおける主要ベンチャーキャピタルディール*
企業名
ディール
時期 ステージ
調達額
(百万) 投資家 業界 国
Yanolja Co., Ltd. 19年6月
シリーズD /
ラウンド4
180 USD GIC, Booking Holdings
インター
ネット
韓国
Kurly Inc. 19年4月
シリーズD /
ラウンド4
100,000
KRW
Global Venture Partners, Sequoia Capital
インター
ネット
韓国
Ground X 19年3月 シード
100,000
KRW
IDG Capital, Crescendo Equity Partners,
TransLink Capital
ソフトウ
ェア
韓国
Socar 19年1月 非公開 50,000 KRW
Softbank Ventures Asia, Altos Ventures,
Stonebridge Capital, KB Investment
通信 韓国
Pixie Dust
Technologies,
Inc.
19年4月
シリーズB /
ラウンド2
3,846 JPY
INCJ, Ltd, SBI Investment, Toppan
Printing, SMBC Venture Capital,
Mizuho Capital, K4 Ventures, Venture
Labo Investment, Dentsu, Global
Brain Corporation, Dai-ichi Life Asset
Management Co. Ltd
ソフトウ
ェア
日本
出所: Preqin Pro
AUM(十億米ドル)
クローズファンド数 資金調達額
(十億米ドル)
ドライパウダー
(十億米ドル)
未実現損益
(十億米ドル)
35Preqin & Vertex © 2019
ベンチャーキャピタルのアセットクラスは北東アジアで膨
らんできており、そのAUMは過去5年間で2倍以上に増え
ています。現在、北東アジアに投資されている250億米ド
ルの大部分(190億米ドル)が未実現損益であり(図32)、
これは日本ならびに韓国のベンチャーキャピタルマネジ
ャーにとって良い投資機会があることを示しています。実
際2009年末以降、ドライパウダーが未実現損益を上回っ
たことはありません。
但し、急速な増加の次なる現象として、北東アジアに軸足
を置いた資金調達にやや減速の兆しが見えて います。数
字を見ていくと、図31が示す通り、毎年の資金調達総額
は2014年から継続して上昇しています。そして、2018年末
時点では102のファンドがクローズし、その総額は48億米
ドルを記録しました。これは 2017年と比較してクローズ
件数としては20件の減少となりましたが、金額としては10
億米ドルの増加となりました。
ベンチャーキャピタルファーム自体の数を見ていく
と、2019年の折り返し地点では北東アジアでアクティブ
に活動するベンチャーキャピタルファームの数は335で、
このうち231が日本を、104が韓国を本拠地としていま
す。ソウルに本拠地を置く北東アジア地域最大のベンチ
ャーキャピタルファームSamsung Venture Investment
Corporationは、過去10年間で23億米ドル以上を調達し
ました。
昨年、北東アジアのベンチャーキャピタルディールの総
額はこれまでで最高となる55億米ドルに達しましたが、
これは2017年に完了したディールバリューの総額(25億
米ドル、図35)の2倍以上となります。ディール件数自体は
2017年よりも減少しました。また、2019年に関しては、上
半期時点で既に前年と同等数のディールが完了していま
す(但し、それら371件のディールバリューの総額は14億
米ドルに留まっています)。
0
1,000
2,000
3,000
4,000
5,000
6,000
0
50
100
150
200
250
300
350
400
450
500
2007
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014
2015
2016
2017
2018
H12019
No. of Deals Aggregate Deal Value ($mn)
図35:北東アジアにおけるベンチャーキャピタル
ディール*、2007年-2019年上半期
出所: Preqin Pro
ディール数
ディールバリュー総額(百万米ドル)
図34:過去12ヶ月間にクローズ北東アジアに拠点
を置く主要ベンチャーキャピタルファンド
ファンド ファーム
ファンドの
規模(十憶)
ファーム
本社
Mirae Asset-Naver
Asia Growth Fund
Mirae Asset
Global
Investments
1,000
KRW
ソウル、
韓国
Mirai Creation Fund II SPARX Group 73 JPY
東京、
日本
SBI AI & Blockchain
Fund
SBI
Investment
60 JPY
東京、
日本
MUFG Innovation
Partners I
MUFG
Innovation
Partners
20 JPY
東京、
日本
NTT Investment
Partners Fund III
NTT
DOCOMO
Ventures
20 JPY
東京、
日本
出所: Preqin Pro. 2019年6月時点
*アドオン企業および資産、助成金、合併、セカンダリー株式買付、ベンチャーデットを除く。
35Preqin & Vertex © 2019
ディール数 ディールバリュー総額
(百万米ドル)
36
グローバルベンチャーキャピタルの最新動向 : PREQINとVERTEXによる共同スタディ
東南アジアの
未来に向けた投資
東南アジアで台頭する代表的なトレンドを教えてくださ
い。特に興味を引く業界はありますか?
ミレニアル世代1
が世界人口に対して占める割合は30%
です。彼らは2025年までに労働人口の大部分を占めるこ
とが予測されており、その購買力は2020年までにジェネ
レーションXの購買力を上回るとされています。これらの
見通しを踏まえ、Vertex Ventures Southeast Asia and
Indiaのチームではこの世代の台頭に関してリサーチを行
い、彼らがいかに世界の消費動向や経済成長シナリオを
再定義しているのかに迫りました。
世界銀行のデータによると、東南アジアの2億1,400万人
のミレニアル世代はこの地域の人口の32.6%を占め、それ
は世界人口の9%に相当します。対するインドのミレニア
ル世代人口は4億5,900万人で、これはインド全体の人口
の33.9%、世界人口の19.5%にあたります。また、東南ア
ジアとインドのミレニアル世代ならではの特徴もいくつか
あります。まず、他の地域の同世代と比較して彼らはイン
ターネットをよく使います。インターネットにアクセスでき
るのはもはや都市部に住むミレニアル世代だけではあり
ません。東南アジアでは84%のミレニアル世代が、インド
では70%のミレニアル世代がインターネットを利用してい
ます。2
2018年、この2つの地域のミレニアル世代は1日平
均8.3時間をインターネットに、3時間をソーシャルメディ
アに費やしました。一方、米国、フランス、ドイツの同世代
ではそれぞれ5.1時間、1.5時間でした。次に、消費志向で
す。経済的負担の少ない東南アジアおよびインドのミレ
ニアル世代は気前の良い消費者と言えます。消費者信用
市場の登場とローンに対する抵抗感の軽減により、貯蓄
文化から消費文化へと変わりつつあります。アジアのミレ
ニアル世代の買い物や外食といった娯楽への出費は収入
の30%となっており、収入の20%に留まる貯蓄よりも多い
1
Definition: Born between 1980 and 2000
2
Using Facebook accounts as a proxy
ことが分かっています。2020年までにミレニアル世代は
3,400億米ドルを海外旅行に使うと予測されており、旅行
業界はこの積極的な消費意欲の恩恵を受ける業界の一
つです。これに加えて、一人暮らしという文化を持たない
東南アジアとインドのミレニアル世代の親との同居率は世
界平均の49%よりも高くなっています。したがって家や車
といった大きな出費の経済的なプレッシャーは後からや
ってきます。東南アジアおよびインドのミレニアル世代は
こういったコミットメントが先送りにされることで、北米
や欧州の同世代と比べ強い購買力を有しています。
このデジタルネイティブな世代は、リテールやゲーム、シ
ェアリングエコノミーにも機会をもたらしています。
リテール:社会が突き動かす消費
社会のトレンドを生み出すプロセスは、今日では、伝統的
な企業やコンテンツプラットフォームの特権ではもはや
無くなっています。編集ソフト等、多様なツールが身近に
なったことや、配信プラットフォームとしてのソーシャルメ
ディアの成長により、誰でもトレンドを生み出すことが可
Chua Joo Hock
Managing Partner, Vertex Ventures SEA & India
リテール、ゲーム、そしてプラットフォームビジネスといったセクターが盛り上がりを見せて
いるが、過熱したバリュエーションには注意が必要
37Preqin & Vertex © 2019
能な社会になりました。人々がただの受動的な消費活動
で満足していたのは過去の話で、現代の消費者はコンテ
ンツの作成やアイディア集めを通じて参加することを望
んでいます。結果として、Vogue誌のような従来型のメデ
ィアを越えた、Instagramのようなソーシャルメディアや
Kickstarterをはじめとしたクラウドソーシングサイトの活
用が増えています。このようにリテール業界において消費
者によって作られるトレンドが影響力を持つようになるな
か、パーソナライゼーションやピアドリブン(仲間意識へ
の働きかけ)と言ったマーケティング手法がより活用され
るようになっています。
ゲーム:Eスポーツの進化
直感的には繋がらないかもしれませんが、実は、ソーシャ
ル要素こそがEスポーツブームの原動力です。プレイヤー
たちはゲームの世界の中で自身の生活を再現したり、バ
ーチャルコミュニティーの中に代替現実を作りだすことが
できます。例えば Fortnite というゲームは、多数のフォロ
ワーを集め、18年4月の単月で、モバイル・PC・端末を通
じて3億米ドルもの収益を生み出しました。これは free-
to-play モデルを採用し、なるべく多くのプレイヤーをゲ
ーム内に取り入れ、ゲーム内でのアイテム購入(例えば
"skin"と呼ばれる、ゲーム上での自身の容姿や服装等)に
よって課金する仕組みになっています。ゲームを実際にプ
レイする以外にも、ストリーミングを通じてより大きなコ
ミュニティーがゲームの世界に魅了されています。多くの
ミレニアル世代はまるでフットボールの試合を見るかのよ
うに、プロのEスポーツプレイヤーが登場するリーグを観
戦するのです。18年1月、Amazonのオンラインビデオスト
リーミングプラットフォームTwitchは100万人近くの視聴
者を記録しました。これはCNNやFox News、ESPNといっ
た伝統的なテレビチャンネルに匹敵する数字です。この
プラットフォームでは多くの人のゲームプレイが実況中継
され、それを見学したり、現金で購入できる「ビッツ」とい
う仮想通貨をチップとしてプレーヤーに送ることができま
す。このように、ストリーミングやゲーム内での購買行動
等の社会的要素の中に、Eスポーツから派生した消費者
市場が存在していると言えます。
シェアリングエコノミー:
プラットフォームビジネスの進化
テクノロジーによって可能になったオンデマンドの食料品
購買やギグエコノミーのような新時代のサービスは、ミレ
ニアル世代の中で最も広く受け入れられています。マーケ
ットプレイスプラットフォームの登場や経済のデジタル化
による検索機能の向上、および輸送コストの低下に伴い
消費者は、様々な商品を、かつ適正価格で見つけられる
ようになりました。情報へのアクセスが容易になり、正当
に選択肢を見極めることが可能になった消費者は、この
ビジネスモデルに信頼を寄せるようになっています。プラ
ットフォームビジネスは今後、経験と高いスキルが要求さ
れるサービス領域に挑み、人工知能と市場からの信頼を
利用して、消費者ニーズに応えるソリューションを生み出
してくれるでしょう。
ファームの中には、アジアでは質の高いディールが少な
い、あるいは手が届きにくいと考えているファームもあ
りますね。これについてVertexはどう考えていますか?
また、東南アジアマーケットについても同じことが言え
ますか?
