電子書籍が順調に売れ始めた理由／プロモーションの方法と今後重要になる電子出版マーケティングの提案～「一人出版社、構想から立ち上げ、運用まで、苦難の道のり」

CREATIVE EDGE SCHOOL BOOKS
4MEDIA SOLUTION ALPHA VERSION
電子書籍が順調に売れ始めた理由
プロモーションの方法と今後重要になる
電子出版マーケティングの提案
∼「一人出版社、構想から立ち上げ、
運用まで、苦難の道のり」
日時：6 月 5 日（金）15:00 ∼ 17:30
会場：東京・飯田橋（研究社英語センター）
参加：221 名
主催：日本電子出版協会（JEPA）
http://www.jepa.or.jp/sem/20150605/

本スライドは、講演と（当日公開された）配布資料の
補足情報です。
配布資料：
※この資料は、リアルプロモーションのためのアナログツール（印刷用
パンフレット）です。
一
人
出
版
社
クリエイティブエッジスクールブックス
http://design-zero.tv/school/booklist/
ebookcast@gmail.com
デ
ジ
タ
ル
本
専
門
の
ebookcast@gmail.com
一人出版社「Creative Edge School Books（クリエイティブエッジスクール
ブックス）」は、「出版社」と「本屋」、「学びの場」の 3 つの機能が融合した
小さなプラットフォームです。8 ヵ月前の 2014 年 10 月に生まれました。
bookstorepublisher learning field
本
屋
出
版
社
学
び
の
場
デジタル本をつくる
デジタル本を販売する
販売終了した
デジタル本を公開する
01
http://www.slideshare.net/JEPAslide/sakai-20150605

一
人
出
版
社
ebookcast@gmail.com
デ
ジ
タ
ル
本
専
門
の

この資料は、質問の多かった電子出版の
マーケティング手法（Creative Edge School Booksで
実践してきた手法「4media」）について掲載しています。

4MEDIACREATIVE EDGE SCHOOL BOOKS
http://design-zero.tv/4media/

情報を届けることの難しさ

企業が自社製品やサービスの情報を多くの人に伝
え、関心を持ってもらうには、継続的な広報活動が
欠かせません。ただ、現在は大量のマイクロコンテ
ンツが秒速で共有されていく時代。たんなる情報提
供では、視界にも入りません。

店舗であれば、対話のきっかけを得られる可能性が
ありますので、店員が説明したり、カタログを渡す
などユーザーに直接働きかけることができますが、
ネットでは基本的に「見つけてもらう」しかありま
せん。

デジタル本を「つくる」「売る」は容易になりました
が、「その存在を知らせること」は簡単ではありませ
ん。たとえ情報が届いても「買ってもらえる」保証は
どこにもありません。

これは、デジタル本に限らず、すべての商品、製品、
作品にいえることです。
プロ、アマチュア問わず、音楽でも映像でも、ストア
に置くだけではなかなか売れません。

一人出版社「Creative Edge School Books」は、デジ
タル本の出版社です。
専業でやっていますので、たとえ媒体力を手に入れ
ても、売れなければ、あっという間に活動停止に追
いこまれます。

「Creative Edge School Books」は、デジタル本の一人出版社

つまり、コンテンツのプランニングおよび調達の仕
組みだけではなく、マーケティングの機能も確立さ
せないと、未来はありません。

講演でお話したとおり、プロダクトアウトではな
く、マーケットインを選択し、ニーズに応えるコン
テンツづくりを優先したのも、読者との対話を生み
出す「場」をはやく構築しておきたかったからです。

本
屋
出
版
社
学
び
の
場
読
者
と
対
話
し
な
が
ら
本
を
つ
く
る
ベータテスト
ヒアリング

そして、リアルプロモーションに力を入れました。
ここが大きな転機です。
訪問ワークショップを中心とした「外に出て行く」
活動を主にしたことで、状況が変わりました。

訪問ワークショップ

過去、数回起きた口コミはすべてリアルプロモー
ションがきっかけです。
もし、ネットだけのプロモーションを続けていた
ら、デジタル本の売り上げを伸ばせないまま、早々
に廃業していたかもしれません。

