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HIV 感染症予防啓発に向けた多職種共同の取り組み
座光寺正裕 1) 、神保一平 1) 、藤川祐子 1) 、 大久保洋一 2) 、高見沢葉
子 2) 、小澤俊之 3) 、 池田昌伸 3) 、浅沼瑞穂 4) 、竹内瑞恵 5) 、 松村尚
子 6) 、鄭 真徳 1) 、岡田邦彦 1) 、 出浦喜丈 1)
JA 長野厚生連佐久総合病院 2) 同健康管理センター
1) 3)
同臨床検査科 4)
同秘書広報課 5)
佐
久大学看護学部 6) 佐久保健福祉事務所
3. 長野県の患者特性
人口 10 万人あたりの 初診時にエイズを発症し
都道府県別エイズ患者数 ている割合
順位 都道府県 患者数 順位 都道府県 割合
1 東京都 0.75 1 秋田県 68%
2 長野県 0.57 2 山形県 67%
3 愛知県 0.47 3 岩手県 61%
4 栃木県 0.45 4 和歌山県 61%
5 大阪府 0.43 5 長野県 58%
全国平均 0.31
45 東京都 20%
(単位:人 /10 万人) 全国平均 30%
( 2004 年 4 月〜 2009 年 3 月、エイズ動向委員会報告および佐久総合病院診療情報管理部)
4. 長野県の患者特性
人口 10 万人あたりの 佐久総合病院
都道府県別エイズ患者数 初診時のエイズ発症割合
順位 都道府県 患者数
1 東京都 0.75
2 長野県 0.57
3 愛知県 0.47
4 栃木県 0.45
5 大阪府 0.43
全国平均 0.31
(単位:人)
( 2004 年 4 月〜 2009 年 3 月、エイズ動向委員会報告および佐久総合病院診療情報管理部)
5. 過去 5 年間に当院を受診した HIV 陽性者
国籍と性別 年代別患者数
(単位:人)
2004 年 4 月から 2009 年 3 月 n=37
7. 方法
実行委員会の構成
医療関係:小諸佐久 HIV 診療ネットワーク研究会、医師会、歯科
医師会、薬剤師会、看護協会、臨床検査技師会、佐久総合病院
行政:佐久保健福祉事務所、長野県
NGO : HIV エイズネットながの
大学:佐久大学
協賛団体
佐久地区商工会、信濃毎日新聞社、イオンさくだいらショッピン
グセンター、佐久市教育委員会、佐久市
9. 企画内容
中心となる企画
大学生による HIV 啓発劇
専門家と学生による
トークショー
HIV 無料迅速検査
レッドリボン作り
パネル展示
10. 企画内容
集客を狙った企画
バルーンアート作り
吹奏楽
ヒップホップダンス
フラダンス
11. 結果
イベントの参加者数と 長野県内保健所の
HIV 迅速検査数 HIV 検査受付件数
2008 2009 2007 2008
参加者数 336 人 約 500 佐久保健所 499 631
(主会場) (96 人
人) 長野県全体 3959 3750
(副会場) (240 人 )
運営スタッフ 約 100 122 人
人
HIV 迅速検査 32 件 未実施
Notes de l'éditeur こんにちは。長野県の佐久総合病院から参りました、初期研修医の座光寺正裕と申します。 本日は長野県佐久地域における、 HIV 感染症予防啓発に向けた多職種共同の取り組みについてご報告します。 緒言です。 日本人男性のエイズ患者が多い長野県の地方都市において、医療機関、行政、 NGO の三者が共同して、啓発目的のイベントを 2008 年から毎年開催しています。 地方都市における啓発イベント運営の実際をお示しし、今後の展望について報告します。 まずはじめに、長野県の患者特性についてお示しします。 左の表を御覧ください。過去 5 年間のエイズ動向委員会の報告によりますと、人口あたりのエイズ発症者数は、東京都が全国で最多ですが、長野県はこれに次いで全国で 2 番目に多くなっています。 右の表は初診時にすでにエイズを発症している、いわゆる「いきなり AIDS 」の割合です。長野県では半数以上が初診時にすでにエイズを発症しているのとは対照的に、東京都ではその比率はわずか 20% に過ぎません。 長野県においていかにエイズ患者が多いか、そして初診時にすでにエイズを発症している割合が高いかが見て取れると思います。すなわち、症状が出てもすぐに検査をすることなく、生命が脅かされて始めて医療機関を受診する状況となっています。早期発見、感染拡大防止のためには課題が多い状況です。 (東京都などは検査目的で地方都市からの流入が多い可能性がある。自治体の境界が必ずしも反映しているとは限らない。) 当院における初診時のエイズ発症割合も、長野県全体と同じく、 6 割弱が初診時にすでにエイズを発症している状況です。 都市部と比較して HIV 感染が見過ごされやすいことがわかります。早期発見、早期治療開始を促すための介入が必要と考えられます。 もう少しくわしく、当院の患者の構成を見てまいります。 国籍と性別に関しましては、日本人男性と外国人女性で大多数を占めます。 