東南アジアにおいて良質なディールが不足しているという
ことはありません。差し迫った問題を解決しようと奮闘す
る面白い企業が次から次へと出てきています。2010年か
ら2018年の間の東南アジアへの投資総額はおよそ234億
米ドルで、2017年から2018年にかけて、ディールバリュー
は23%増えました。GoogleとTemasekによるe-Conomy
SEA Spotlight 2017によると、東南アジアのインターネ
ット人口は3億3,000万人で、世界で第3の大きさとなりま
す。これは東南アジアがより多くのIT企業の発展にとっ
て好ましい環境であるためです。2012年以降、東南アジ
アからは10のユニコーン企業(Bukalapak、Grab、Go-
Jek、Lazada、Sea、Razer、Tokopedia、Revolution
Precrafted、Traveloka、VNG)が生まれました。これら10
社のマーケットバリューの総額は340億米ドルです。
ただし、我々の懸念は過熱した資金調達とバリュエーシ
ョンにあります。ベンチャーキャピタルへの投資のペース
に関して言えば、1年あたりおよそ30億米ドルと、東南ア
ジアは10年前の中国と同じ状況にあります。インドネシ
アの成長率は東南アジアの中でも最も早く、2017年に17
億米ドルだった同国への投資は、2018年には29億米ドル
となり、約67%増加しました。しかし、急速な成長と収益
性が両立するモデルは、この地域には完全には当てはま
らないかもしれません。一例としてインドネシアのP2Pレ
ンディング(個人間融資)セクターが挙げられます。イン
ドネシアの金融サービスエージェンシー、Otoritas Jasa
Keuangan(OJK)によると、2016年から2018年の間で、
登記されたP2Pレンダーは合計11億米ドルを280万人に融
資しました。インドネシアにおける銀行口座を持たない、
十分なサービスを受けていない人々の多さを受け、P2Pレ
ンディングセクターは急速に拡大しました。しかしその成
長の速さゆえ、無秩序な国外のプレイヤーも多く入り込
み、金融の民主化を前進させるポテンシャルがあったこの
セクターの評判を落としてしまいました。また、OJKには
東南アジアのミレニアル世
代は、北米や欧州の同世代
よりも強い購買力を有して
います。
38
グローバルベンチャーキャピタルの最新動向 : PREQINとVERTEXによる共同スタディ
1,300以上の苦情が寄せられ、78の登記済みP2Pレンダ
ーに警告を出し、違法なP2Pレンディングサービスを行う
400以上のウェブサイトとアプリをブロックするよう通信
省に協力を求めました。このセクターのより厳しい規制を
目的として、OJKは、P2Pレンディング事業を営むフィンテ
ック企業に対し、事業許可を申請する条件として最低10
億インドネシアルピアのキャッシュと、25億米ドルの自己
資本を保有していることを義務付ける等新たなルールを
発令しました。
マネタイズの見通しがなく、オーバーファンディングとな
り、過大評価に陥るベンチャーは、東南アジア特有のサ
イクルとなっています。正当化できない評価にはやがて
マーケットによる修正が入ります。企業の価値評価は難
しく、従来の価値評価手法が投資家にとって意味をなさ
ない場合もあります。例えば、GrabとGo-Jekは合わせて
33の資金調達ラウンドがありました。シリーズHに向けた
Grabのプレバリュエ―ション額は110億米ドルで、45億米
ドルを調達した後、同社の評価額は140億米ドルに増加
しました。Go-JekやGrabの収益性についての公開され
ている情報を見ると、高いバリュエーションの背景には、
投資家がこうした企業の実績だけではなく、これら地域
におけるスーパーアプリの発展に強気でいることがわか
ります。
東南アジアのベンチャーキャピタル投資は、かつてない
ほど強い関心を集めています。Vertexは、東南アジアに
恵まれた投資機会が多く存在する中でも、各国の独自性
を把握し、それに応じて戦略をカスタマイズする必要が
あることを強く認識するようにしています。東南アジアで
の投資には、各国の微妙な差異を理解する必要があり、
時には忍耐力や規制に対する柔軟な考え方が必要となる
等、長年の経験が要求されます。東南アジアに新たに参
入する投資家の多くが「熱心」で、自分たちのホームグラ
ウンドで慣れ親しんだモデルが東南アジアでもそのまま
通用すると誤解しているように見受けられます。
経験の浅い投資家にとって、投資活動の理性を保ちなが
ら、モメンタム投資の誘惑に打ち勝ち、高すぎるバリュエ
ーションを受け入れてしまわぬように注意するのは非常
に困難です。残念なことに、メディアによる、どのベンチ
ャーキャピタルファンドが最もアクティブな投資家である
かという報道や「〇〇スタートアップがシリーズAのバリ
ュエ―ション最高額で調達」と謳うような報道が、この状
況をあおっています。 多くの創業者が、非現実的なバリ
ュエ―ションでの評価を求めるようになり、最高バリュエ
ーションを実現した人物としてメディアに取り上げられる
ことに必死になっているようです。VertexVenturesは一貫
して「バリュエーションを追うな」「バリュエーションに追
われるな」を基本思想としてきました。
ベンチャーキャピタルの出資を受け、世界でも大きく
話題になっている企業のいくつかがIPOを行う、また
はIPOを検討している昨今のエグジットブームのな
か、Vertexは東南アジアでのエグジットをどのように見
ていますか?
エグジットの成功として取り上げられる「上場」は、成熟し
たITエコシステムから大きな影響を受けたものと言えるで
しょう。ベストな現金化の形は地域によって異なります。
例えば東南アジアでは、上場した場合のリターンをM&A
や株式売却が上回ることがあります。買収企業が、その地
域に対して強い戦略的関心を抱いている場合に多く見ら
れます。
東南アジアでは、エグジットが起こり、それが健全な投
資のペースに寄与するという資金の再利用ができていま
す。スタートアップによるエグジット件数は、2015年から
2017年の間、3年連続で増加しました。SeaやRazer等、
名前を挙げられるIPOはわずか一握りで、それゆえ投資
家は東南アジアにおけるエグジットの状況についてネガ
ティブな見通しを抱いている可能性があります。しかし、
トレードエグジットやセカンダリー取引による現金化が
より一般的で、それらによるエグジットは2017年50件の
うち44件、2018年では47件のうち44件となりました。加
えて、GrabによるKudo、TravelokaによるPegiPegiの買
収を例にみると、東南アジアのユニコーンは他企業を買
収し、スタートアップや早期投資家に現金化の機会を与
えていることが分かります。レイターステージを主戦場と
する投資家が、コスト適正化を目的として、あるいは資金
調達ラウンドでアロケーションを得られなかったためオ
ーナーシップを得ることだけを目的として、セカンダリー
マーケットで早期投資家から株式を購入している場合も
あります。
上場は多くの地域において
一般的なエグジットのルート
ですが、東南アジアでは、買
収や株式売却がIPO以上に
大きな金銭的リターンをもた
らす可能性があります。
39Preqin & Vertex © 2019
Chua Joo Hockの経歴
Chua Joo Hockは、シンガポールを拠点として、東南アジアならびにインドにおける投資活動を率いる。1987年に
Singapore Technologies Groupに入社。同社のベンチャーキャピタル投資の草創期に関わった。この事業は1988年
にVertexとして再編された。
Vertex入社以来Joo Hockは、一貫してグローバルのベンチャーキャピタル投資に携わっており、特に米国、シンガポ
ール、台湾、インド、中国、イスラエルを専門としている。1989年から1992年、1998年から2004年の数年間を米国で過
ごし、Vertex USの投資とオペレーションの責任者を務めた。Joo Hockは1979年にシンガポール国立大学を卒業(学
士号:機械工学)。また、同大学においてMBAを取得。
このような理由から、東南アジアには、投資家にとっても
起業家にとっても、投資で大きなリターンを得られる機会
が転がっているのです。今後3年から5年の間に、東南ア
ジア発のユニコーンや企業が更に大きくなり、損失の圧
縮もしくは収益性の向上を進める中で、IPOを選択する企
業が増えていくのではないかと見ています。
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Global Venture Capital Perspectives: A Preqin & Vertex Study (Japanese)

  • 2. Preqin & Vertex © 2019 1 目次 All rights reserved. The entire contents of Global Venture Capital Perspectives: A Preqin & Vertex Study are the Copyright of Preqin Ltd. No part of this publication or any information contained in it may be copied, transmitted by any electronic means, or stored in any electronic or other data storage medium, or printed or published in any document, report or publication, without the express prior written approval of Preqin Ltd. The information presented in Global Venture Capital Perspectives: A Preqin & Vertex Study is for information purposes only and does not constitute and should not be construed as a solicitation or other offer, or recommendation to acquire or dispose of any investment or to engage in any other transaction, or as advice of any nature whatsoever. If the reader seeks advice rather than information then he should seek an independent financial advisor and hereby agrees that he will not hold Preqin Ltd. responsible in law or equity for any decisions of whatever nature the reader makes or refrains from making following its use of Global Venture Capital Perspectives: A Preqin & Vertex Study. While reasonable efforts have been made to obtain information from sources that are believed to be accurate, and to confirm the accuracy of such information wherever possible, Preqin Ltd. does not make any representation or warranty that the information or opinions contained in Global Venture Capital Perspectives: A Preqin & Vertex Study are accurate, reliable, up-to-date or complete. Although every reasonable effort has been made to ensure the accuracy of this publication Preqin Ltd. does not accept any responsibility for any errors or omissions within Global Venture Capital Perspectives: A Preqin & Vertex Study or for any expense or other loss alleged to have arisen in any way with a reader’s use of this publication. Data Pack The data behind all of the charts featured in this report is available to download for free. Ready-made charts are also included that can be used for presentations, marketing materials and company reports. To download the data pack, please visit: www.preqin.com/GVCP19 プロローグ 4 前書きPreqin CEO Mark O'Hare, Preqin 6 前書きVertex Holdings CEO Chua Kee Lock, Vertex Holdings 8 エグゼクティブサマリー グローバルベンチャーキャピタル 12 世界の資金調達動向 16 ファンドマネジャーとAUM: 1兆米ドルへの道のり 18 世界中で注目を集めるベンチャーキャピタル 20 世界のディールとエグジット 24 グローバルパフォーマンス 28 フォーカス:その他地域 ベンチャーキャピタルエコシステム 32 Vertex イノべーションパートナーシップ Chua Kee Lock, Vertex Holdings 34 フォーカス:北東アジア 36 東南アジアの未来に向けた投資 Chua Joo Hock, Vertex Ventures SEA & India 40 フォーカス:ASEAN 42 インドで次のITユニコーン企業を育てる Ben Mathias, Vertex Ventures Southeast Asia & India 45 フォーカス:南アジア 48 中国:経済変革期における有望な投資機会とは Tay Choon Chong, Vertex Ventures China 51 フォーカス:中華圏 54 欧州におけるIT企業への投資 Jean Schmitt, Jolt Capital 58 フォーカス:欧州 60 スタートアップの国からスケールアップの国へ Yanai Oron, Vertex Ventures Israel 63 フォーカス:イスラエル 66 米国: 堅調なエンタープライズ向けテクノロジー Insik Rhee, Vertex Ventures US 69 フォーカス:北米 PREQINとVERTEXのラウンドテーブル 74 ラウンドテーブル:人工知能(AI)— Vertex の展望 81 ラウンドテーブル:グロースベンチャーキャピタル の投資機会 86 ラウンドテーブル:躍動するVC—グローバルLP投 資家の視点
  • 4. Preqin & Vertex © 2019 3