デジタル本が売れ始めたのは、リアルプロモーション
で読者（お客さん）との信頼関係を築き、その後、ネッ
トのプロモーションにつなげていったからです。
知名度も媒体力もない一人出版社は、まず「外に出る」
ことが重要でした。

ただ、デジタル本が売れるようになっても、「現状維
持」からはまだ抜け出せません。個人作家としては
十分活動できますが、出版社を発展させるには、も
う一つ大きな壁を越えなければいけません。

一人出版社の最大の弱点は「自分が倒れたら出版社
も倒れる」ことです。企画から編集、制作、ストア運
用、販売、プロモーションなどすべてを「一人」で
やっているからです。

一人出版社のスタイルを崩す必要はありませんが、
協業ベースの仕事に切り換えていかないと、大きな
プロジェクトほど「一人ですべて抱えること」のリス
クが高まり、思い切ったことができなくなります。

これからは、大きなプロジェクトを手がけるための
基盤づくり、そしてデジタル本の周辺に複数の収入
の柱を立て、新しい仕事を創っていく体力を持たな
くてはいけません。

現在、全精力を注ぎ、最優先で進めているが、
Moodle ベースの「読者向けプラットフォーム」と
「電子出版マーケティング（4media）」の開発です。

オープンソースの
eラーニングシステムを採用
Moodle, Open edX

・デジタル本の読者専用ページを提供
・追加コンテンツの公開
・質問受け付け（個別・共有）
・制作中のデジタル本のベータテストを実施
・関連ウェブキャストの視聴
・関連イベントなどの資料や音声を先行公開
・読者向けの新サービスのアルファテスト

本
屋
出
版
社
学
び
の
場
﹁
学
習
者
﹂
か
ら
読
者
へ
﹁
読
者
﹂
か
ら
学
習
者
へ
長期プロジェクト
コンテンツ
Moodle, Open edX

ここから、電子出版マーケティング（4media）の補足
情報を掲載します。
「4media」が生まれた経緯については、講演でお話し
ましたので割愛します。

Creative Edge School Books では、情報発信を「異
なるメディアを使って」数回に分け、「段階的に詳細
化していく」手法を実践してきました（「4media」と
呼んでいます）。

Landing Page ebook
ランディングページイーブック
1 3 4
Creative Edge School Books - 4media Solution
Scroll Activated
Comic Book
コミック
2
Explainer Video
エクスプレーナービデオ

情報アクセスの「敷居の低い順」に、
「段階的に」
1ヶ月から 3ヶ月かけて進めます
伝える情報を「詳細化していく」手法

Landing Page
ebook
1
4
Scroll Activated
Comic Book
2
Explainer Video
3
テ
ィ
ザ
ー
︵
注
目
︶
ス
マ
ホ
で
一
分
︵
印
象
︶
動
画
で
二
分
︵
共
感
︶
デ
ジ
タ
ル
本
で
十
五
分
︵
詳
細
︶

1. ランディングページ 15 秒サッと見る
（ティザー／インパクト／一回）※情報の基点
2. スマホコミック 1 分スルスルと流し見
（印象／娯楽／数回）※置き換え可能
3. エクスプレーナービデオ 2 分
音なし小さな画面でも伝わる
（共感／ストーリーテリング／数回）
4. デジタル本 15 ∼ 30 分じっくりと読んでもらう
（詳細／魅力、世界観／一回）

頻繁に更新するシングルロングページ
数種類のエクスプレーナービデオ
数種類のスマホコミック
著
者
の
作
品
の
世
界
観
を
４
Ｍ
Ｅ
Ｄ
Ｉ
Ａ
で
伝
え
る
15秒
1分
2分
繰り返す
http://design-zero.tv/school/zerorobotics/

きっかけはカスタムパブリッシングの依頼でした。
企業の取り組みを「電子書籍」を使って紹介するプ
ロジェクトがあり、そこで「情報アクセスの敷居の
低いメディア」から順に公開し、情報を詳細化して
いく手法を試してみたのです。

Creative Edge School Books で実践してきたこと
をそのまま実行しただけですが、ある程度の効果を
得られたことで、本格的に方法論として確立させる
ための作業を開始しました。

