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「文明と戦争」(上)
アザー・ガット
原題 War in Human Civilization - Azar Gat


尖閣諸島問題を発端に、
日中関係が悪化している今読むべき本
アゴラ読書塾 2012 年 9 月 21 日
伊賀野 康生
2. 著者 (Azar Gat) について
• 経歴
 – 1959 年 イスラエル ハイファ生まれ ( 53 歳)
 – イスラエル ハイファ大学(学位)
   → テルアビブ大学(修士)
   → 英 オックスフォード大学(博士)
 – 米 エール大学等で教鞭を執る
 – 現在 テルアビブ大学 教授
   • http://socsci.tau.ac.il/sec-dip/index.php/people/gat-azar-prof

• 軍事史、戦争・戦略分野の新進気鋭の研究家
• 動物行動学、進化論から政治学まで幅広い分野
  をカバー
3. この本の主題
• 「戦争の謎」
 – なぜ、戦闘を行うのか?
 – 戦闘は人類の本来的なものか?
 – それとも後天的なものか?
 – 人類の歴史で戦闘は、いつ発生したのか?
 – 「戦争」とは「人類」にとって、何か?


• 戦争/戦闘
 – 人類の致死的、かつ、破壊的な活動
4. 本の構成
• 3 部、 17 章で構成     • 第一部
 – 上下巻              – 過去 200 万年間の戦争
 – 約 1000 ページにおよ      • 原始社会における戦争
   ぶ大著             • 第二部
                    – 農業、文明、戦争
• このレポートでは、           • 農耕社会と国家の出現
                        時における戦争
  主に上巻の内容を解
                   • 第三部
  説する
                    – 近代性 (Modanity)
                      • 近代、産業革命におけ
                        る戦争
5. 戦争は人間の本性か?
• 人間は生まれ持って戦争する生物なの
  か?
 – 人間の行動は 2 つの影響を受けている
   • 生物としての「ハードウェア」
   • 文化等の「ソフトウェア」
 – 「人間の自然状態」が分かれば良い
 – 約 200 万年の人類の歴史を考える
• 古典的論争( 17~18 世紀)
 – 「ホッブズ」と「ルソー」
6. ホッブズとルソー
• Thomas Hobbes
  – 1588-1679
  – イングランドの哲学者
  – 著書 「リヴァイアサン」
     • 人間の自然状態は戦争状態
        – 「万人の万人に対する闘争」
     • 国家の形成によって平和になった


• Jean-Jacques Rousseau
  – 1712-1778
  – フランスの哲学者
  – 著書 「人間不平等起源説」
     • 先住民は分散して生活し、
       同調的な性格で平和に生きていた
     • 戦争は文明によって発明された
7. 人類の歴史
• 200 万年のうち、 99.5% は「狩猟採集生活」
 – Homo eretus : 200 万年前
   • 道具/火の使用、意思伝達
 – Homo sapiense : 50 万年前
 – Homo sapiens sapiens : 10 万年前
   • 農耕社会が始まる : 1 万年前
                                          1 メートルの内、
                                            わずか 5mm



  人類の歴史




      0%     20%    40%       60%   80%     1 00%
                   狩猟採集社会   農耕社会
8. 殺人するのは人間だけか?
• 殺人 = 同種間での暴力/殺傷
• ロバート・オードリー 「アフリカの起源」 ( 1961 )
  – 人は特別
  – 他の動物は同種を殺したりしない
• コンラート・ローレンツ「攻撃 – 悪の自然誌」 ( 1966 )
  – 草食動物も同種間で戦う
  – でも、殺さない
  – 原因は「資源」と「メス」 (それらが確保できれば、それ以上攻撃し
    ない)