  • 5. グローバルベンチャーキャピタルの最新動向 : PREQINとVERTEXによる共同スタディ 前書き Preqin CEO PreqinとVertexの共同執筆レポート「グローバルベンチ ャーキャピタルの最新動向 : PreqinとVertexによる共 同スタディ」を手にしていただきありがとうございます。 なぜベンチャーキャピタル(VC)業界に焦点をあてたの か― VCは1960年代を起点とし、他のアセットクラスの先 駆者となったことからプライベートキャピタルの中で最も 成熟していると言えます。しかしながらVCは、次のことか ら最もダイナミックで活気に満ちたアセットクラスである とも言えます: • グローバルVC運用資産残高(AUM)は、過去5年間 で2倍以上に増加し、18年12月現在8,560億米ドル に達しました。同期間において、年率17%の成長を 遂げています。 • この成長の結果、VC業界の市場規模は6.06兆米ドル となり、プライベート資産市場全体の14%を占めてお り、今後数年以内に、AUMで1兆米ドルに達すること が予測されています。 • VCには、多様かつ独特なエコシステムがあります。こ のレポートでは、VC投資に関わる5,000以上のアクテ ィブなGPと、5,000以上のアクティブなLPの動向につ いて解説しています。 • VCはグローバルコミュニティです。米国は引き続き GPとLPの最大のエコシステムを持つ「VCの本拠地」 ですが、その他の地域も注目されています。アジアの 中では、世界トップ10のVC企業のうち3社が拠点を 置く中国(他7社は米国拠点)の注目度が高まってい ます。 VCの役割と目的は、全ての産業における新たなアイデア や事業に投資をすることです。中でも、テクノロジー、ヘ ルスケア、人工知能関連の新たなベンチャーに資金を供 給することで、LP投資家に「次の大きな何か」から得られ る膨大なリターンを提供します。したがって、VCは経済発 展のみならず、人類最大の課題を解決する上でも重要な 役割を担っています――良いことをして、成功するという ことです。VCは、本質的にグローバル化を進めており、世 界経済の動向だけでなく、アジア太平洋地域および中国 経済の成長も反映しています。 このレポートを通じ、どのようなディールが行われている か、どのような企業に投資されているか等の各地域の投 資環境を見てみると、世界的に一貫した巨大なテーマが あることに気が付くでしょう。より多くのスタートアップ 企業がVCファンドマネジャーから資金提供を受け入れ、 ほとんどの地域でディール数が増加しています。同時に、 ディールの価値や取引規模は速いペースで成長していま す。 平均取引規模の急成長は何を意味するのか―企業のライ フサイクルを通じ、成長中のビジネスにより多くの資金を 提供することで、VCはスタートアップ企業の事業規模拡 大に貢献していると言えます。一方で、高まるバリュエー ションに注視する必要があります。今日のエントリーバリ ュエーションは、LPに十分な機会利益を与える余地はあ るといえるか。 リターンの良さは言うまでもありません。世界金融危機後 のVCファンドのIRRは良好なため(24ページを参照)、LP はVCファンドにより多くの資金を配分するようになり、力 強い資金調達環境と業界の成長を支えています。ここで Mark O’Hare Chief Executive Officer, Preqin 4
  • 6. ベンチャーキャピタルは 経済発展のみならず、人 類最大の課題を解決する 上でも重要な役割を担っ ています。 課題となるのは、キャッシュフローです。業界が急速に成 長するなか、VCは非常に多くの新しい(および大規模な) ビジネスに資金を提供しています。このような環境下、ド ローダウン及び投資への資金を確保するため、VCのキャ ッシュフローはLPに分配されるリターンよりも大きくなっ ています(24ページを参照)。一方LPは、高いIRRパフォ ーマンスによりもたらされる分配を期待しています。世界 のVC産業が驚異的な勢いで成長するなか、必然的に期待 リターンを上回る良質な投資を行うことの重要性が高ま っています。 VCは、革新的なビジネスに資金を供給し、LPに高いリタ ーンを提供しながら、世界的に大きな成長を遂げ、著しい 勢いで進化しています。Preqinは、お客様とオルタナティ ブ業界をサポートするデータやインサイトを提供できるこ とを誇りに思っています。 また、このレポートをVertexと一緒に出版できたことを嬉 しく思うと同時に、このレポートがお客様にとって役立つ ものとなり、弊社とお客様との関係を深められるきっか けになること願っています。 Preqin & Vertex © 2019 5
  • 7. グローバルベンチャーキャピタルの最新動向 : PREQINとVERTEXによる共同スタディ 前書き Vertex Holdings CEO 私たちは2018年に初めてPreqinと共同で、Asia’s Venture Capital Eclipse: A Preqin & Vertex Ventures Studyを発行しました。このレポートの主たる 目的は、両社の共通の関心である、投資家やステークホ ルダー、より広いイノベーションコミュニティーに対してア ジアのスタートアップエコシステムに関する私たちの見通 しを提供するというものでした。具体的には、Preqinが主 要なベンチャーキャピタル(VC)出資ならびにパフォーマ ンストレンドをカバーし、Vertex Venturesのジェネラルパ ートナーが中国、インド、東南アジアにおける投資機会や リスクについての見解を提供しました。 今年、私たちは「グローバルベンチャーキャピタルの最 新動向 : PreqinとVertexによる共同スタディ」を発行 します。私たちのゴールは、欧州やイスラエル、日本、米 国の見方も加えることにより、グローバル市場について伝 えることです。欧州については、Jolt CapitalのManaging PartnerからJean Schmittが、投資機会や課題を含 む現地の状況を伝えます。Vertex Venturesからは、当 社のGeneral PartnerであるTay Choon Chong、Ben Mathias、Yanai Oron、Chua Joo Hock、Insik Rheeが、 中国、インド、イスラエル、東南アジア、米国におけるス タートアップエコシステムの最新動向について取り上げ ます。 日本については、最近当社が設定したVertex Master Fund II (VMF II)に対する日本企業および機関の関心に言 及しています。VMF IIは、中国、イスラエル、米国、東南ア ジア、インドにおけるIT分野のアーリーステージ企業に出 資する4つのファンドから構成されるVertexファンドに、ア ンカー投資家として出資しています。また、ヘルスケアフ ァンド、ならびに現在170以上のアーリーステージ企業を 抱える当社のポートフォリオのグロースステージ投資に特 化したグロースファンドの2つのVertexファンドにも投資 しています。 今年のレポートには、様々なステークホルダーによる視点 を含めるべく、3つのラウンドテーブルを加えました。当社 のリミテッドパートナー(LP)によるラウンドテーブルには Brijesh Jeevarathnam(Partner & Co-Head of Global Venture Fund Investments, Adams Street Partners)、 Roque Velasco(Managing Partner, Galdana Ventures)、Jung Woo Sung(Managing Director & CEO of the US, Hanwha Asset Management)、Naoto Sato(Joint Head of the Investment Department, Mizuho Securities Co)を迎え、投資活動やパフォーマン ス、リスクだけでなく、どこに投資機会があり、そして今後 ベンチャーキャピタルを取り巻く状況がどのように発展し ていくと考えるか、それぞれ見解を提示して頂きました。 グロースステージのベンチャーキャピタル投資に関し ても、ラウンドテーブルを設け、James Lee(Managing Director, Vertex Growth Fund)がベンチャーキャピタル のグロースステージへの投資、Vertex Growth Fundの起 源、特徴、価値創造のためのアプローチについて語ってお ります。Richard Ji(All-Star Investment)からは、中華圏 のインターネット分野におけるグロース/レイターステー ジのリーダーを発掘した自身のチームの素晴らしい経験 と洞察について興味深い内容を共有して頂きました。 Nikhilesh GoelとPratik Gandhiはそれぞれ、当社のグロ ースステージポートフォリオに名を連ねるValidusならび にInstaReMの共同創設者です。自身が経験したビジネス Chua Kee Lock Chief Executive Officer, Vertex Holdings 6
  • 8. の成長と資金調達の過程について、そしてスペシャリスト (グロース/レイター)ステージの投資家を探す際に求め るものについて、率直な意見を聞かせて頂きました。 人工知能(AI)の世界的な状況について、より深い情 報を提供するため、Vertex Ventureのパートナーである Emanuel Timor、Liu Gen Ping、Sandeep Bhadra、 Xia Zhi Jinを迎え、中国、インド、イスラエル、東南アジ ア、米国のスタートアップエコシステムに見られる重要な 展開について語ってもらいました。彼らはまた、自身の目 を通じて見たAIの発展の方向性に関して今後の見通しを 共有しています。 世界中から破壊的で変革をもたらす将来有望なリーダー を探し出し、彼らをグローバルなチャンピオンに育てると いう当社のミッションに従い、Vertexは今日、独立性が高 く、かつローカライズされたベンチャーキャピタルファン ドのグローバルネットワークとして組織されています。 イノベーションは世界中で起こっており、それゆえ最善の 投資機会を掴むためには各地域に深い知識とネットワー クを有する必要があると信じています。その一方で、革新 的なプロダクトやサービスは、グローバルな市場をターゲ ットにしていると考えています。グローバルかつローカル、 複数のチームからなるチームという構造のおかげで、当 社の現地に精通した投資チームは、それぞれが担当する イノベーションエコシステムに深く関与することができま す。これはVertexのグローバルなネットワークからのサポ ートという当社だけのアドバンテージを確保しつつ、投資 先を探し、ポートフォリオの価値を上げるという点におい て重要なことです。現在Vertex全体では、90名以上のベ ンチャーキャピタルプロフェッショナルを抱え、彼らは優 れた投資家およびオペレーターとしての経験と見識を提 供しています。 私たちは、ビジネス、ポートフォリオ、経済に変革をもたら すと同時に、人々の生活をより良いものにし、社会に貢献 する素晴らしいテクノロジー企業を多く育ててきたことを 誇りに感じています。親会社であるTemasekからのサポ ート、これまでに培った見識および実績を生かし、Vertex は他とは一線を画し、永続的なグローバルベンチャーキ ャピタルプラットフォームを目指していきます。 Preqin & Vertex © 2019 7
  • 9. グローバルベンチャーキャピタルの最新動向 : PREQINとVERTEXによる共同スタディ エグゼクティブ サマリー 近年のマクロ経済の低迷をものともせず、ベンチャーキャ ピタル業界にはかつてないほどのエネルギーと勢いがあ ります。前代未聞のペースで成長を続けており、18年9月 の全体運用資産残高(AUM)は過去最大の8,520億米ド ルとなりました。 かつてはサンフランシスコにIT系エリートたちが君臨し、 シリコンバレーには世界中から起業家および投資家が集 まり、米国経済に何十億米ドルという資金をもたらしまし た。当然、世界各地の起業ハブはこの成功を真似しよう と試みました。 そして成功した例もあります。中国をベースにする China State-Owned Capital Venture Investment Fund は、1,020億人民元を記録し、過去10年間でクローズした 最大のベンチャーキャピタルファンドとなりました。これ らのハブは、米国に追いつこうとしているだけでなく、な かには追い越しそうなハブもあります。 この成長の背景には何があるのでしょうか?過去5年間で ベンチャーキャピタルがどのような進化を遂げたのか、簡 単に振り返ってみましょう。 テクノロジーの役割 自社のコアビジネスを強化する破壊的なテクノロジーを 求め、ベンチャーキャピタリストたちは人工知能、自動運 転、スマートトランスポート、バイオテック、ブロックチェ ーン等の分野に何十億米ドルという出資を行っています。 技術の進歩がスタートアップ業界を牽引し続けるなか、 2017年と2018年は、2016年に記録したピーク(1,130 億米ドル)には及ばなかったものの、グローバルなベン チャーキャピタルによる資金調達は増加傾向となって います。2018年の年間資金調達合計は、970億米ドル で、2013年のほぼ2倍となりました。 アジアのベンチャーブーム アジアに特化したファンドに対する大きな需要は、世界的 なベンチャーキャピタル業界の急速な発展の主な原動力 の一つとなっており、過去5年間で17%の年平均成長率を 記録しました。 アジアに特化したベンチャーキャピタルファンドは18 年9月の時点で3,340億米ドルのAUMを誇り、これは5 年前と比較すると750億米ドル増加しました。アジア は、AUM3,970億米ドルの米国に肩を並べようとしていま す。世界的なイノベーションハブとして近年台頭してきた 中国は、こうしたアジアの躍進を牽引しています。 投資家の多様化 この業界のハブとして、米国は同資産クラスで最も多く の投資家を抱えてきました。しかし、このようなアジアの 大躍進を考慮すれば、ベンチャーキャピタルに投資する アジアをベースとした機関投資家の数がここ5年間で倍 増したことに驚きはありません。それらの内、94% が、ア ジアのベンチャーキャピタルへの投資をターゲットとして います。 ディールストーリー 中国マーケットの台頭をさらに裏付けるものとして、2018 年、中華圏におけるベンチャーキャピタルディールの合計 額(1,070億米ドル)は、米国の合計額(1,050億米ドル) を上回りました。ただし、アジアで躍進しているのは中国 だけではありません。ディールの量で言えば東南アジア も大きな伸びを見せており、そのディールバリューの年間 総額は2018年に初めて100億米ドルを突破しました。 米国とアジア以外では、欧州でのディールアクティビティ が、政治的に不安定な状況が続いているにも関わらず引 き続き伸びています。2018年のディールバリュー総額は 初めて200億米ドルを超えました。 8
  • 10. 力強いグローバルパフォーマンス 北米はベンチャーキャピタル投資において最も開拓され た地域となっており、この地域に投資されたファンドのリ スク・リターンプロファイルは、その他の地域に比べると 低くなっています。一方アジアに特化したファンドはハイリ スク・ハイリターンな環境で取引していますが、この新たな 業界ハブでは新しいファンドが次々と登場しています。 ベンチャーキャピタルファンドのパフォーマンスは世界的 に堅調で、2017年には過去最高となる1,000億米ドルの 投資が集められました。 これらは私たちが近年のベンチャーキャピタル業界で読 み取った重要なトレンドの一部です。以降、世界各地のエ コシステムやそれらを取り巻くマクロ経済トレンド等、さ らなる詳細に触れています。 技術の進歩がスタートアップ 業界を牽引し続けるなか、 2017年と2018年は2016 年 に記録したピーク(1,130 億 米ドル)には及ばなかったも のの、グローバルなベンチャ ーキャピタルによる資金調達 は上昇傾向となっています。 Preqin & Vertex © 2019 9
  • 12. 11Preqin & Vertex © 2019
  • 13. 12 グローバルベンチャーキャピタルの最新動向 : PREQINとVERTEXによる共同スタディ 今日のスタートアップ事業の無限の可能性に魅了される 投資家が増える中、ベンチャーキャピタルは世界中の機 関投資家から毎年十億米ドルを資金調達し続けていま す。この10年間のベンチャーキャピタルによる資金調達の 伸びの背景には、テクノロジーに特化したファンドの存在 がありました。革新的なテクノロジーに投資を行うChina State-Owned Capital Venture Investment Fundは2016 年に1,020億人民元を調達し、過去最大のベンチャーキ ャピタルファンドとなりました。 テクノロジーへのこだわり スタートアップ業界を支配してきた技術革新は健全な企 業環境を産出し、ベンチャーキャピタルによる資金調達* を強化してきました。この10年間でクローズされた最も大 きなベンチャーキャピタルファンド上位10ファンドの内、8 つがテクノロジーに特化したものです。資金調達額は 2017年から2018年にかけて若干落ち込んだものの、マー ケットは依然として堅調に推移しています。資金調達総額 は2013年から倍以上に増加し、2018年には970億米ドル を記録しました(図1)。 図2では、年間の資金調達総額は2016年のピークから下 がったものの、市場に参入するベンチャーキャピタルファ ンドが資金調達においてより大きな成功を収めているこ とが分かります。ベンチャーキャピタルによる資金調達総 額は、2016年に過去最高の1,130億米ドルを記録しました が、同年にクローズしたファンドのうち24%が当初の目標 調達額には到達しませんでした。一方2018年にクローズ したファンドに関しては、20%に留まっています。2019年 に入ってからクローズしたファンドのうち、目標調達額を 下回ってクローズしたものはわずか17%です。 目標調達額に達するベンチャーキャピタルファンドの割 合は近年大きくなっていますが、ファンドによって資金調 達に要する期間が異なります。図4を見ると、2018年にク ローズしたファンドの30%は資金調達に2年以上を費やし た一方で、2019 年上半期にクローズしたファンドのうち 34%は、6カ月以内にクローズしていることが分かります。 世界の資金調達動向 拡大する投資家需要に応じファンドマネジャーが増加、目標調達額に見合うファンドも増 加傾向 図1:世界のベンチャーキャピタルによる年間資金調達額、2007年-2019年上半期 出所: Preqin Pro 0 20 40 60 80 100 120 0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 H12019 No. of Funds Closed Aggregate Capital Raised ($bn) クローズファンド数 資金調達額(十憶米ドル) *ベンチャーキャピタルによる資金調達データは、コーポレートベンチャーキャピタルや共同運用ファンド、 セパレートアカウントも含む。 クローズファンド数 資金調達額(十憶米ドル)