を採用した「4media」「著者」支援機能

知名度が無く、媒体力も持たない著者と、
それなりの知名度があり（自分領域における）影響
力を持っている著者では、
まったく異なるプロモーションになります。

前者は、リアルプロモーションが中心となり、
後者は、ネットプロモーションだけで進めることが
可能です。

大半の著者は、前者に含まれます。
つまり、リアルプロモーションで基盤をつくりなが
ら、ゆっくり時間をかけて、ネットプロモーション
を連携させていく手法です。

「4media」では、プロモーションのためのオリジナル
コンテンツをトリガーにして、4 種類のメディアで
作品の魅力を伝えていきます。
時間はかかりますが、読者になり得る人たちとの出
会いは、その後の活動の財産になっていくでしょう。

読者に、「あなたが求めているコンテンツがここに
あります」と伝える方法はあります。簡単なことで
はありませんが、可能です。
ただ、確実に「買ってもらう」方法はないと考えるべ
きです。宣伝のプロ集団（広告代理店）でも、保証で
きない大変難しい領域です。

まれに発生するカスケード効果について

リアルもしくはネットで大きな影響力を持つ人物
や媒体（既存メディア）などで紹介され、無名の個人
がブレイクすることがあります。
また、新しい潮流にのって、世間の関心とともに知
名度を獲得できる場合もあります。

ただし、これは極めて少ないことで、チャンスをも
のにしている人たちは、タダの人ではないことが多
いのです。常にアンテナを張り巡らしていたり、職
能横断的な能力を持っている人がまれにチャンス
をつかむことができています。

つまり、大半の人は（偶然を期待する前に）自分の身
の丈にあった、自分流のプロモーションを見つけて
地道にやっていくことが、結果的に一番はやいと、
考えています。

ここでは、知名度が無く、媒体力も影響力も持たな
いアマチュアの作家を例にします。
まず、媒体力、知名度、影響力の 3 つの判定レベル
を見ていきます。

判定レベル項目：
媒体力（読者数の多いブログなどを持っているか等）
知名度（自分領域における認知度）
影響力（自分領域におけるリアルとネットの影響力）

知名度が無く、（固定読者がいる）ブログやメルマガ
も持っていない、SNS の活用度やアクティブ度（リ
ツイートやいいね！、コメント、シェア数など）も低
い場合は、リアルプロモーション主体の［4media
-A］で計画していきます。
大半のアマチュア作家はこのプロモーションにな
ります。

［4media -A］リアルプロモーション主体
知名度が無く、媒体力、影響力も小さい媒体力［0∼1］
知名度［0∼1］
影響力［0∼1］
［4media -B］リアルとネットの複合プロモーション
知名度は無いが、（読者数の多いブログや
メルマガを持っているなど）媒体力もしくは
影響力を持つ
媒体力［2∼5］［0∼1］［2∼5］
知名度［2∼5］［0∼1］［0∼1］
影響力［2∼5］［2∼5］［0∼1］
［4media -C］ネットプロモーション主体
それなりの知名度（業界では知られている
存在等）があり、媒体力もしくは影響力も
同時に持つ
媒体力［5∼9］［5∼9］［0∼1］
知名度［5∼9］［0∼1］［0∼1］
影響力［5∼9］［0∼1］［5∼9］
90% 以上の著者はこのプロモーション

出版社の媒体力を使って「売り込む」だけでは、著者
がその後、自力でブランドを確立していくことがで
きません。
最初に（自分の身の丈にあった）プロモーションの
やり方を「著者自身が」身につけておけば、他の出版
社で本を出すときにも生かせるようになります。

「4media」は、時間をかけて段階的に情報量を増や
しながら、作品の魅力を伝えていくプロモーション
のメソッドです。

デジタル本をリリースするまでの 3 カ月間は、プ
ロモーションを続けながら、サブコンテンツ（映像
コンテンツやオーディオブック等）を販売したり、
小規模なイベントを開催し、複数の収入の柱となる
基礎をつくっていきます。
リリース前のこの段階では、収益を上げることよ
り、認知されていくことが重要になります。

無名かつ媒体力を持たない著者ほど、
ネットではなく、リアルプロモーションが中心にな
ります。
手渡しできるフライヤー（印刷物）なども重要な
ツールです。ネットのプロモーションは、リアルプ
ロモーションの後です。