• ジェーン・グッドールによるタンザニアでのフィールド研究
  ( 1960 年代中頃)
  – チンパンジーは肉を欲しがり、同種を殺す(メスも子供も)
  – 嫉妬深く、争いを好み、殺害し、戦う
• 他の動物世界でも同種間の殺害は一般的
  – 動物の死因の最も多い原因の一つ
9. 動物一般の同種間の殺害
• 人間以外の動物でも、同種間の殺害は高い確率
  で行われている
 – ライオン、オオカミ、ハイエナ、ヒヒ、ネズミ、サ
   ル、ゴリラ、鳥類
 – 原因 : 餌食、パートナー、その他(縄張り)
• むしろ、他の動物に比べて同種間の殺害は、人
  間の方が少ないぐらい
• 一方で、ピグミー・チンパンジーやボノボは
 – 自由な性交、ほとんど暴力を伴わない牧歌的生活

• 「自然状態」の人間はどうか?
10. 狩猟採集民は戦ったのか?
• 20 世紀初頭は「ルソー派」(人は平和)が支配的で
  あった
 – 国家形成以前の社会は平和で、戦争は後の文化的な発明


• ローレンス・キリー「文明以前の戦争 – 平和的野蛮の神
  話」 ( 1996 年)
 – 新石器時代(農耕・畜産が始まる)に戦争が存在した


• それ以前の更新(洪積)世( 200 万年前 ~1 万年前)は
  どうか?
 – 考古学による証明には限界がある


 – 現存する狩猟採集民はどうか?
11. 現存する(した)狩猟採集
         民
• 1960 年代に調査・分析が進んだ
 – 中央カナダ 北極エスキモー
   • 拡散して住んでいるが、いさかいや殺人が起きていた
 – グリーンランド、アラスカ沿岸のエスキモー
   • 好戦的
 – その他平和とされる部族も、過去の戦闘の証拠が見
   つかった


• 狩猟への依存度が高いほど、戦争の頻度は高ま
  る
12. 調査された狩猟採集民
• 調査された単純狩猟採集民
 – 戦闘を行い、死傷者が出た証拠がある
 – しかし、(調査等のための)外部の影響を受けた可
   能性がある
  • 汚染されたサンプル
 – 狩猟採集民には、文字による記録がなく「 Native
   な」状態が分からない


• 農耕民、牧畜民の影響をほとんど受けていない
  純粋な狩猟採集民を観察する必要がある
13. 現存した「純粋な」狩猟採
        集民
• オーストラリア大陸のアボリジニ
 – 1788 年にヨーロッパ人が入植
 – それ以前は、農耕民、牧畜民は存在しなかった

 –   30 万人の狩猟採集民がいた
 –   400~700 の地域集団
 –   各集団には 500~600 人の構成員
 –   それぞれの縄張りが存在
     • ルソー派の言う「広大な共有地」はない
 – 特定の土地に縛られた遊牧民
• その他、「タスマニア先住民」など
14. アボリジニの実地調査
• M. J. メギット
  – 19 世紀中盤以降
  – ワルビリ族 (オーストラリア中部の砂漠地帯)
  – 人口密度 : 90 平方キロメートル辺り一人
    • ちなみに、山手線の内側の面積は 63 平方キロメートル
  – 他の部族への侵入
    • スポーツとしての狩りと女性拉致を兼ねた急襲
    • 双方に死者
• などなど
• 彼らの殺人率は、戦争のある近代社会よりも高
  い
  – 3000 人のうち、 100~200 人が殺された
15. 農業の始まりと戦争
• 農業の始まりによって変わったもの
(複合狩猟採集民の誕生)
 – 定住生活
 – 食料貯蔵
 – 所有物
 – 高い人口密度
 – 社会の階層化

 – 複合狩猟採集社会にも戦争はあったのか?
16. 複合採集民族と戦闘
• 洞窟・岩盤芸術に戦闘が描かれている
 – 約 1 万年前
 – フランス、スペイン、ドイツ、オーストラリ
   ア、北米
 – 弓を用いた戦闘
• 人口密度の高低に関わらず、戦争は起
  こっている
• 定住によって戦闘の痕跡が残りやすく
  なった
17. 複合採集民族の研究
•   北アメリカ大陸北西沿岸部
•   西洋人の入植は 18 世紀後半
•   インディアンやエスキモーが居住
•   人口密度
    – 1 平方マイル( 2.5 平方キロメートル)辺り 3~5 人
    – 比較的高い
• 凄惨な戦争が絶えず起きていた
    –   資源の獲得競争 (資源が豊富でも、人も増える)
    –   社会階層が発展
    –   境界線をめぐる争い
    –   女性の獲得
    –   ひけらかしの消費の出現
18. (単純+複合)狩猟採集民
• 狩猟採集民は、多彩な種族が相互に全域
  で戦闘を行なっていた
 – 人口密度には関係がない