  • 14. 13Preqin & Vertex © 2019 米国市場の復活 図5が示すように、2013年から2017年にかけてアジアに特 化したベンチャーキャピタルの資金調達が盛況し、世界 の調達額のうちの大半を占めました。それ以来、北米は 最大の資金調達マーケットとしての地位を奪取し、2018 年にはマーケットシェアの約50%となりました。 依然として経験豊富な米国のファンドマネジャーの多く は、グローバルの投資機会を求め資金調達しているた め、資金は世界中に行き渡っていると言えます。 一例として、ニューヨークをベースに構えるTiger Global Managementは、インドおよび中国のインターネット、 メディア、テレコムセクターに投資をするTiger Global Private Investment Partners XIを38億米ドルでクローズ しました(図3)。 目標資金調達額の高騰 テクノロジーの移り変わりや進化を受け、投資家の需要 は急増しています。この需要に応えるためにファンドマ 図3:過去12カ月間にクローズしたベンチャーキャピタルファンド ファンド ファーム ファンドタイプ ファーム 本社 ファーム規模 (百万) フォーカスする地域 Tiger Global Private Investment Partners XI Tiger Global Management ベンチャーキャピタ ル(全ステージ) 米国 3,750 USD 中国、世界、 インド、米国 Sequoia Capital China Yuan Fund Sequoia Capital ベンチャーキャピタ ル(全ステージ) 米国 15,000 CNY 中国 Bessemer Venture Partners X Bessemer Venture Partners アーリーステージ 米国 1,850 USD 世界、インド、イスラ エル、米国 H.I.G. Strategic Partners Fund H.I.G. BioHealth Partners ベンチャーキャピタ ル(全ステージ) 米国 1,275 USD 米国 GGV Capital VII GGV Capital ベンチャーキャピタ ル(全ステージ) 米国 1,090 USD 中国、米国 Abu Dhabi Catalyst Partners Mubadala Capital ベンチャーキャピタ ル(全ステージ) アラブ首長国 連邦 1,000 USD アラブ首長国連邦 Morningside China USD Fund Morningside Venture Capital アーリーステージ:ス タートアップ 中国 1,000 USD 中国 Mirae Asset-Naver Asia Growth Fund Mirae Asset Global Investments ベンチャーキャピタ ル(全ステージ) 韓国 1,000,000 KRW アジア、中国、イン ド、インドネシア、日 本、韓国、ベトナム Flagship Pioneering Special Opportunities Fund II Flagship Pioneering ベンチャーキャピタ ル(全ステージ) 米国 824 USD 米国 Third Rock Ventures V Third Rock Ventures アーリーステージ 米国 770 USD 米 国 出所: Preqin Pro. 2019年6月時点 図2:クローズしたベンチャーキャピタルファンドの資金調達成功率、2007年-2019年上半期 出所: Preqin Pro 37% 26% 13% 26% 26% 23% 27% 32% 35% 31% 30% 29% 26% 28% 33% 33% 35% 41% 33% 38% 37% 41% 45% 45% 50% 56% 35% 42% 55% 39% 33% 43% 35% 31% 24% 24% 25% 20% 17% 0% 20% 40% 60% 80% 100% 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 H12019 Above Target At Target Below Target クローズ年 目標額以上 目標額 目標額以下
  • 15. 14 グローバルベンチャーキャピタルの最新動向 : PREQINとVERTEXによる共同スタディ ネジャーはこれまで以上に多くのファンドを市場に持ち 込み、これと並行して目標資金調達総額が膨らんでいま す。19年1月、マーケットには2,163ものベンチャーキャピ タルファンドが存在し、ターゲット総額は1,560億米ドル に上りました(図7)。 新たに登場するテクノロジースタートアップ数、並びに資 金調達市場が健全であることを考えれば、ベンチャーキ ャピタルのファンドマネジャーは世界中で魅力的な投資 機会に投資できる可能性が高いと言えます。 図4:ベンチャーキャピタルファンドのクローズまでの平均期間、2007年-2019年上半期 出所: Preqin Pro 29% 25% 13% 12% 31% 23% 14% 24% 27% 18% 19% 20% 34% 29% 16% 25% 15% 33% 16% 21% 14% 13% 19% 17% 22% 24% 37% 40% 38% 44% 20% 37% 44% 36% 37% 35% 41% 28% 14% 5% 18% 25% 29% 16% 24% 22% 26% 23% 28% 23% 30% 28% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 H12019 1-6 Months 7-12 Months 13-24 Months 25 Months or More 図5:地域別世界のベンチャーキャピタルによる年間資金調達額の内訳、2007年-2019年上半期 出所: Preqin Pro 27.7 29.3 15.1 16.0 18.6 25.1 21.3 33.6 36.3 42.6 37.9 49.2 25.1 7.0 10.1 5.2 3.4 5.6 3.5 5.5 6.7 9.2 10.3 9.8 12.4 4.7 10.3 12.0 7.2 11.2 26.5 17.0 9.0 27.1 41.7 57.1 48.2 31.1 10.8 2.8 2.5 1.7 1.5 2.3 3.7 2.1 2.3 2.5 3.1 5.4 4.7 3.2 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 H12019 North America Europe Asia Rest of World 資金調達総額(十憶米ドル) クローズ年 クローズ年 1-6カ月 7-12カ月 13-24カ月 25カ月またはそれ以上 北米 欧州 アジア その他地域
  • 16. 15Preqin & Vertex © 2019 図6:ストラテジー別ベンチャーキャピタルの資金調達額の推移、2007年-2019年上半期 出所: Preqin Pro 0 20 40 60 80 100 120 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 H12019 Early Stage Early Stage: Seed Early Stage: Start-up Expansion/Late Stage Venture Capital (General) 図7:ベンチャーキャピタルファンドの資金調達の推移、2010年-2019年 出所: Preqin Pro 0 50 100 150 200 250 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 Jan-10 Jan-11 Jan-12 Jan-13 Jan-14 Jan-15 Jan-16 Jan-17 Jan-18 Jan-19 Jul-19 No. of Funds Raising Aggregate Capital Targeted ($bn) 調達中のファンド数 目標資金調達額(十億米ドル) クローズ年 アーリーステージ:スタートアップアーリーステージ 拡大期/レイタース テージ アーリーステージ:シード ベンチャーキャピタル(全ステージ) 調達中のファンド数 目標資金調達額(十億米ドル) 資金調達額(十億米ドル)
  • 17. 16 グローバルベンチャーキャピタルの最新動向 : PREQINとVERTEXによる共同スタディ 世界のベンチャーキャピタル業界は過去5年間で、17%の 年間成長率を記録する等、急速に拡大しています。18年 12月のベンチャーキャピタル運用資産残高(AUM)は、 過去最大の8,560億米ドルとなり、業界におけるマイルス トーンである1兆米ドルに着実に近づいています(図8)。 なお、この数値は、プライベートエクイティとベンチャーキ ャピタル合算資産総額の3分の1に相当します。 ここでは、グローバルなベンチャーキャピタルの台頭を牽 引する主な原動力について見ていきます。 アジアのベンチャーキャピタルの急成長 アジアに特化したベンチャーキャピタルファンドに対する 投資家の需要は、グローバルなベンチャーキャピタルの 急速な拡大において重要な役割を果たしています。図10 を見てください。2007年から2018年にかけてのアジアの ベンチャーキャピタルのAUMの伸びを、北米のベンチャ ーキャピタルと比較したものです。二つの地域の差が急 激に縮まりつつあるのが分かります。 18年12月時点でのその差はわずか740億米ドルです。 北米に特化したベンチャーキャピタルファンドのAUMは 3,970億米ドルで、一方アジアをターゲットとするファンド のAUMは3,230億米ドルとなっています。わずか5年前、 北米に焦点を置くベンチャーキャピタルのAUM(2,410億 米ドル)は、アジアに狙いを定めるベンチャーキャピタル のAUM(720億米ドル)の2倍を優に超えていました。 アジアのベンチャーキャピタルに向けられた投資家の需 要の背景には一体何があるのでしょうか?一言で言えば、 中国です。一人あたりの国民所得では若干米国を下回る 中国ですが、イノベーションという点においては急速に力 を付けてきています。 確かに、北京や上海は世界的なイノベーションのハブとし て認識されるようになり、ベンチャーキャピタルも数十億 米ドルという資金を集めています。 ファンドマネジャー とAUM:1兆米ドルへ の道のり アジアに特化したベンチャーファンドに投資家の注目が集まるなか、業界のAUMは過去最 高を記録 図8:グローバルベンチャーキャピタルの運用資産残高、2007年-2018年 出所: Preqin Pro 112 110 105 101 105 98 102 110 119 146 198 243 173 161 175 210 225 245 290 332 362 401 472 613 0 100 200 300 400 500 600 700 800 900 Dec-07 Dec-08 Dec-09 Dec-10 Dec-11 Dec-12 Dec-13 Dec-14 Dec-15 Dec-16 Dec-17 Dec-18 Dry Powder ($bn) Unrealized Value ($bn) AUM(十億米ドル) 未実現損益(十億米ドル)ドライパウダー(十億米ドル)
  • 18. 17Preqin & Vertex © 2019 明るい未来 数十億米ドルという資金力を誇るアジアに特化したベン チャーキャピタルファンドは、この地域のイノベーション の急速な発展の恩恵を受ける絶好のポジションにありま す。アジアベースのベンチャーキャピタルファンドのトップ 10は、その全てが中国に本社を置いており、中国はベンチ ャーキャピタル界における強い存在感を示しています。 図10:主要地域のベンチャーキャピタル運用資産残高(北米対アジア)、2007年-2018年 出所: Preqin Pro 203 186 190 200 212 213 241 272 283 301 343 397 27 31 33 50 54 64 72 85 107 142 210 323 0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 Dec-07 Dec-08 Dec-09 Dec-10 Dec-11 Dec-12 Dec-13 Dec-14 Dec-15 Dec-16 Dec-17 Dec-18North America Asia 2,240 1,186 919 335 312 97121 118 図9:地域別ベンチャーキャピタルファンドマネジャーの数 北米 中華圏 欧州 北東アジア その他の地域南アジア ASEAN イスラエル 出所: Preqin Pro 図11:地域別ベンチャーキャピタルファンドマネジャーの設定ファンド数の内訳 出所: Preqin Pro 51% 55% 60% 62% 31% 32% 23% 30% 9% 9% 8% 5%9% 5% 9% 3% 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% North America Europe Asia Rest of World 1 Fund Raised 2-3 Funds Raised 4-5 Funds Raised 6 or More Funds Raised 北米 欧州 アジア その他地域 AUM(十億米ドル) 北米 アジア 設定済みファンド数:1 設定済みファンド数:2-3 設定済みファンド数:4-5 設定済みファンド数:6以上
  • 19. 18 グローバルベンチャーキャピタルの最新動向 : PREQINとVERTEXによる共同スタディ ベンチャーキャピタルファンドは、投資家のポートフォリ オの多くにとって 重要な構成要素となっています。プライ ベートマーケットにおいて史上最高のリターンをもたらす 可能性(25ページ)を持っており、これらのファンドはよ り保守的なリスク/リワードプロファイルにより、その他の プライベートマーケットストラテジーを補完しています。 その一方で、ベンチャーキャピタルへの投資の利点はパ フォーマンスだけではありません。多くの投資家が、例え ばフィンテックといった関連業界における将来的な応用 についてより深い理解を得られるよう、技術革新の最前 線へのアクセスを求めています。 長年続く高いリターンと、注目を集めたサクセスストーリ ーを受けて、ベンチャーキャピタル投資家の世界はファン ド数、そしてマーケットに投じられる資金総額の両面にお いて拡大してきました。 2016年以降、ベンチャーキャピタル業界には、毎年平均 1,000億米ドルの機関投資家の資金が投じられています。 アクティブな機関投資家の数は過去5年間で50%増加し ましたが、その中でもアジアが顕著な伸びを示しています (図12)。 成長は世界規模で 最も多くの投資家を抱える米国は、ベンチャーキャピタ ル業界の長年のハブです。米国に拠点を置く機関投資家 の数はこの5年間で順調に伸びている一方で、ベンチャー キャピタルに対する投資家の増加は世界規模となってい ます。世界中のあらゆるベンチャーキャピタルが存在感 を増しつつあり、国内外の機関投資家から資金を集めて います。 ベンチャーキャピタルに投資するアジアの機関投資家の 数は過去5年間で倍増しました。この急成長は、アジア がこの業界の世界的な拡大を後押ししていることを意味 しています。世界的なベンチャーキャピタル投資家の地 域別資産配分をみると、米国への配分率は過去5年間で 2013年の55%から50%へと減少しました(図13)。 また、より多くの投資家がいる地域には、より多くの投資 機会があると言えます。実際にアジアに拠点を置く投資 世界中で注目を集める ベンチャーキャピタル 力強いパフォーマンスとテクノロジーインサイトは引き続き投資家の関心の的 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 2015 2016 2017 2018 2019 North America Europe Greater China Northeast Asia ASEAN South Asia Israel Rest of World 図12:地域別ベンチャーキャピタル投資家数 2015年-2019年 出所: Preqin Pro 50% 24% 8% 6% 2% 2% 1% 7% North America Europe Greater China Northeast Asia ASEAN South Asia Israel Rest of World 図13:地域別ベンチャーキャピタル投資家の割合 出所: Preqin Pro 北米 北東アジア 中華圏 南アジア イスラエル 欧州 ASEAN その他地域 北米 欧州 中華圏 北東アジア ASEAN 南アジア イスラエル その他地域