年代別に見ますと、女性は 20-40 代に、男性は 40-50 代にピークがあります。構造的には、若い外国人女性と、中高年の日本人男性の間で、性産業を媒介として感染が拡大しているのが当地域の特徴です。 以上のような背景から、当地域では早期発見、感染予防を促す啓発が重要であることがわかります。 しかしながら、日本人中年男性と外国人若年女性といったハイリスクグループに対象を絞った啓発イベントは、一般市民の差別感情を助長し、逆に当事者意識を削ぐ危険性がありました。 地域の人々が HIV 感染症を正しく理解し、身近で日常的な出来事として受け入れる素地を作る必要があると考えられました。 以上の視点から、啓発対象をあえてハイリスクグループに限定せず、一般市民全体に広げてイベントを計画した。 方法です。 当院の職員が中心となって、保健福祉事務所や地元の看護大学生、 NGO などと実行委員会を構成して準備にあたりました。 また、商工会や新聞社、会場となったショッピングセンターなど多様な組織から人的、経済的支援を得ることができました。 会場は新幹線の駅前にある、大型ショッピングセンターのイベントホールを選びました。 週末の人出が多く、たくさんの市民の目に触れる場所であることが重要だと考えたためです。 イベント企画の中心は、 HIV/ エイズ啓発劇です。これは佐久病院の研修医が、病院のお祭りで演じた台本を手直しして使用して、看護学生が中心となって演じています。簡単に内容を紹介しますと、エイズとは無縁と思っていた中年男性が、ある日突然エイズ発症を告げられ、社会からの偏見の目にさらされ、家族から非難を受け狼狽するも、結局最後には家族が支えとなり、職場の理解も得て、無事に社会生活に復帰するというシナリオです。 当地域では比較的高齢の日本人男性の発症が多く、発症自体の医学的問題もさることながら、家族が病を受容し、ともにむかいあってくれるかどうかという点が非常に重要です。 この他、市民団体の活動家、医師、大学生などによるトークショーや、会場での HIV 無料迅速検査などが中心となる企画です。 しかしこうした啓発イベントの難しさとして、なかなか立ち止まってみてくれる方が少ないことです。 ショッピングセンターに買い物に来た家族連れの足をとめるために、いわば集客を狙った企画も間に挟みました。 風船で犬をつくると小さな子供たちはこぞって集まり、自然にその周りには若い世代の親たちが集まります。地元の中学生に吹奏楽の演奏を依頼すると、そのおじいさんおばあさんも含めて家族総出で訪ねてくれます。こうした人々に、啓発のビラやコンドームを配布することで、幅広い世代に働きかける機会が自然に得られました。 イベントの成果についてお示しします。 来場者数は 2008 年は 300 人余り、昨年は約 500 人の一般参加者がありました。 また、イベントの運営スタッフ、各種企画の参加者は両年とも 100 人以上となりました。 HIV 迅速検査については、 2008 年度に 32 件を実施しましたが、プライバシーの保護や結果説明の質の確保のために多くのマンパワーが必要であることから、昨年からは保健所で休日対応をして希望者を誘導する形に変更しました。 右の表は長野県内保健所の HIV 検査受付件数です。統計がやや古くて恐縮ですが、県全体の検査受付件数が 3959 件から 3750 件に減少する中、佐久保健所では 499 件から 631 件へと増加していました。啓発イベントとの関連を明確に示すことはできませんが、地域全体の機運としていい方向性を保っていることは言えると思われます。 イベントの成果について振り返ってみますと、やはり啓発効果の定量的評価は困難でした。初年度は参加者に対するアンケートも実施しましたが、回収率が低く解析に耐えませんでした。 参加者は一般市民であり、ハイリスクグループ(日本人中年男性と外国人若年女性)に対する啓発効果は限定的であろう予測されます。しかし、来場者のみならず、吹奏楽やダンスの参加者とその家族を通じて、地域住民が HIV を身近な問題と捉える契機となったと思われます。 そして何より、イベントを通じて、当地域で HIV に関心を持つ多職種が、顔の見える関係を築けたことが有意義でした。 結語です。 地域全体に働きかける現在のイベント運営方法は、地域で HIV 感染症と向きあう下地を作るためには今後も有用であり、今年も今週末の日曜日に開催を予定しています。 また同時に、今後はハイリスクグループに対象を絞った啓発方法についても模索が必要であると考えられます。 発表をおわります。ありがとうございました。 佐久総合病院では、有志の医師が、ショッピングセンターのフードコートで休日に無料健康相談を行って、治療環境に関する情報提供などを行ってきています。 また、まだ準備段階ではありますが、厚労省の研究班と共同して佐久地域でタイ人コミュニティーに早期受診を勧め、タイ人らの治療環境に関する誤解を取り除くための取り組みを始める予定です。