• 戦闘での死が主要な死因

• 資源やパートナー(女性)、もしくは、
  それから派生する様々な原因で戦ってい
  た
19. 結論 (1)
  今日なお幅を利かせるルソー派の見解に反し、
  戦闘は最近の発明ではない
                      P.47



戦争は最近になって現れた文化上の「発明」ではなく、
人間にとって「自然な」ものとは断言できないまでも、
「不自然」であると言い切ることもできない
                      P.61
20. 戦闘は先天的なものか?
• 戦争は「文化的な発明」ではない
  。
• では、なぜ、人間は戦うのか?
– 先天的なものか?

• 攻撃性は、極めて危険な戦術的技
  能として先天的なものであり、か
  つ、選択的なものである。
21. 進化論と戦争
• 進化論
 – 最も生存/生殖能力が高いものが数を増やし、生存
   /生殖の資質を向上させた
• 生存に必要な資源による獲得競争が発生
• 獲得競争の直接的手段として、競争や紛争は、
  生存競争における有効な技術であった
• 生殖に関しては、同一の生物種での競争が激し
  い
• ただし、本気で戦うと、自分が死ぬ可能性があ
  る
• 血縁を守るために、利他的な自己犠牲として戦
  う事が考えられる
22. 血縁と文化
• 守るべき血縁の識別として、文化が使われる

• 自民族中心主義
 – ブラジルとベネズエラの国境付近に住む狩猟民族
  • ヤノマミ族
    – 自部族を指す「ヤノマミ = 人類」
    – 他部族を指す「ナバ = 人間に満たないもの」



