ふたつの高精度化 MIDI 仕様1. The high-resolution MIDI format
(eXtended Precision MIDI format)の仕様紹介と,
研究分野での利用について
○野池賢二(所属なし)
池淵 隆(関西学院大学)
片寄晴弘(関西学院大学)
2. はじめに
• とある仕様の紹介発表
• MIDI 高精度化の仕様
• MMA の仕様(High Resolution MIDI ?)
• YAMAHA の仕様(eXtended Precision MIDI(XP MIDI))
• まだあまり認知や普及がなされていない
• “High Reso MIDI 仕様”, “XP MIDI 仕様” で検索して
も,まとまった情報がほとんど見つからない
• 128段階で足りてますか?
• 研究成果の品質が上がるかも?
• 製品の特長のひとつになるかも?
• この発表スライドや,サウンドサンプルのありか
http://www.slideshare.net/knoike/presentations
http://noike.info/HRmidi/
4. 現在における MIDI の不満点
• 鍵盤楽器に特化した仕様である
• 31250 bps という転送速度の遅さ
• 同時発生イベントを「同時である」と記述できない
→ インターバルタイム 0 でイベントを列挙する
………
• パラメータの精度(分解能)の低さ
いまいち萌えない
理由を挙げなさい
5. MIDI メッセージパラメータの精度(分解能)
• 基本的に,7bit のパラメータがひとつ(128段階)
• Note On/Off ベロシティ 128段階で十分?
• ペダル踏度 128 段階で十分?
• ポリフォニック・キープレッシャー(アフタータッチ) 128
段階で十分?
↓
演奏表情の研究素材データとしては
精度が足りない(と感じる)
↓
音響信号処理に移行する前段階として
手軽な高精度化方法が必要
うわっ…私の精度,
低すぎ…?
6. ふたつの MIDI 高精度化仕様
• MMA(MIDI Manufacturers Association) によって
承認されている仕様
• YAMAHA による拡張仕様 eXtended Pricision MIDI
(XP MIDI)
公開されている仕様書が存在しない
→ 解析的に仕様を推測
• 現状での普及具合
• 研究分野での利用について
7. MMA による高精度化仕様
• 以前から「HD Protocol」として高精度化,高機能化
が議論されてきた
• 現状では,
• High Resolution Velocity Prefix(HR Vel Prefix と略記)
• だけが承認(2007年)
8. High Resolution Velocity Prefix(HR Vel Prefix)
• CC#88(58H) を使用して,Note On/Off ベロシティ
に下位 7bit の情報を拡張する
Note On: 9n K V
CC#88 HR Vel Prefix: Bn 58 P p p p p p p p
v v v v v v v
v v v v v v v p p p p p p p
High Resolution Velocity(14bit):
9. HR Vel Prefix の値
1 0 0 1 0 0 1 0 1 0 0 0 0 1
High Resolution Velocity(14bit):
High Resolution Velocity(7+7bit):
→ 8192+1024+128+32+1=9737
→ 9737 / 16384段階
1 0 0 1 0 0 1 0 1 0 0 0 0 1
理解2
理解1
→
→ 64+8+1=73, 0.25+0.0078125=0.2578125
→ 73.2578125
小数部整数部
こちらの
理解
のほうが
オススメ
10. HR Vel Prefix の特徴
• 標準の Note On/Off ベロシティとの完全上位互換
性を確保
• HR Vel Prefix をサポートしていない HW/SW は,単純に
無視すればよい
• Note On/Off ベロシティが 0 のときは,HR Vel Prefix は
無効
• (「Note Onベロシティ0 = Note Off」との互換性を優先)
• HR Vel Prefix は,その後で最初に出現する Note On/Off
メッセージにだけ有効
0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 1
→ 33(あるいは,0.2578125) ではなく,0
→ + という理解が直感的
→ このルールのため,精度は 214-128=16256
整数部 小数部
11. ふたつの MIDI 高精度化仕様
• MMA(MIDI Manufacturers Association) によって
承認されている仕様
• YAMAHA による拡張仕様 eXtended Pricision MIDI
(XP MIDI)
12. YAMAHA による高精度化仕様
• Disklavier E3 などで用いられている拡張仕様
• 仕様の名前は eXtended Pricision MIDI(XP MIDI)
公開されている仕様書が存在しなかったため,
• Zenph社のシーケンスソフト「RePerform」
http://www.zenph.com/reperform
• Minnesota International Piano-e-Competition のアーカ
イブファイル
http://www.piano-e-competition.com
• MODARTT社のソフトウェア音源「Pianoteq」
http://www.pianoteq.com/
を使用し,解析的に仕様を推測
14. XP MIDI 高精度化 Note On/Off ベロシティ
• CC#16(10H) を使用して,Note On/Off ベロシティ
に下位 3bit の情報を拡張する
Note On: 9n K V
CC#16 XP Vel Suffix: Bn 10 S