  • 20. 19Preqin & Vertex © 2019 家の94%が、アジアのベンチャーキャピタルへの投資を ターゲットとしています。 様々な投資家に向けた投資機会 ベンチャーキャピタルの投資家層には多様性がありま す。ベンチャーキャピタルファンドへの最低投資額は、そ の他のプライベートキャピタルファンドタイプと比較して 小さいことから、広範囲の機関投資家からの投資を受け 入れることができます。オルタナティブ資産における最も アクティブな機関投資家の一つとして、年金基金ならびに 各種基金はベンチャーキャピタル投資家の大きな割合を 占めています(図14)。 未来に向けた課題 ベンチャーキャピタルの資金調達は長年にわたって順調 に行われてきました。米国とアジアが圧倒的な力を持つ マーケットにおいて、欧州の投資家がより強固な足掛か りを築こうとしている兆候が見られます。実際、欧州に拠 点を置く148の投資家が、今後12ヶ月間において積極的 に投資をする方針を示しています。 ベンチャーキャピタルへの投資にはチャレンジもありま す。プールされたファンドに対する投資家の高い需要、共 同投資やセパレートアカウントのような、よりカスタマイ ズされた投資資産に対する高い需要を受け、ジェネラル パートナーとの関係構築は依然として重要だと考えられ ます。また、ファンドの選択も重要です。ベンチャーキャ ピタルファンドのパフォーマンス上位25%と下位25%の差 は大きくなっています(28ページ)。 ベンチャーキャピタルへの資産配分による恩恵は、高い リターンだけでなく、イノベーションを世界の最前列で見 る機会を享受できることにもあります。これらを手にする には、前述のチャレンジを乗り越えなければいけません。 図15:地域別世界のベンチャーキャピタル投資家の運用資産残高(AUM) 出所: Preqin Pro. Data, 2019年6月時点 56,567 39,891 26,539 13,673 1,830 1,398 1,194 9,054 50 17 89 55 29 17 44 30 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 Europe North America Northeast Asia Greater China ASEAN South Asia Israel Rest of World Sum of AUM ($bn) Average AUM ($bn) 平均AUM(十億米ドル) 図14:タイプ別世界のベンチャーキャピタル投資家 出所: Preqin Pro 13% 10% 9% 9% 8% 8% 7% 6% 6% 6% 5% 4% 4% 6% Foundation PrivateSectorPension Fund FamilyOffice CorporateInvestor EndowmentPlan PublicPensionFund Bank InsuranceCompany FundofFunds Manager InvestmentCompany WealthManager AssetManager GovernmentAgency Other 民間年金基金 ファミリーオフィス 機関投資家 寄付基金 公的年金基金 銀行 保険会社 ファンドオブファンズ 投資会社 ウェルスマネジャー アセットマネジャー 政府機関 その他 AUM (十憶米ドル) 平均AUM (十億米ドル) AUM(十億米ドル) 欧州 北米 北東アジア 中華圏 ASEAN 南アジア イスラエル その他地域 基金
  • 21. 20 グローバルベンチャーキャピタルの最新動向 : PREQINとVERTEXによる共同スタディ 世界のベンチャーキャピタルのディール総額は、過去5 年 間で急増しました。ディール数は、毎年比較的安定してい るものの規模が大きくなっています。2013年には、670 万 米ドルだった平均ディールサイズは、2018年には2,300 万 米ドルに上昇しました。 毎年、多くの資産がベンチャーキャピタルに投資されるよ うになっており、これにより各投資ラウンドは拡大傾向に あります。2013年には存在しなかったメガディール(十億 米ドルの価値がつくもの)ですが、2018年には24件のメ ガディールがクローズされました。 中国が米国を上回る 2018年、北米では他の地域と比較して最も多くのベンチ ャーキャピタルディール(5,781件)がありました(図16)。 しかし、中華圏で行われた4,727件のディールの総額は 1,070億米ドルとなり、米国の1,050億米ドルを上回りまし た。中華圏はここ数年でスタートアップにとって魅力的な ハブとなっており、その中でもテクノロジーならびに人工 知能に焦点を置くスタートアップの多くが同地域に拠点 を置いています。中華圏におけるディールを取り巻く状況 は良好である一方、エグジットの状況は厳しいものとなっ ています。中華圏の投資環境が比較的発展途上であるた めに、エグジットレベルは低くなっていると考えられます。 ただし、同地域が今後発展し、さらに資金が入ってくるよ うになれば、エグジットレベルも上昇するでしょう。2018 年の中華圏でのエグジット総額は410億米ドルで、これは 米国の半分以下です。しかし、410億米ドルという数字は 2017年のエグジットバリュー総額(130億米ドル)の2倍以 上となっています。 緩やかな成長を遂げ安定した欧州 米国と中国に押される形となり、欧州のベンチャーキャ ピタル市場は高い成長を実現できていません。図16が示 すように、2009年以降の欧州のディール締結数の継続的 な増加は、同地域のベンチャーキャピタルの発展を意味 しています。ディール額も大きくなっており、2018年には 3,025件のトランザクションを通じ、ディール総額220億 米ドルを記録しました。平均ディールサイズは2013年から 2018年にかけて430万米ドルから860万米ドルに増大しま した。しかし、この増加も、米国と中国に比較すると低く なっています。 世界のディールと エグジット 中国でのディールが最高額に達し、北米は史上初のエグジット数値を記録 図16: 地域別ベンチャーキャピタルディール*、2007年-2019年上半期 出所: Preqin Pro 0 50 100 150 200 250 300 0 4,000 8,000 12,000 16,000 20,000 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 H1 2019 North America Europe Greater China South Asia Northeast Asia Israel ASEAN Rest of World Aggregate Deal Value ($bn) ディール数 ディールバリュー総額(十憶米ドル) *アドオン企業および資産、助成金、合併、セカンダリー株式買付、ベンチャーデットを除く。 北米 欧州 中華圏 南アジア 北東アジア イスラエル ASEAN その他地域 ディールバリュー総額(十憶米ドル)
  • 22. 21Preqin & Vertex © 2019 2018年のエグジット件数は201件、その総額は180億米ド ルと、欧州は近年で最も活発なベンチャーキャピタルエグ ジットを記録しました。スウェーデンのSpotifyや英国の Funding CircleのIPOがその一例です。しかし欧州におい て大型エグジット案件は比較的少なく、小さなディールに よるエグジットが多くなっています。 アジアと北米に先行を許していた欧州のベンチャーキャ ピタルファンドですが、近年政治的および経済的な不透 明性が高まる環境にも関わらず、2018年には過去最高と なる資金調達額130億米ドルを記録しました。成長スピー ドは、緩やかなものの、欧州のベンチャーキャピタルの 機会に対する需要は高まりつつあるとも言えます。 エグジットの動向 世界のエグジットバリュー総額は2018年に劇的に伸び、 史上最高の1,700億米ドルを記録しました(図18)。同時 に、合計エグジット数は2017年の記録から減少に転じて います。前述の通り、世界で最も多くのエグジットを記録 したのは米国で、その総額(880億米ドル)は他地域を大 きく引き離す結果となりました。これは、2017年総額の 300億米ドルを上回り、過去最大となりました。 さらに多くの機会がアジアのベンチャーキャピタル市場 に生まれています。今後も力強いディールメイキングの継 続が予想され、米中貿易の議論も同地域に健全な競争を もたらす要素になると考えられます。 図17:2019年上半期の主要ベンチャーキャピタルディール* 企業名 ディール 時期 ステージ ディールサ イズ(百万) 投資家 業界 国 WeWork Companies Inc. 19年1月 非公開 2,000 USD SoftBank 商業用不動産 米国 Grab Holdings Inc.** 19年3月 シリーズH / ラウンド8 1,460 USD SB Investment Advisers 交通サービス シンガポ ール OneWeb LLC 19年3月 非公開 1,250 USD Qualcomm Ventures, SoftBank, Government of Rwanda, Grupo Salinas インターネット 米国 Rappi S.A.S. 19年4月 非公開 1,000 USD SB Investment Advisers, Softbank Latin America Ventures インターネット コロンビア Go-Jek Indonesia 19年4月 シリーズF/ ラウンド6 920 USD JD.com, Tencent, Google Inc., Mitsubishi Corporation, Provident Capital インターネット インドネ シア Horizon Robotics*** 19年2 月 シリーズ B /ラウン ド2 600 USD China Oceanwide Holdings Group, Morningside Venture Capital, CLSA Capital Partners, Linear Venture, V Fund, Hillhouse Capital Management, SK China, SK Hynix, China Minsheng Investment Group, CITIC Securities International, Oceanpine Capital ソフトウェア 中国 出所: Preqin Pro 図18:地域別ベンチャーキャピタルエグジット、2007年-2019年上半期 出所: Preqin Pro 0 20 40 60 80 100 120 140 160 180 0 200 400 600 800 1,000 1,200 1,400 1,600 1,800 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 H1 2019 North America Europe Greater China South Asia Northeast Asia Israel ASEAN Rest of World Aggregate Exit Value ($bn) エグジット数 エグジットバリュー総額(十憶米ドル) *アドオン企業および資産、助成金、合併、セカンダリー株式買付、ベンチャーデットを除く。 **Vertex Ventures SEA & IndiaはGrabの第1号機関投資家で、資金調達ラウンドシリーズA、B、C に投資。 ***Vertex Ventures Chinaは資金調達ラウンドシリーズAに投資。 北米 欧州 中華圏 南アジア 北東アジア イスラエル ASEAN その他地域 ディールバリュー総額(十憶米ドル)
  • 23. 22 グローバルベンチャーキャピタルの最新動向 : PREQINとVERTEXによる共同スタディ 図19:2019年上半期の主要ベンチャーキャピタルエグジット 企業名 投資家(エントリー) 調達総額(百万、 公開データ) Uber Technologies, Inc.** Axel Springer AG, Baidu, Barclays, Benchmark Capital, BlackRock, Caspian Venture Capital, Citigroup, Didi Chuxing, Dragoneer Investment Group, Fidelity Investments, First Round Capital, Founder Collective, Glade Brook Capital Partners, Goldman Sachs, Goldman Sachs Merchant Banking Division, GV, Innovation Endeavors, Kleiner Perkins Caufield & Byers, Kumpulan Wang Persaraan, LetterOne, Lone Pine Capital, Lowercase Capital, Menlo Ventures, Microsoft, Morgan Stanley, New Enterprise Associates, Public Investment Fund, Qatar Investment Authority, SB Investment Advisers, SBT Venture Capital, Sequoia Capital, Signatures Capital Partners, SoftBank, Summit Partners, Summit Series, Tata Capital Private Equity, Tencent, Times Internet, Toyota Financial Services, Toyota Motor Corporation, TPG, Tuesday Capital, Valiant Capital Partners, Wellington Management 14,741 USD Slack Technologies, Inc.** Accel, Andreessen Horowitz, Atlassian Pty. Ltd., Baillie Gifford, Comcast Ventures, Dragoneer Investment Group, DST Global, FundersClub, General Atlantic, GGV Capital, Global Founders Capital, GV, Horizons Ventures, Index Ventures, Institutional Venture Partners, Kleiner Perkins Caufield & Byers, Riverside Ventures, Sands Capital Ventures, SB Investment Advisers, Social Capital, Spark Capital, SV Angel, T Rowe Price, Thrive Capital, Wellington Management 1,217 USD Auris Health, Inc. Coatue Management, D1 Capital Partners, E15VC, Highland Capital, Highland Capital Partners, Lux Capital Management, Mithril Capital Management, NaviMed Capital, Partner Fund Management, Section 32, Senator Investment Group, Viking Global Investors, Wellington Management 783 USD Looker Data Sciences, Inc. CapitalG, Cross Creek Advisors, First Round Capital, Geodesic Capital, Goldman Sachs, Kleiner Perkins Caufield & Byers, Meritech Capital Partners, PivotNorth Capital, PremjiInvest, Redpoint Ventures, Sapphire Ventures 281 USD Lyft, Inc.