• 人類の歴史の大部分で形成された集団
 – 小規模な血縁集団
23. 集団と人類の進化
• 地域集団はホモ・サピエンス・サピエン
  スの登場以後
 – 地域集団は、家族集団(血縁集団)よりも強
   力であった
 – ホモ・サピエンス・サピエンス以前の人類
  • ネアンデルタール人
  • 血縁集団しか持てなかったのでは?
  • これにより、ネアンデルタール人は滅んだ
24. 宗教と戦争
• 宗教
 – ホモ・サピエンス・サピエンスの進化した
   「ソフトウェア」における「バグ」「寄生
   虫」「ウィルス」
• 人は、宗教に莫大な投資をしてきた
• 言語、宗教、芸術、地域集団の形成が相
  まってホモ・サピエンス・サピエンスの
  戦争における優位性をもたらした
25. 戦争の動機
• 戦闘によって得られる報酬とは何か?
 – 女性 (性行動への欲求)
  • 直接的な、生存行動とは異なる (子殺しの実態)
 – 狩猟のための縄張り
  • 狩猟採集民が肉を獲得するために戦った
  • 草は奪わない(栄養価の密度が低く、効率が悪
    い)
 –水
  • 生存に直接必要
26. 生殖と競争
• メス
 – 一度の受胎を最大限に活用するため、優秀なオスを選ぶ必要が
   ある
• オス
 – 理屈では、残せる子供の数は無限
 – オスの性的性交を阻害するのは他のオスとの競合のみ
• 人間は、生来、一夫一婦制ではない
 – 経済力に応じて、多くの妻と子供を持つことができた
 – (倫理における性的な不貞を論じているわけではない)
 – 3 人以上の妻を持てたのは既婚男性の 10~15% 程度
   (アボリジニ)
• 成功する男性
 – 優れた供給者で、腕力があり、社会的に目端が効き、大きな家
   族の出身
27. 一夫多妻制
• 女性の希少価値を高める
• 男性間の競争を激化させる
• さらに
 – 狩猟に依存している社会では女児殺しが頻繁にみら
   れる
 – エスキモー
  • 幼児期の男女比率 = 150 : 100
 – アボリジニ、ヤノマミ等の他の多くの民族で見られ
   る
  • NHK スペシャル 「ヤノマミ 奥アマゾン 原初の森に生き
    る」
    – http://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2012035560SA000/
 – 更に女性の希少性を高める
• 男の婚期を遅くする事で帳尻を合わせた
 – 多くの男が暴力や事故が死ぬ
28. 男は獣か?
• 戦闘は男と結びついてきた
• 体力 : 男 > 女
• 脳科学
 – 男性:空間把握、数学能力
 – 女性:空間記憶、言語能力、対人における心的状態の把握
• 男は乱暴
 – テストステロン
 – 同性間での殺人
   • 男対男は、全体の 92%~100%
• 男と女は違うもの
 – 北欧では女性の 80% が働いているが、男女比が同じ職業に従事
   する女性は全体の 10% だけ
29. 戦争の動機 Part2
•   戦闘の動機として二次的な原因も        •   食人
    ある                         – 幾つかの事例はあるが、あまり広
                                 まらなかった
                               – 理由
•   支配 (順序、地位、特権、名誉)                • 同種の動物を捕食するのは危険
    – 資源を多く獲得できる               – 限られた事例の理由
    – 実態に関わらず、他からどう見え               • 敗者に対する優越感
      るか
                           •   遊び、冒険、加虐嗜好、恍惚
•   復讐 (排除と抑制)                 – 遊戯は全ての哺乳類の特徴
    – しっぺ返し - 直感的欲望
                               – 戦いの準備としての遊び
    – 囚人のジレンマ – 裏切る事が合理
      的                        – 「自己顕示」や「無目的」は例外
      • 終わりのない戦い、悪循環
                                 的な動機
      • 終わらせる方法
           – 双方で和解を受け入れる
           – 第三者の助け
•   安全保障
    – よそ者への警戒 → 相手も警戒 →
      軍備競争
    – このような悪循環を断ち切る方法
      • 友好的訪問と儀礼的な饗応
30. どのように戦ったか?
• 自己に有利な場合にのみ戦う
• 敵に止めを刺す事に固執しない
 – 反撃にあって深刻な怪我を負うリスク
• 同種での殺害
 – 生殖や餌のために弱い競争相手を殺す
   • 無防備な子供やひな
   • 奇襲攻撃
• 未開の戦争
 – 本当にやる場合 : 夜の奇襲
 – 争いを終わらせたい場合 : 形式的な戦争ごっこ
31. 国家と戦争
• 国家形成によって、戦闘による死亡率を下げた?
• 暴力による死亡率
 – 狩猟採集社会 (未開社会)
   • 15% (男性の 25% )
 – 第二次ポエニ戦争 ( BC218 - 202 )
   • 成人男性の 17%
 – フランスの戦死者
   • 17 世紀 : 1.1% 、 18 世紀 : 2.7% 、 19 世紀 : 3%
 – アメリカ南北戦争
   • 1.3%
 – 第一次世界大戦 (仏+独)
   • 3% (成人男性の 15% )
 – 第二次世界大戦
   • ソ連 : 15% 、ドイツ : 5%
• 平均で考えると、未開社会より国家形成後の方が死亡率が低い
32. まとめ
• 人間は、他の動物と同じように、同種間で殺し
  合ってきた
• 原因は、資源(食べ物や生殖)の獲得に関する
  競争 (欠乏)
• 政府が存在しない状態では、更に多くの暴力が
  蔓延
 – 【アラブの春、イラク、アフガニスタン】
• 戦闘そのものよりも、起きるかもしれないとい
  う危険性が人類に影響を与えてきた
• 競争と紛争は自己増殖し、双方に被害をもたら
  す
33. 戦闘とは
• 個体数の増加に伴って生じる激化した競
  争で、比較優位を占めるために人々や他
  の生物がとる戦略

• ある種が生き残った理由は、生存に勝ち
  抜いたからという理由以外には、何の理
  由もない
 – 機能主義への批判
34. 第二部以降
• 人間の戦闘の歴史において、遺伝(本能
  としての好戦嗜好)と文化の相互作用を
  見ていく

• 戦闘によって、人間にもたらされたもの
  は何か?