無名かつ媒体力を持たない著者のイベントは、「（プ
ロモーションのために用意した）オリジナルコンテ
ンツをトリガーにして、著者のためのプロモーショ
ンを成立させる」4media の考え方を生かし、作品
のテーマから拾い出した一要素を集客できるイベ
ントとして計画します。

4media
Contents
著
者
の
作
品
SubContents Contents
著
者
の
作
品
で
４
Ｍ
Ｅ
Ｄ
Ｉ
Ａ
4media
著
者
の
作
品
の
世
界
観
を
伝
え
る
別
の
コ
ン
テ
ン
ツ
熟
成
期
間
本
格
的
な
プ
ロ
モ
ー
シ
ョ
ン
へ

たとえば、ロボティクスがテーマの科学小説なら、
ロボットファンのための小イベントなどが考えら
れます。
イベントでは作品のバックグラウンドを少しだけ
語る程度にとどめ、いきなりストレートなプロモー
ションにしないことが重要です。

無名の著者を有名にするという発想ではなく（時間
がかかり過ぎる）、作品のテーマ、世界観から、まっ
たく別の（多くの読者の目を引く）オリジナルコン
テンツをつくり、そこで生まれた伝播力を借りなが
ら、著者の作品の方にゆっくりもどしていくという
考え方です。

遠まわりしているような印象を持たれるかもしれ
ませんが、媒体力を持つ著名人やメディアに紹介さ
れて、一気に知られる「滅多にない偶然」を期待する
よりは、確実な方法です。
著者の作品だけでは人を集められない最初の段階
では、プロモーションのためのサブコンテンツが重
要な役割を担います。

出版社が、著者ごとに、このような時間をかけてし
まうと、事業として成り立たないのではないかと思
われるかもしれません。
たしかに、デジタル本だけでは黒字にはならないで
しょう。重要なのは「複数の収入の柱となる基礎づ
くり」です。

ここは、一人出版社が、長期プロジェクト中心のや
り方に移行する際、まず最初にクリアしなければい
けない問題でした。
詳細は、「Creative Edge School Books」のページに
掲載していく予定です。
http://design-zero.tv/4media/

「一生続けられる仕事に育てたい」という決意

現在の一人出版社のやり方は、5 年前なら無理だっ
たでしょう。
今のウェブの技術、アプリケーションソフト、クラ
ウドサービスによって、デジタル本の制作、マーケ
ティングなどが可能になっています。

5 年後はどうなっているでしょう？
私は、現在不可能なことでも「数年後には可能にな
る」と信じて、（まだ実現不可能な表現を含む）長期
プロジェクト中心の活動に切り替え始めています。

一人出版社を始めて「8 ヵ月」
出版（パブリッシング）とエンジニアリングの融合に
よって、新しい出版社のカタチを見つけ出しました。

一人出版社「Creative Edge School Books」は、昨年
の（最初の）継続困難危機を乗り切る際、すべての機
材を処分しました。
残ったのは、引き取りさえ拒否された一台の古い
ノートパソコンです。

「Creative Edge School Books」の全システム、（デ
ジタル本、映像コンテンツ、オーディオブック、シン
グルページ等々）すべてのコンテンツ制作は、
この古い Windows 7 のノートパソコンを使ってい
ます。
※講演のときに使用していた（Alt キーが機能しない）あの分厚く重たいノートパソコンです

なぜ、こんなことが可能かというと、ウェブ技術、ク
ラウドサービスなどの力を最大限に利用している
からです。
今の一人出版社は、ウェブのテクノロジーによって
支えられています。

個人が、電子出版だけで生活するためには、広告代
理店がやっている数百分の一程度のプロモーショ
ンを、ゆっくり、時間をかけて実行していくことで、
可能になります。
誰でも簡単にできることではありませんが、
頑張れば、可能になる。
やっと、ここまできました。

一人出版社は、次のステージに上がるため、高い壁
を越えようとしています。
耳を澄ますと壁の外から歓声が聞こえてきます。こ
の壁の先にあるのは「5 年後」の世界。2020 年、日本
はオリンピックで盛り上がっています。

5 年前できなかったことが可能になり、
2014 ∼ 2015 年、一人出版社が誕生しました。
5 年後、2020 年には、自分の想像を超えた、まった
く新しい「出版社」に進化しているはずです。

5 年後、電子出版という古くさい呼び方はやめて、
こう呼びます。

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