** AB, Alibaba Group, Andreessen Horowitz, AutoTech Ventures, Baillie Gifford, CapitalG, Chromo Invest, Coatue Management, Didi Chuxing, Facebook, Fidelity Management & Research Company, Flat World Partners, Floodgate, Fontinalis Partners, Fortress Investment Group, Founders Fund, General Motors, Glade Brook Capital Partners, Graphene Ventures, Icahn Enterprises, InMotion Ventures, Janus Capital Group, K9 Ventures, Kingdom Holding Company, KKR, Machine Shop Ventures, Magna International, Mayfield, Olympus Partners, Ooga Labs, Public Sector Pension Investment Board, Rakuten, Inc., Senator Investment Group, SharesPost, Tencent, Third Point Management, UTA Capital 4,913 USD Bigo Technology Pte. Ltd. BAI Fund, Gaorong Capital, Morningside Venture Capital, Ping An Insurance Group, YY 272 USD Pinterest, Inc.** Acequia Capital, Andreessen Horowitz, Bessemer Venture Partners, Blisce, Fidelity Investments, FirstMark Capital, Founders Circle Capital, Goldman Sachs, Manatt Venture Fund, Rakuten, Inc., SV Angel, Valiant Capital Partners, Wellington Management, You & Mr Jones 1,466 USD Harry's, Inc. Alliance Consumer Growth, BoxGroup, Grace Beauty Capital, Harrison Metal Capital, Highland Capital Partners, Lakestar, Red Swan Ventures, SV Angel, Tao Capital Partners, Temasek Holdings, Thrive Capital, Thrive Capital Partners, Tiger Global Management, Wellington Management 463 USD Paragon Bioservices, Inc. Camden Partners, Eagle Private Capital, NewSpring Capital 22 USD Peloton Therapeutics, Inc. BVF Partners, Cancer Prevention & Research Institute of Texas, Curative Ventures, Driehaus Capital Management LLC, EcoR1 Capital, Eventide Asset Management, Foresite Capital, Nextech Invest, OrbiMed Advisors, RA Capital, Remeditex Ventures, The Column Group, Tichenor Ventures, Topspin Partners, Vida Ventures 254 USD **部分的なエグジット
  • 24. 23Preqin & Vertex © 2019 エグジットタ イプ エグジット 時期 エグジット バリュー(百万) エグジット先 (買収者) 業界 エコシステム 国 IPO 19年5月 8,100 USD - 交通サービス 米国 米国 IPO 19年6月 4,560 USD - 通信 米国 米国 トレードセール 19年2月 3,400 USD Ethicon, Inc. 医療機器および 装置 米国 米国 トレードセール 19年6月 2,600 USD Google Inc. ソフトウェア 米国 米国 IPO 19年3月 2,340 USD - 交通サービス 米国 米国 トレードセール Mar-19 1,453 USD YY インターネット ASEAN シンガポール IPO Apr-19 1,430 USD - インターネット 米国 米国 トレードセール May-19 1,370 USD Edgewell Personal Care Company コンシューマ製品 米国 米国 トレードセール Apr-19 1,200 USD Catalent, Inc. 医薬品 米国 米国 トレードセール May-19 1,050 USD Merck バイオテクノロジー 米国 米国 出所: Preqin Pro
  • 25. 24 グローバルベンチャーキャピタルの最新動向 : PREQINとVERTEXによる共同スタディ ベンチャーキャピタルは急速に発展している業界です。よ り多くのファンドが業界に参入し、これまで以上の資金が 流入しています。2017年、アジアでは新たなファンドが数 多く誕生し、結果として世界のネットキャッシュフローが 激減しました。 2016年の82憶米ドルの純キャッシュフロ ーとは対照的に、2017年のキャピタルコール済み資金は、 分配済み資金を遥かに超え、年間ネットキャッシュフロ ーは-480億米ドルとなりました(図20)。 このレポートを通じて見てきたように、アジアのベンチャ ーキャピタル業界は急速に成長しています。しかしなが ら、その若さを考えれば、同アセットクラスの投資家は欧 州や米国に特化したファンドよりも高いリスクを取ってい ると言えます。 リスクとリターン 長年にわたってベンチャーキャピタルの中心地となって いた北米は、AUM 3,970億米ドルを有し(2018年12月時 点)、2018年に調達された同地域のファンド総額は580 億米ドルとなりました。北米をターゲットに定めるベン チャーキャピタルファンドは、リスクを抑えたプロファイ ルで、ある程度の潜在リターン(ただし、非常に高いとい うわけではない)を提供し続けてきました。図21が示す 通り、アジアに軸を置くファンドはリスクがある程度高い 代わりに、期待リターンも魅力的なものとなっている一方 で、2006年から2016年に設定された北米に特化するファ ンドのリスクリターンは相対的に低くなっています。 いくつかのテックユニコーンの出現と、ローカルエコノミ ー全体に見られる急速なデジタル化を受けて、過去数年 さらに多くのベンチャーキャピタルファンドがアジア、中 でも特に中国に誕生しました。アジアの多くの機関投資 家にとって、依然としてベンチャーキャピタル市場は馴染 みのないものとなっています。少なくとも現時点では、欧 州および北米に特化したファンドの方が低いリスクで投 資できると言えます。 アジアと欧州の成長 アジアのベンチャーキャピタルマーケットが驚くべき速度 で発展するなか、アジアを含めたベンチャーキャピタル ファンドのリターンを示すPrEQIn Indexのパフォーマンス は、過去10年で突き抜けて上昇しており、他地域のパフ グローバル パフォーマンス アジアおよび欧州でのパフォーマンスは堅調な一方、飽和状態のマーケットではマネジャ ーの真価が問われる 図20: グローバルベンチャーキャピタルファンドの年間キャピタルコール、分配、ネットキャッシュフロー、 2005年-2018年 出所: Preqin Pro. Most Up-to-Date Data -60 -40 -20 0 20 40 60 80 100 120 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 Capital Called up ($bn) Capital Distributed ($bn) Net Cash Flow ($bn)キャピタルコール済み資金(十億米ドル) 分配済み資金 (十億米ドル) ネットキャッシュフロー(十億米ドル)
  • 26. 25Preqin & Vertex © 2019 ォーマンス、およびプライベート市場全体を示すRussell 2000 TR Indexをアウトパフォームしています(図24)。 北米に狙いを絞ったファンドの同期間のインデックスパ フォーマンスは安定しているものの、2017年のパフォー マンスは他のどの地域よりも悪いものとなりました。ただ し、これは北米に特化したファンドのリターンが下がった というわけではなく、欧州に軸足を置いたファンドのパフ ォーマンスが向上したことが背景にあります。2014年終 盤から2016年の前半にかけて、欧州に特化したファンド のリターンが低くなっていたが為に、それ以降の実績が他 地域以上に良く出たのです。 飽和状態にあるマーケット 世界各地で新たなベンチャーキャピタルファンドが次々 と誕生しており、集められる資金は今後も高水準にな ると予測されています。業界全体として好調に推移する なか(特に、2016年に設定されたファンドの上位25% は、33.9%もの高いリターンを上げています(図25))、フ ァンドマネジャーが直面する課題は、飽和状態にある業 界の中で魅力的な投資機会を探し出せるかということに あります。また、実際に市場の低迷期が訪れた際には、そ のようなマーケットの中でいかに舵取りするかの力量が 求められています。 0% 5% 10% 15% 20% 25% 10% 11% 12% 13% 14% Early Stage Expansion/Late Stage Venture Capital (General) 図22:ベンチャーキャピタルのファンドタイプ別リス クリターン率(設定年2006年-2016年)* 出所: Preqin Pro. Most Up-to-Date Data リスク(ネットIRR標準偏差) リターン(ネットIRR標準偏差) 0% 5% 10% 15% 20% 25% 30% 9% 11% 13% 15% 17% 19% North America Europe Asia Rest of World 図21:ベンチャーキャピタルの地域別リスクリター ン率(設定年2006年-2016年)* 出所: Preqin Pro. Most Up-to-Date Data リターン(ネットIRR標準偏差) *各円の大きさはファンド規模を示す。 図23:PrEQIn Indexベースファンドタイプ別ベンチャーキャピタル対パブリックマーケット(2000年12月31日 時点を100に設定) 出所: Preqin Pro 0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500 Dec-00 Jun-01 Dec-01 Jun-02 Dec-02 Jun-03 Dec-03 Jun-04 Dec-04 Jun-05 Dec-05 Jun-06 Dec-06 Jun-07 Dec-07 Jun-08 Dec-08 Jun-09 Dec-09 Jun-10 Dec-10 Jun-11 Dec-11 Jun-12 Dec-12 Jun-13 Dec-13 Jun-14 Dec-14 Jun-15 Dec-15 Jun-16 Dec-16 Jun-17 Dec-17 Jun-18 Dec-18 Early Stage Expansion/Late Stage Venture Capital (General) Russell 2000 TR インデックスリターン (2000年12月31日時点を100に設定) リスク(ネットIRR標準偏差) 北米 欧州 アジア その他地域 アーリーステージ 拡大期/レイタース テージベンチャーキャピタル (全ステージ) アーリーステージ 拡大期/レイターステージ ベンチャーキャピタル(全ステージ) Russell 2000 TR
  • 27. 26 グローバルベンチャーキャピタルの最新動向 : PREQINとVERTEXによる共同スタディ 図24:PrEQInインデックスベース投資地域別ベンチャーキャピタル対パブリックマーケット(2007年12月31日 時点を100に設定) 出所: Preqin Pro 0 50 100 150 200 250 300 350 400 Dec-07 Jun-08 Dec-08 Jun-09 Dec-09 Jun-10 Dec-10 Jun-11 Dec-11 Jun-12 Dec-12 Jun-13 Dec-13 Jun-14 Dec-14 Jun-15 Dec-15 Jun-16 Dec-16 Jun-17 Dec-17 Jun-18 Dec-18 North America Europe Asia & Rest of World Russell 2000 TR 図25:ベンチャーキャピタルのビンテージイヤー別ネットIRR(中央値と上位四分の一) 出所: Preqin Pro. Most Up-to-Date Data -20% -10% 0% 10% 20% 30% 40% 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 Top Quartile Net IRR Boundary Median Net IRR Bottom Quartile Net IRR Boundary インデックスリターン (2007年12月31日時点を100に設定) 設定来ネットIRR ビンテージイヤー 北米 欧州 アジアおよびその他地域 Russell 2000 TR ネットIRR(上位四分の一) ネットIRR(中央値) ネットIRR(下位四分の一)
  • 28. 27Preqin & Vertex © 2019
  • 29. 28 グローバルベンチャーキャピタルの最新動向 : PREQINとVERTEXによる共同スタディ フォーカス: その他地域 *アドオン企業および資産、助成金、合併、セカンダリー株式買付、ベンチャーデットを除く。 「その他の地域」にはアフリカ、オーストラリア、ラテン米国、中近東が含まれる。 0.0 0.5 1.0 1.5 2.0 2.5 3.0 0 5 10 15 20 25 30 35 40 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 H12019 No. of Funds Closed Aggregate Capital Raised ($bn) 図26:その他地域のベンチャーキャピタル年間資金 調達、2007年-2019年上半期 出所: Preqin Pro クローズファンド数 資金調達額(十億米ドル) 南米で初の10億米ドルディールが誕生した事実は、ベンチャーキャピタル市場が世界全体 で発展していることを示唆しています 図28:2019年上半期のその他地域における主要ベンチャーキャピタルディール* 企業名 ディール 時期 ステージ 調達額 (百万) 投資家 業界 国 Rappi S.A.S. 19年4月 非公開 1,000 USD SB Investment Advisers, Softbank Latin America Ventures インター ネット コロンビア Creditas Soluções Financeiras Ltda. 19年6月 シリーズD / ラウンド4 231 USD Softbank Latin America Ventures, Vostok Emerging Finance, Amadeus Capital Partners, Santander InnoVentures 金融サービス ブラジル Loggi TECHNOLOGY Ltd. 19年6月 シリーズE / ラウンド5 150 USD GGV Capital, Fifth Wall Ventures, VELT Partners, Microsoft, SB Investment Advisers 消費者 サービス ブラジル PayClip, S. de RL de CV 19年5月 非公開 100 USD General Atlantic, SoftBank 金融サービス メキシコ Selina LTD 19年4月 シリーズC / ラウンド3 100 USD Access Industries, Colony Capital, Wiese Capital 旅行& レジャー パナマ 出所: Preqin Pro 5.6 6.0 6.0 8.9 10.8 10.6 13.0 13.0 13.9 14.0 16.8 20.5 0 5 10 15 20 25 Dec-07 Dec-08 Dec-09 Dec-10 Dec-11 Dec-12 Dec-13 Dec-14 Dec-15 Dec-16 Dec-17 Dec-18 Dry Powder ($bn) Unrealized Value ($bn) 図27:その他地域のベンチャーキャピタル AUM、2007年-2018年 出所: Preqin Pro. 2019年6月時点 AUM(10億米ドル) クローズ年 クローズファンド数 資金調達額 (十億米ドル) 未実現損益 (十憶米ドル) ドライパウダー (十憶米ドル)