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アザー・ガット「文明と戦争」を読んで

  • 1. 「文明と戦争」(上) アザー・ガット 原題 War in Human Civilization - Azar Gat 尖閣諸島問題を発端に、 日中関係が悪化している今読むべき本 アゴラ読書塾 2012 年 9 月 21 日 伊賀野 康生
  • 2. 2. 著者 (Azar Gat) について • 経歴 – 1959 年 イスラエル ハイファ生まれ ( 53 歳) – イスラエル ハイファ大学(学位) → テルアビブ大学(修士) → 英 オックスフォード大学(博士) – 米 エール大学等で教鞭を執る – 現在 テルアビブ大学 教授 • http://socsci.tau.ac.il/sec-dip/index.php/people/gat-azar-prof • 軍事史、戦争・戦略分野の新進気鋭の研究家 • 動物行動学、進化論から政治学まで幅広い分野 をカバー
  • 3. 3. この本の主題 • 「戦争の謎」 – なぜ、戦闘を行うのか? – 戦闘は人類の本来的なものか? – それとも後天的なものか? – 人類の歴史で戦闘は、いつ発生したのか? – 「戦争」とは「人類」にとって、何か? • 戦争/戦闘 – 人類の致死的、かつ、破壊的な活動
  • 4. 4. 本の構成 • 3 部、 17 章で構成 • 第一部 – 上下巻 – 過去 200 万年間の戦争 – 約 1000 ページにおよ • 原始社会における戦争 ぶ大著 • 第二部 – 農業、文明、戦争 • このレポートでは、 • 農耕社会と国家の出現 時における戦争 主に上巻の内容を解 • 第三部 説する – 近代性 (Modanity) • 近代、産業革命におけ る戦争
  • 5. 5. 戦争は人間の本性か? • 人間は生まれ持って戦争する生物なの か? – 人間の行動は 2 つの影響を受けている • 生物としての「ハードウェア」 • 文化等の「ソフトウェア」 – 「人間の自然状態」が分かれば良い – 約 200 万年の人類の歴史を考える • 古典的論争( 17~18 世紀) – 「ホッブズ」と「ルソー」
  • 6. 6. ホッブズとルソー • Thomas Hobbes – 1588-1679 – イングランドの哲学者 – 著書 「リヴァイアサン」 • 人間の自然状態は戦争状態 – 「万人の万人に対する闘争」 • 国家の形成によって平和になった • Jean-Jacques Rousseau – 1712-1778 – フランスの哲学者 – 著書 「人間不平等起源説」 • 先住民は分散して生活し、 同調的な性格で平和に生きていた • 戦争は文明によって発明された
  • 7. 7. 人類の歴史 • 200 万年のうち、 99.5% は「狩猟採集生活」 – Homo eretus : 200 万年前 • 道具/火の使用、意思伝達 – Homo sapiense : 50 万年前 – Homo sapiens sapiens : 10 万年前 • 農耕社会が始まる : 1 万年前 1 メートルの内、 わずか 5mm 人類の歴史 0% 20% 40% 60% 80% 1 00% 狩猟採集社会 農耕社会
  • 8. 8. 殺人するのは人間だけか? • 殺人 = 同種間での暴力/殺傷 • ロバート・オードリー 「アフリカの起源」 ( 1961 ) – 人は特別 – 他の動物は同種を殺したりしない • コンラート・ローレンツ「攻撃 – 悪の自然誌」 ( 1966 ) – 草食動物も同種間で戦う – でも、殺さない – 原因は「資源」と「メス」 (それらが確保できれば、それ以上攻撃し ない) • ジェーン・グッドールによるタンザニアでのフィールド研究 ( 1960 年代中頃) – チンパンジーは肉を欲しがり、同種を殺す(メスも子供も) – 嫉妬深く、争いを好み、殺害し、戦う • 他の動物世界でも同種間の殺害は一般的 – 動物の死因の最も多い原因の一つ
  • 9. 9. 動物一般の同種間の殺害 • 人間以外の動物でも、同種間の殺害は高い確率 で行われている – ライオン、オオカミ、ハイエナ、ヒヒ、ネズミ、サ ル、ゴリラ、鳥類 – 原因 : 餌食、パートナー、その他(縄張り) • むしろ、他の動物に比べて同種間の殺害は、人 間の方が少ないぐらい • 一方で、ピグミー・チンパンジーやボノボは – 自由な性交、ほとんど暴力を伴わない牧歌的生活 • 「自然状態」の人間はどうか?
  • 10. 10. 狩猟採集民は戦ったのか? • 20 世紀初頭は「ルソー派」(人は平和)が支配的で あった – 国家形成以前の社会は平和で、戦争は後の文化的な発明 • ローレンス・キリー「文明以前の戦争 – 平和的野蛮の神 話」 ( 1996 年) – 新石器時代(農耕・畜産が始まる)に戦争が存在した • それ以前の更新(洪積)世( 200 万年前 ~1 万年前)は どうか? – 考古学による証明には限界がある – 現存する狩猟採集民はどうか?
  • 11. 11. 現存する(した)狩猟採集 民 • 1960 年代に調査・分析が進んだ – 中央カナダ 北極エスキモー • 拡散して住んでいるが、いさかいや殺人が起きていた – グリーンランド、アラスカ沿岸のエスキモー • 好戦的 – その他平和とされる部族も、過去の戦闘の証拠が見 つかった • 狩猟への依存度が高いほど、戦争の頻度は高ま る
  • 12. 12. 調査された狩猟採集民 • 調査された単純狩猟採集民 – 戦闘を行い、死傷者が出た証拠がある – しかし、(調査等のための)外部の影響を受けた可 能性がある • 汚染されたサンプル – 狩猟採集民には、文字による記録がなく「 Native な」状態が分からない • 農耕民、牧畜民の影響をほとんど受けていない 純粋な狩猟採集民を観察する必要がある
  • 13. 13. 現存した「純粋な」狩猟採 集民 • オーストラリア大陸のアボリジニ – 1788 年にヨーロッパ人が入植 – それ以前は、農耕民、牧畜民は存在しなかった – 30 万人の狩猟採集民がいた – 400~700 の地域集団 – 各集団には 500~600 人の構成員 – それぞれの縄張りが存在 • ルソー派の言う「広大な共有地」はない – 特定の土地に縛られた遊牧民 • その他、「タスマニア先住民」など
  • 14. 14. アボリジニの実地調査 • M. J. メギット – 19 世紀中盤以降 – ワルビリ族 (オーストラリア中部の砂漠地帯) – 人口密度 : 90 平方キロメートル辺り一人 • ちなみに、山手線の内側の面積は 63 平方キロメートル – 他の部族への侵入 • スポーツとしての狩りと女性拉致を兼ねた急襲 • 双方に死者 • などなど • 彼らの殺人率は、戦争のある近代社会よりも高 い – 3000 人のうち、 100~200 人が殺された
  • 15. 15. 農業の始まりと戦争 • 農業の始まりによって変わったもの (複合狩猟採集民の誕生) – 定住生活 – 食料貯蔵 – 所有物 – 高い人口密度 – 社会の階層化 – 複合狩猟採集社会にも戦争はあったのか?
  • 16. 16. 複合採集民族と戦闘 • 洞窟・岩盤芸術に戦闘が描かれている – 約 1 万年前 – フランス、スペイン、ドイツ、オーストラリ ア、北米 – 弓を用いた戦闘 • 人口密度の高低に関わらず、戦争は起 こっている • 定住によって戦闘の痕跡が残りやすく なった