  • 30. 29Preqin & Vertex © 2019 マーケットの中心は依然として米国ならびにアジアにあ るものの、これらの成熟したマーケットにおける競争が激 化するにつれて、より多くの資金が世界各地の成長著しい エコシステムに流れ込んでいます。 南米は近年力をつけてきたベンチャーキャピタルマーケ ットのひとつです。この躍進の先頭に立つのが、2019年 前半に設定されたSoftbank Latin America Venturesの SoftBank Innovation Fundで、南米全域の投資に50億 米ドルという目標を掲げています。 南米に参入するファンドが多くなるにつれて、ディール規 模も拡大しています。SoftBank Innovation Fund がコロ ンビアに本社を置く宅配スタートアップ Rappi S.A.S. に 10億米ドルを出資したディールは、南米で初となる10億 米ドル以上のベンチャーキャピタルディールとなりました (図28)。 2018年には200以上のトランザクションが完了され、その 総額は28億米ドルを記録しました。件数および金額共に 過去最高となりました(図30)。2019年前半だけで総額 20億米ドルのディールを成功させ、好調な滑り出しを見 せています。南米でも数十億米ドル規模のディールが多く 見られるようになっています。 世界的に見れば依然として新興マーケットであるものの、 その他の地域でのベンチャーキャピタルの活動は間違い なく活発化しています。18年12月時点の「その他の地域」 を焦点としたドライパウダーは46億米ドルを誇っています (図27)。投資予定資本と、2019年のコロンビア税法改 正等の近年の経済改革を受け、これらの新興市場のエコ システムは今後も世界から資本を呼び込むものと考えら れます。 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 0 50 100 150 200 250 300 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 H12019 No. of Deals Aggregate Deal Value ($mn) 図30:その他地域のベンチャーキャピタルディール*、 2007年-2019年上半期 出所: Preqin Pro ディール数 ディールバリュー総額(百万米ドル) *アドオン企業および資産、助成金、合併、セカンダリー株式買付、ベンチャーデットを除く。 図29:過去12ヶ月間にクローズしたその他地域に 拠点を置く主要ベンチャーキャピタルファンド ファンド ファーム ファーム規模 (百万) ファーム本社 Abu Dhabi Catalyst Partners Mubadala Capital 1,000 USD アラブ首長国 連邦、アブダビ Monashees Capital VIII Monashees Capital 150 USD ブラジル、サン パウロ Agri-Vie II Fund EXEO Capital 146 USD ベルビル、 南アフリカ Ghadan Ventures Fund Ghadan Ventures 353 AED アラブ首長国 連邦、アブダビ Iron Pillar Fund I Iron Pillar 90 USD モーリシャス、 エベネ 出所: Preqin Pro. 2019年6月時点 ディール数 ディールバリュー総額 (百万米ドル) 29Preqin & Vertex © 2019
  • 32. 31Preqin & Vertex © 2019
  • 33. 32 グローバルベンチャーキャピタルの最新動向 : PREQINとVERTEXによる共同スタディ Vertex イノべーション パートナーシップ Vertexが直近組成した(Vertexが現地チームを有す る)米国、イスラエル、中国、インド、東南アジア等の国 の次なるユニコーン企業をターゲットとした7億米ドル 超のフィーダーファンドに日本企業が投資家として参加 しています。 日本をベースにした機関投資家が海外への投資を積極 化させてきた動きを捉えたものです。コーポレートベンチ ャーキャピタルを含めた、日本のベンチャーキャピタルの 2018年の国外企業に対する投資額は2017年の2倍となり ました。投資金額としては10億米ドルに倍増したわけで すが、これは同年のスタートアップに出資された総額22 億米ドルの約半分に相当します。 日本をベースとした機関投資家とパートナーシップを結ぶ ことで、我々はVertexのイノべーションパートナーシップ を既存の投資家、およびTemasekのポートフォリオの域 を超えたものに拡大しようと試みています。当社の新しい ファンドの投資家は、日本企業と日本国外のスタートアッ プを繋げる役割を果たしてくれると期待しています。 日本企業がこれまで以上にイノべーションパートナーシ ップや海外スタートアップ投資を進めている理由につい てはどうお考えですか? 潤沢な資産を保有し、主に日本を中心とした堅調な事業 を展開する多くの日本企業が、新たなマーケットや事業 変革の可能性を求めています。こうした企業は、自分たち の成長戦略にポジティブな影響をもたらす可能性のある 破壊的なテクノロジーやビジネスモデルを学ぶことに積 極的です。実際、我々のポートフォリオに名を連ねるスタ ートアップ企業の多くが、革新的なテクノロジーを求める 日本企業からの問合せを頻繁に受けています。 こうした動きを踏まえ、例えば北京を拠点とするロジステ ィクスや倉庫自動化ソリューションに使われる先進ロボテ ィクスおよびAIテクノロジーを提供するGeek+は、東京に も支社を構えています。これは日本におけるクライアント リレーションを進化・拡大させ、費用対効果の高い方法で クライアント企業のオペレーション効率化を推進していこ うとしているためです。 日本企業が関心を持つテクノロジースタートアップでは 他にどういった企業がありますか? 送金や貸付の新たなビジネスモデルを探している日本 の銀行にとって、当社のポートフォリオ内のフィンテック 企業は関心を引く存在です。例えばシンガポール発の soCashは一般店舗やカフェ、スーパーでATMのように現 金がおろせる仕組みをアプリを通じて提供しています。 サイバーセキュリティーもその一例です。当社のスタート アップは、日本の鉄道や飛行機、モビリティといった交通 分野やユーティリティー分野の企業が自社の重要なアセ ット / インフラストラクチャーをサイバー攻撃から保護す ることを支援しています。当社のポートフォリオには、米 国発のCyberArkのように、高度なサイバー脅威をプロア クティブに阻止できるソリューションを有するスタートアッ プもありますが、同社は米国に加え、アジア太平洋地域、 およびEMEA地域(欧州、中東、アフリカ)にまでオフィス 網を広げています。 Chua Kee Lock CEO, Vertex Holdings Vertexは日本企業の海外投資機会の見定めをサポート
  • 34. 33Preqin & Vertex © 2019 イノべーションパートナーシップと共同投資の機会によっ て、Vertexは日本企業と将来有望な(そして破壊的な、あ るいは大胆なトランスフォーメーションを可能にする)国 外スタートアップとが繋がる橋渡し役を果たしています。 投資家およびスタートアップがVertexを選ぶのはなぜ でしょうか?キーとなる差別化ポイントを教えてください。 当社は、アーリーステージを投資対象とする、4つのIT特 化のローカルファンドと(拠点:中国、インド、東南アジ ア、イスラエル、米国)、ヘルスケア特化のグローバルファ ンドから構成されていますが、それぞれが独立運営かつ、 ローカル市場に精通したベンチャー投資家・オペレータ ーです。また、ポートフォリオ内のアーリーステージ企業の フォローオン機会を狙う、グロースステージを投資対象と したファンドも保有しています。 このネットワーク設計のおかげで、我々のパートナーは 最高の企業にアクセスすることが可能であり、それが投 資家から選ばれる理由になっています。また、投資を受 けたスタートアップにとっては、Vertexの世界的なネット ワークとTemasekのポートフォリオを活用することで、海 外へより大きく事業展開できる点を差別化要因となって います。 事業開発の他に、Vertexネットワークとしてどのような サポートを提供しているのでしょうか? スタートアップが成功を収め、ハイペースで成長していく 為には人的資産が極めて重要です。Vertexでは、金融資 本や事業開発の機会を提供する他に、ポートフォリオ企 業の採用活動も積極的にサポートしています。 Chua Kee Lockの経歴 Chua Kee LockはVertex HoldingsのCEOとして、Vertex全体の投資戦略の方向性を示す役割を果たしている。投資関連 の実務経験から様々な企業のマネジメントまで豊富な経験を有する。 VertexのCEO就任以前は、インターヴェンション心臓病学や救命救急処置に使われる医療機器の開発 / 製造を手掛ける シンガポールの上場企業、Biosensors社のPresidentおよびExecutive Directorを務めた。2003年から2006年にかけて は、米国に本社を置くべンチャーキャピタルWalden International社のManaging Directorとして南アジアマーケットの 投資活動の総責任者を務めた。 潤沢な資産を保有し、主に 日本を中心とした堅調な事 業を展開する多くの日本企 業が、新たなマーケットや事 業変革の可能性を求めてい ます。
  • 35. 34 グローバルベンチャーキャピタルの最新動向 : PREQINとVERTEXによる共同スタディ フォーカス: 北東アジア *アドオン企業および資産、助成金、合併、セカンダリー株式買付、ベンチャーデットを除く。 0 1 2 3 4 5 6 0 20 40 60 80 100 120 140 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 H12019 No. of Funds Closed Aggregate Capital Raised ($bn) 図31:北東アジアのベンチャーキャピタル年間資金 調達、2007年-2019年上半期 出所: Preqin Pro クローズファンド数 資金調達額(十億米ドル) クローズ年 1.7 1.7 2.1 2.3 3.8 5.0 6.0 7.3 9.5 17.6 19.4 24.8 0 5 10 15 20 25 30 Dec-07 Dec-08 Dec-09 Dec-10 Dec-11 Dec-12 Dec-13 Dec-14 Dec-15 Dec-16 Dec-17 Dec-18 Dry Powder ($bn) Unrealized Value ($bn) 図32:北東アジアのベンチャーキャピタルAUM、 2007年-2018年 出所: Preqin Pro. 2019年6月時点 ベンチャーキャピタリストにとって先端IT技術は注目すべき投資セクター 図33:2019年上半期の北東アジアにおける主要ベンチャーキャピタルディール* 企業名 ディール 時期 ステージ 調達額 (百万) 投資家 業界 国 Yanolja Co., Ltd. 19年6月 シリーズD / ラウンド4 180 USD GIC, Booking Holdings インター ネット 韓国 Kurly Inc. 19年4月 シリーズD / ラウンド4 100,000 KRW Global Venture Partners, Sequoia Capital インター ネット 韓国 Ground X 19年3月 シード 100,000 KRW IDG Capital, Crescendo Equity Partners, TransLink Capital ソフトウ ェア 韓国 Socar 19年1月 非公開 50,000 KRW Softbank Ventures Asia, Altos Ventures, Stonebridge Capital, KB Investment 通信 韓国 Pixie Dust Technologies, Inc. 19年4月 シリーズB / ラウンド2 3,846 JPY INCJ, Ltd, SBI Investment, Toppan Printing, SMBC Venture Capital, Mizuho Capital, K4 Ventures, Venture Labo Investment, Dentsu, Global Brain Corporation, Dai-ichi Life Asset Management Co. Ltd ソフトウ ェア 日本 出所: Preqin Pro AUM(十億米ドル) クローズファンド数 資金調達額 (十億米ドル) ドライパウダー (十億米ドル) 未実現損益 (十億米ドル)
  • 36. 35Preqin & Vertex © 2019 ベンチャーキャピタルのアセットクラスは北東アジアで膨 らんできており、そのAUMは過去5年間で2倍以上に増え ています。現在、北東アジアに投資されている250億米ド ルの大部分(190億米ドル)が未実現損益であり(図32)、 これは日本ならびに韓国のベンチャーキャピタルマネジ ャーにとって良い投資機会があることを示しています。実 際2009年末以降、ドライパウダーが未実現損益を上回っ たことはありません。 但し、急速な増加の次なる現象として、北東アジアに軸足 を置いた資金調達にやや減速の兆しが見えて います。数 字を見ていくと、図31が示す通り、毎年の資金調達総額 は2014年から継続して上昇しています。そして、2018年末 時点では102のファンドがクローズし、その総額は48億米 ドルを記録しました。これは 2017年と比較してクローズ 件数としては20件の減少となりましたが、金額としては10 億米ドルの増加となりました。 ベンチャーキャピタルファーム自体の数を見ていく と、2019年の折り返し地点では北東アジアでアクティブ に活動するベンチャーキャピタルファームの数は335で、 このうち231が日本を、104が韓国を本拠地としていま す。ソウルに本拠地を置く北東アジア地域最大のベンチ ャーキャピタルファームSamsung Venture Investment Corporationは、過去10年間で23億米ドル以上を調達し ました。 昨年、北東アジアのベンチャーキャピタルディールの総 額はこれまでで最高となる55億米ドルに達しましたが、 これは2017年に完了したディールバリューの総額(25億 米ドル、図35)の2倍以上となります。ディール件数自体は 2017年よりも減少しました。また、2019年に関しては、上 半期時点で既に前年と同等数のディールが完了していま す(但し、それら371件のディールバリューの総額は14億 米ドルに留まっています)。 0 1,000 2,000 3,000 4,000 5,000 6,000 0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 H12019 No. of Deals Aggregate Deal Value ($mn) 図35:北東アジアにおけるベンチャーキャピタル ディール*、2007年-2019年上半期 出所: Preqin Pro ディール数 ディールバリュー総額(百万米ドル) 図34:過去12ヶ月間にクローズ北東アジアに拠点 を置く主要ベンチャーキャピタルファンド ファンド ファーム ファンドの 規模(十憶) ファーム 本社 Mirae Asset-Naver Asia Growth Fund Mirae Asset Global Investments 1,000 KRW ソウル、 韓国 Mirai Creation Fund II SPARX Group 73 JPY 東京、 日本 SBI AI & Blockchain Fund SBI Investment 60 JPY 東京、 日本 MUFG Innovation Partners I MUFG Innovation Partners 20 JPY 東京、 日本 NTT Investment Partners Fund III NTT DOCOMO Ventures 20 JPY 東京、 日本 出所: Preqin Pro. 2019年6月時点 *アドオン企業および資産、助成金、合併、セカンダリー株式買付、ベンチャーデットを除く。 35Preqin & Vertex © 2019 ディール数 ディールバリュー総額 (百万米ドル)