  • 17. 17. 複合採集民族の研究 • 北アメリカ大陸北西沿岸部 • 西洋人の入植は 18 世紀後半 • インディアンやエスキモーが居住 • 人口密度 – 1 平方マイル( 2.5 平方キロメートル)辺り 3~5 人 – 比較的高い • 凄惨な戦争が絶えず起きていた – 資源の獲得競争 (資源が豊富でも、人も増える) – 社会階層が発展 – 境界線をめぐる争い – 女性の獲得 – ひけらかしの消費の出現
  • 18. 18. (単純+複合)狩猟採集民 • 狩猟採集民は、多彩な種族が相互に全域 で戦闘を行なっていた – 人口密度には関係がない • 戦闘での死が主要な死因 • 資源やパートナー(女性)、もしくは、 それから派生する様々な原因で戦ってい た
  • 19. 19. 結論 (1) 今日なお幅を利かせるルソー派の見解に反し、 戦闘は最近の発明ではない P.47 戦争は最近になって現れた文化上の「発明」ではなく、 人間にとって「自然な」ものとは断言できないまでも、 「不自然」であると言い切ることもできない P.61
  • 20. 20. 戦闘は先天的なものか? • 戦争は「文化的な発明」ではない 。 • では、なぜ、人間は戦うのか? – 先天的なものか? • 攻撃性は、極めて危険な戦術的技 能として先天的なものであり、か つ、選択的なものである。
  • 21. 21. 進化論と戦争 • 進化論 – 最も生存/生殖能力が高いものが数を増やし、生存 /生殖の資質を向上させた • 生存に必要な資源による獲得競争が発生 • 獲得競争の直接的手段として、競争や紛争は、 生存競争における有効な技術であった • 生殖に関しては、同一の生物種での競争が激し い • ただし、本気で戦うと、自分が死ぬ可能性があ る • 血縁を守るために、利他的な自己犠牲として戦 う事が考えられる
  • 22. 22. 血縁と文化 • 守るべき血縁の識別として、文化が使われる • 自民族中心主義 – ブラジルとベネズエラの国境付近に住む狩猟民族 • ヤノマミ族 – 自部族を指す「ヤノマミ = 人類」 – 他部族を指す「ナバ = 人間に満たないもの」 • 人類の歴史の大部分で形成された集団 – 小規模な血縁集団
  • 23. 23. 集団と人類の進化 • 地域集団はホモ・サピエンス・サピエン スの登場以後 – 地域集団は、家族集団(血縁集団)よりも強 力であった – ホモ・サピエンス・サピエンス以前の人類 • ネアンデルタール人 • 血縁集団しか持てなかったのでは? • これにより、ネアンデルタール人は滅んだ
  • 24. 24. 宗教と戦争 • 宗教 – ホモ・サピエンス・サピエンスの進化した 「ソフトウェア」における「バグ」「寄生 虫」「ウィルス」 • 人は、宗教に莫大な投資をしてきた • 言語、宗教、芸術、地域集団の形成が相 まってホモ・サピエンス・サピエンスの 戦争における優位性をもたらした
  • 25. 25. 戦争の動機 • 戦闘によって得られる報酬とは何か? – 女性 (性行動への欲求) • 直接的な、生存行動とは異なる (子殺しの実態) – 狩猟のための縄張り • 狩猟採集民が肉を獲得するために戦った • 草は奪わない(栄養価の密度が低く、効率が悪 い) –水 • 生存に直接必要
  • 26. 26. 生殖と競争 • メス – 一度の受胎を最大限に活用するため、優秀なオスを選ぶ必要が ある • オス – 理屈では、残せる子供の数は無限 – オスの性的性交を阻害するのは他のオスとの競合のみ • 人間は、生来、一夫一婦制ではない – 経済力に応じて、多くの妻と子供を持つことができた – (倫理における性的な不貞を論じているわけではない) – 3 人以上の妻を持てたのは既婚男性の 10~15% 程度 (アボリジニ) • 成功する男性 – 優れた供給者で、腕力があり、社会的に目端が効き、大きな家 族の出身