  • 37. 36 グローバルベンチャーキャピタルの最新動向 : PREQINとVERTEXによる共同スタディ 東南アジアの 未来に向けた投資 東南アジアで台頭する代表的なトレンドを教えてくださ い。特に興味を引く業界はありますか? ミレニアル世代1 が世界人口に対して占める割合は30% です。彼らは2025年までに労働人口の大部分を占めるこ とが予測されており、その購買力は2020年までにジェネ レーションXの購買力を上回るとされています。これらの 見通しを踏まえ、Vertex Ventures Southeast Asia and Indiaのチームではこの世代の台頭に関してリサーチを行 い、彼らがいかに世界の消費動向や経済成長シナリオを 再定義しているのかに迫りました。 世界銀行のデータによると、東南アジアの2億1,400万人 のミレニアル世代はこの地域の人口の32.6%を占め、それ は世界人口の9%に相当します。対するインドのミレニア ル世代人口は4億5,900万人で、これはインド全体の人口 の33.9%、世界人口の19.5%にあたります。また、東南ア ジアとインドのミレニアル世代ならではの特徴もいくつか あります。まず、他の地域の同世代と比較して彼らはイン ターネットをよく使います。インターネットにアクセスでき るのはもはや都市部に住むミレニアル世代だけではあり ません。東南アジアでは84%のミレニアル世代が、インド では70%のミレニアル世代がインターネットを利用してい ます。2 2018年、この2つの地域のミレニアル世代は1日平 均8.3時間をインターネットに、3時間をソーシャルメディ アに費やしました。一方、米国、フランス、ドイツの同世代 ではそれぞれ5.1時間、1.5時間でした。次に、消費志向で す。経済的負担の少ない東南アジアおよびインドのミレ ニアル世代は気前の良い消費者と言えます。消費者信用 市場の登場とローンに対する抵抗感の軽減により、貯蓄 文化から消費文化へと変わりつつあります。アジアのミレ ニアル世代の買い物や外食といった娯楽への出費は収入 の30%となっており、収入の20%に留まる貯蓄よりも多い 1 Definition: Born between 1980 and 2000 2 Using Facebook accounts as a proxy ことが分かっています。2020年までにミレニアル世代は 3,400億米ドルを海外旅行に使うと予測されており、旅行 業界はこの積極的な消費意欲の恩恵を受ける業界の一 つです。これに加えて、一人暮らしという文化を持たない 東南アジアとインドのミレニアル世代の親との同居率は世 界平均の49%よりも高くなっています。したがって家や車 といった大きな出費の経済的なプレッシャーは後からや ってきます。東南アジアおよびインドのミレニアル世代は こういったコミットメントが先送りにされることで、北米 や欧州の同世代と比べ強い購買力を有しています。 このデジタルネイティブな世代は、リテールやゲーム、シ ェアリングエコノミーにも機会をもたらしています。 リテール:社会が突き動かす消費 社会のトレンドを生み出すプロセスは、今日では、伝統的 な企業やコンテンツプラットフォームの特権ではもはや 無くなっています。編集ソフト等、多様なツールが身近に なったことや、配信プラットフォームとしてのソーシャルメ ディアの成長により、誰でもトレンドを生み出すことが可 Chua Joo Hock Managing Partner, Vertex Ventures SEA & India リテール、ゲーム、そしてプラットフォームビジネスといったセクターが盛り上がりを見せて いるが、過熱したバリュエーションには注意が必要
  • 38. 37Preqin & Vertex © 2019 能な社会になりました。人々がただの受動的な消費活動 で満足していたのは過去の話で、現代の消費者はコンテ ンツの作成やアイディア集めを通じて参加することを望 んでいます。結果として、Vogue誌のような従来型のメデ ィアを越えた、Instagramのようなソーシャルメディアや Kickstarterをはじめとしたクラウドソーシングサイトの活 用が増えています。このようにリテール業界において消費 者によって作られるトレンドが影響力を持つようになるな か、パーソナライゼーションやピアドリブン(仲間意識へ の働きかけ)と言ったマーケティング手法がより活用され るようになっています。 ゲーム:Eスポーツの進化 直感的には繋がらないかもしれませんが、実は、ソーシャ ル要素こそがEスポーツブームの原動力です。プレイヤー たちはゲームの世界の中で自身の生活を再現したり、バ ーチャルコミュニティーの中に代替現実を作りだすことが できます。例えば Fortnite というゲームは、多数のフォロ ワーを集め、18年4月の単月で、モバイル・PC・端末を通 じて3億米ドルもの収益を生み出しました。これは free- to-play モデルを採用し、なるべく多くのプレイヤーをゲ ーム内に取り入れ、ゲーム内でのアイテム購入(例えば "skin"と呼ばれる、ゲーム上での自身の容姿や服装等)に よって課金する仕組みになっています。ゲームを実際にプ レイする以外にも、ストリーミングを通じてより大きなコ ミュニティーがゲームの世界に魅了されています。多くの ミレニアル世代はまるでフットボールの試合を見るかのよ うに、プロのEスポーツプレイヤーが登場するリーグを観 戦するのです。18年1月、Amazonのオンラインビデオスト リーミングプラットフォームTwitchは100万人近くの視聴 者を記録しました。これはCNNやFox News、ESPNといっ た伝統的なテレビチャンネルに匹敵する数字です。この プラットフォームでは多くの人のゲームプレイが実況中継 され、それを見学したり、現金で購入できる「ビッツ」とい う仮想通貨をチップとしてプレーヤーに送ることができま す。このように、ストリーミングやゲーム内での購買行動 等の社会的要素の中に、Eスポーツから派生した消費者 市場が存在していると言えます。 シェアリングエコノミー: プラットフォームビジネスの進化 テクノロジーによって可能になったオンデマンドの食料品 購買やギグエコノミーのような新時代のサービスは、ミレ ニアル世代の中で最も広く受け入れられています。マーケ ットプレイスプラットフォームの登場や経済のデジタル化 による検索機能の向上、および輸送コストの低下に伴い 消費者は、様々な商品を、かつ適正価格で見つけられる ようになりました。情報へのアクセスが容易になり、正当 に選択肢を見極めることが可能になった消費者は、この ビジネスモデルに信頼を寄せるようになっています。プラ ットフォームビジネスは今後、経験と高いスキルが要求さ れるサービス領域に挑み、人工知能と市場からの信頼を 利用して、消費者ニーズに応えるソリューションを生み出 してくれるでしょう。 ファームの中には、アジアでは質の高いディールが少な い、あるいは手が届きにくいと考えているファームもあ りますね。これについてVertexはどう考えていますか? また、東南アジアマーケットについても同じことが言え ますか? 東南アジアにおいて良質なディールが不足しているという ことはありません。差し迫った問題を解決しようと奮闘す る面白い企業が次から次へと出てきています。2010年か ら2018年の間の東南アジアへの投資総額はおよそ234億 米ドルで、2017年から2018年にかけて、ディールバリュー は23%増えました。GoogleとTemasekによるe-Conomy SEA Spotlight 2017によると、東南アジアのインターネ ット人口は3億3,000万人で、世界で第3の大きさとなりま す。これは東南アジアがより多くのIT企業の発展にとっ て好ましい環境であるためです。2012年以降、東南アジ アからは10のユニコーン企業(Bukalapak、Grab、Go- Jek、Lazada、Sea、Razer、Tokopedia、Revolution Precrafted、Traveloka、VNG)が生まれました。これら10 社のマーケットバリューの総額は340億米ドルです。 ただし、我々の懸念は過熱した資金調達とバリュエーシ ョンにあります。ベンチャーキャピタルへの投資のペース に関して言えば、1年あたりおよそ30億米ドルと、東南ア ジアは10年前の中国と同じ状況にあります。インドネシ アの成長率は東南アジアの中でも最も早く、2017年に17 億米ドルだった同国への投資は、2018年には29億米ドル となり、約67%増加しました。しかし、急速な成長と収益 性が両立するモデルは、この地域には完全には当てはま らないかもしれません。一例としてインドネシアのP2Pレ ンディング(個人間融資)セクターが挙げられます。イン ドネシアの金融サービスエージェンシー、Otoritas Jasa Keuangan(OJK)によると、2016年から2018年の間で、 登記されたP2Pレンダーは合計11億米ドルを280万人に融 資しました。インドネシアにおける銀行口座を持たない、 十分なサービスを受けていない人々の多さを受け、P2Pレ ンディングセクターは急速に拡大しました。しかしその成 長の速さゆえ、無秩序な国外のプレイヤーも多く入り込 み、金融の民主化を前進させるポテンシャルがあったこの セクターの評判を落としてしまいました。また、OJKには 東南アジアのミレニアル世 代は、北米や欧州の同世代 よりも強い購買力を有して います。
  • 39. 38 グローバルベンチャーキャピタルの最新動向 : PREQINとVERTEXによる共同スタディ 1,300以上の苦情が寄せられ、78の登記済みP2Pレンダ ーに警告を出し、違法なP2Pレンディングサービスを行う 400以上のウェブサイトとアプリをブロックするよう通信 省に協力を求めました。このセクターのより厳しい規制を 目的として、OJKは、P2Pレンディング事業を営むフィンテ ック企業に対し、事業許可を申請する条件として最低10 億インドネシアルピアのキャッシュと、25億米ドルの自己 資本を保有していることを義務付ける等新たなルールを 発令しました。 マネタイズの見通しがなく、オーバーファンディングとな り、過大評価に陥るベンチャーは、東南アジア特有のサ イクルとなっています。正当化できない評価にはやがて マーケットによる修正が入ります。企業の価値評価は難 しく、従来の価値評価手法が投資家にとって意味をなさ ない場合もあります。例えば、GrabとGo-Jekは合わせて 33の資金調達ラウンドがありました。シリーズHに向けた Grabのプレバリュエ―ション額は110億米ドルで、45億米 ドルを調達した後、同社の評価額は140億米ドルに増加 しました。Go-JekやGrabの収益性についての公開され ている情報を見ると、高いバリュエーションの背景には、 投資家がこうした企業の実績だけではなく、これら地域 におけるスーパーアプリの発展に強気でいることがわか ります。 東南アジアのベンチャーキャピタル投資は、かつてない ほど強い関心を集めています。Vertexは、東南アジアに 恵まれた投資機会が多く存在する中でも、各国の独自性 を把握し、それに応じて戦略をカスタマイズする必要が あることを強く認識するようにしています。東南アジアで の投資には、各国の微妙な差異を理解する必要があり、 時には忍耐力や規制に対する柔軟な考え方が必要となる 等、長年の経験が要求されます。東南アジアに新たに参 入する投資家の多くが「熱心」で、自分たちのホームグラ ウンドで慣れ親しんだモデルが東南アジアでもそのまま 通用すると誤解しているように見受けられます。 経験の浅い投資家にとって、投資活動の理性を保ちなが ら、モメンタム投資の誘惑に打ち勝ち、高すぎるバリュエ ーションを受け入れてしまわぬように注意するのは非常 に困難です。残念なことに、メディアによる、どのベンチ ャーキャピタルファンドが最もアクティブな投資家である かという報道や「〇〇スタートアップがシリーズAのバリ ュエ―ション最高額で調達」と謳うような報道が、この状 況をあおっています。 多くの創業者が、非現実的なバリ ュエ―ションでの評価を求めるようになり、最高バリュエ ーションを実現した人物としてメディアに取り上げられる ことに必死になっているようです。VertexVenturesは一貫 して「バリュエーションを追うな」「バリュエーションに追 われるな」を基本思想としてきました。 ベンチャーキャピタルの出資を受け、世界でも大きく 話題になっている企業のいくつかがIPOを行う、また はIPOを検討している昨今のエグジットブームのな か、Vertexは東南アジアでのエグジットをどのように見 ていますか? エグジットの成功として取り上げられる「上場」は、成熟し たITエコシステムから大きな影響を受けたものと言えるで しょう。ベストな現金化の形は地域によって異なります。 例えば東南アジアでは、上場した場合のリターンをM&A や株式売却が上回ることがあります。買収企業が、その地 域に対して強い戦略的関心を抱いている場合に多く見ら れます。 東南アジアでは、エグジットが起こり、それが健全な投 資のペースに寄与するという資金の再利用ができていま す。スタートアップによるエグジット件数は、2015年から 2017年の間、3年連続で増加しました。SeaやRazer等、 名前を挙げられるIPOはわずか一握りで、それゆえ投資 家は東南アジアにおけるエグジットの状況についてネガ ティブな見通しを抱いている可能性があります。しかし、 トレードエグジットやセカンダリー取引による現金化が より一般的で、それらによるエグジットは2017年50件の うち44件、2018年では47件のうち44件となりました。加 えて、GrabによるKudo、TravelokaによるPegiPegiの買 収を例にみると、東南アジアのユニコーンは他企業を買 収し、スタートアップや早期投資家に現金化の機会を与 えていることが分かります。レイターステージを主戦場と する投資家が、コスト適正化を目的として、あるいは資金 調達ラウンドでアロケーションを得られなかったためオ ーナーシップを得ることだけを目的として、セカンダリー マーケットで早期投資家から株式を購入している場合も あります。 上場は多くの地域において 一般的なエグジットのルート ですが、東南アジアでは、買 収や株式売却がIPO以上に 大きな金銭的リターンをもた らす可能性があります。
  • 40. 39Preqin & Vertex © 2019 Chua Joo Hockの経歴 Chua Joo Hockは、シンガポールを拠点として、東南アジアならびにインドにおける投資活動を率いる。1987年に Singapore Technologies Groupに入社。同社のベンチャーキャピタル投資の草創期に関わった。この事業は1988年 にVertexとして再編された。 Vertex入社以来Joo Hockは、一貫してグローバルのベンチャーキャピタル投資に携わっており、特に米国、シンガポ ール、台湾、インド、中国、イスラエルを専門としている。1989年から1992年、1998年から2004年の数年間を米国で過 ごし、Vertex USの投資とオペレーションの責任者を務めた。Joo Hockは1979年にシンガポール国立大学を卒業(学 士号:機械工学)。また、同大学においてMBAを取得。 このような理由から、東南アジアには、投資家にとっても 起業家にとっても、投資で大きなリターンを得られる機会 が転がっているのです。今後3年から5年の間に、東南ア ジア発のユニコーンや企業が更に大きくなり、損失の圧 縮もしくは収益性の向上を進める中で、IPOを選択する企 業が増えていくのではないかと見ています。