  • 27. 27. 一夫多妻制 • 女性の希少価値を高める • 男性間の競争を激化させる • さらに – 狩猟に依存している社会では女児殺しが頻繁にみら れる – エスキモー • 幼児期の男女比率 = 150 : 100 – アボリジニ、ヤノマミ等の他の多くの民族で見られ る • NHK スペシャル 「ヤノマミ 奥アマゾン 原初の森に生き る」 – http://www.nhk-ondemand.jp/goods/G2012035560SA000/ – 更に女性の希少性を高める • 男の婚期を遅くする事で帳尻を合わせた – 多くの男が暴力や事故が死ぬ
  • 28. 28. 男は獣か? • 戦闘は男と結びついてきた • 体力 : 男 > 女 • 脳科学 – 男性:空間把握、数学能力 – 女性:空間記憶、言語能力、対人における心的状態の把握 • 男は乱暴 – テストステロン – 同性間での殺人 • 男対男は、全体の 92%~100% • 男と女は違うもの – 北欧では女性の 80% が働いているが、男女比が同じ職業に従事 する女性は全体の 10% だけ
  • 29. 29. 戦争の動機 Part2 • 戦闘の動機として二次的な原因も • 食人 ある – 幾つかの事例はあるが、あまり広 まらなかった – 理由 • 支配 (順序、地位、特権、名誉) • 同種の動物を捕食するのは危険 – 資源を多く獲得できる – 限られた事例の理由 – 実態に関わらず、他からどう見え • 敗者に対する優越感 るか • 遊び、冒険、加虐嗜好、恍惚 • 復讐 (排除と抑制) – 遊戯は全ての哺乳類の特徴 – しっぺ返し - 直感的欲望 – 戦いの準備としての遊び – 囚人のジレンマ – 裏切る事が合理 的 – 「自己顕示」や「無目的」は例外 • 終わりのない戦い、悪循環 的な動機 • 終わらせる方法 – 双方で和解を受け入れる – 第三者の助け • 安全保障 – よそ者への警戒 → 相手も警戒 → 軍備競争 – このような悪循環を断ち切る方法 • 友好的訪問と儀礼的な饗応
  • 30. 30. どのように戦ったか? • 自己に有利な場合にのみ戦う • 敵に止めを刺す事に固執しない – 反撃にあって深刻な怪我を負うリスク • 同種での殺害 – 生殖や餌のために弱い競争相手を殺す • 無防備な子供やひな • 奇襲攻撃 • 未開の戦争 – 本当にやる場合 : 夜の奇襲 – 争いを終わらせたい場合 : 形式的な戦争ごっこ
  • 31. 31. 国家と戦争 • 国家形成によって、戦闘による死亡率を下げた? • 暴力による死亡率 – 狩猟採集社会 (未開社会) • 15% (男性の 25% ) – 第二次ポエニ戦争 ( BC218 - 202 ) • 成人男性の 17% – フランスの戦死者 • 17 世紀 : 1.1% 、 18 世紀 : 2.7% 、 19 世紀 : 3% – アメリカ南北戦争 • 1.3% – 第一次世界大戦 (仏+独) • 3% (成人男性の 15% ) – 第二次世界大戦 • ソ連 : 15% 、ドイツ : 5% • 平均で考えると、未開社会より国家形成後の方が死亡率が低い
  • 32. 32. まとめ • 人間は、他の動物と同じように、同種間で殺し 合ってきた • 原因は、資源(食べ物や生殖)の獲得に関する 競争 (欠乏) • 政府が存在しない状態では、更に多くの暴力が 蔓延 – 【アラブの春、イラク、アフガニスタン】 • 戦闘そのものよりも、起きるかもしれないとい う危険性が人類に影響を与えてきた • 競争と紛争は自己増殖し、双方に被害をもたら す
  • 33. 33. 戦闘とは • 個体数の増加に伴って生じる激化した競 争で、比較優位を占めるために人々や他 の生物がとる戦略 • ある種が生き残った理由は、生存に勝ち 抜いたからという理由以外には、何の理 由もない – 機能主義への批判
  • 34. 34. 第二部以降 • 人間の戦闘の歴史において、遺伝(本能 としての好戦嗜好)と文化の相互作用を 見ていく • 戦闘によって、人間にもたらされたもの は何か?