XP MIDI Velocity(10bit):
v v v v v v v
s s s
sv v v v v v v s s
MMA の HR Vel Prefix と異なり,
拡張するためのメッセージのほうが後着
15. XP MIDI Note On/Off ベロシティの値
XP MIDI Velocity(10bit):
XP MIDI Velocity(7+3bit):
→ 512+64+8+2=
→ 586 / 1024段階
理解2(Pianoteq)
理解1(RePerform)
→
→ 64+8+1=73, 0.25=0.25
→ 73.25
小数部整数部
01 0 0 1 0 0 1 1 0
01 0 0 1 0 0 1 1 0
16. XP MIDI Note On/Off の特徴
• 高精度化用のメッセージのほうが,標準の Note
On/Off メッセージよりも後
• Note On/Off メッセージのベロシティが0であっても
有効
→ 2(10bit表現),0.25(整数部+小数部)
→ 真の10bit表現のため,精度は 210=1024
00 0 0 0 0 0 0 1 0
17. XP MIDI 高精度化ポリフォニックキープレッシャー
• 標準のポリフォニックキープレッシャーとは別に,
CC#81(51H)で上位7bitを,CC#16(10H)で下位3bit
を指定する
PolyKprs: An K V
CC#81 XP Kprs MSB: Bn 51 H
XP MIDI Kprs(10bit):
v v v v v v v
l l l
lh h h h h h h l l
h h h h h h h
CC#16 XP Kprs LSB: Bn 10 L
19. XP MIDI 高精度ペダル踏度
• CC#16(10H) を使用して,標準のペダル踏度に下
位 1bit の情報を拡張する
Damper(Sustain): Bn 40 V
CC#16 XP Pedal Suffix: Bn 10 S
XP Pedal(8bit):
v v v v v v v
拡張するためのメッセージのほうが後着
Sostenuto: Bn 42 V
Soft: Bn 43 V
s
v v v v v v v s
20. XP MIDI ペダル踏度の値と特徴
• 値
• 高精度化メッセージのほうが,標準のペダル踏度
メッセージよりも後
• 標準のペダル踏度が 0 であっても,有効
XP MIDI Pedal(8bit):
→ 128+16+2+1=
→ 147 / 256段階
1 0 0 1 0 0 1 1
0 0 0 0 0 0 0 1
→ 1(8bit表現),0.5(整数部+小数部)
→ 真の8bit表現のため,精度は 28=256
21. 現状での普及具合
• サポート製品
• XP MIDI を積極的に使用したピアノ演奏コンテスト
「Minnesota International Piano-e-Competition」
http://www.piano-e-competition.com
HR Vel Prefix
(入力 / 出力)
XP MIDI
(入力 / 出力)
Pianoteq ○ / - ○ / -
VAX77 - / ○ - / ×
Privia PX-150など ○ / ○ × / ×
Disklavier E3 など × / × ○ / ○
RePerform × / × ○ / ○
23. VAX77 MIDI Keyboard Controller
(INFINITE RESPONSE社)
• 76鍵のMIDIキーボード
http://www.infiniteresponse.com/
• MMA の HR Vel Prefix に対応
• 各鍵の Note On ベロシティ用のセンサの精度は
256段階
• 演奏データをMIDI高精度化仕様で出力できるMIDI
キーボードとして有用であったが,現在は入手不
可能
→ 次の製品を開発中
24. Privia PX-150 など(CASIO社)
• Privia: PX-150, PX-350M, PX-750, PX-850, PX-1200GP
http://casio.jp/emi/products/privia/
• CELVIANO: AP-250, AP-450, AP-650M
http://casio.jp/emi/products/celviano/
• 音源を内蔵した電子ピアノ
• MMAのHR Vel Prefixに対応している.ただし,PX-
150, PX-350M, PX-750, AP-250はNote Offベロシティ
には対応していない
http://support.casio.jp/pdf/008/nil%20(PX150-
1200_AP250-650_MIDI_J_121017).pdf
• MIDI高精度化仕様での演奏収録に有用
• MIDI高精度化仕様を用いたSMFやMIDI入力を
• 音で確認する場合に有用
27. Minnesota International Piano-e-Competition
• XP MIDI 仕様とインターネットを積極的に活用した,
人間のピアノ演奏コンテスト
http://www.piano-e-competition.com
• 演奏者や聴取者は,必ずしも同一コンテスト会場に
集まる必要がない
• 演奏者の演奏データや演奏中の映像は,インターネット
を経由して別のコンテスト会場にも送られる
• このときの演奏データの形式が XP MIDI
• 使用されているピアノは Disklavier E3
• 過去のコンテストでの演奏データがアーカイブとし
て公開されているので,XP MIDI 仕様による SMF の
実例として有用
• XP MIDI 仕様そのものの有用性の確認
28. 研究分野での利用について(1/2)
• 演奏の表情を扱う研究
• 演奏表情の分析,生成
• 演奏表情付けコンテスト(Rencon)
• 試しに高精度化MIDI仕様で聴き比べコンテスト実施?
• 演奏表情DB(例: CrestMusePEDB)
演奏 → SMF → CrestMuseDB
↓
演奏 → 高精度化 SMF → 高精度化 CrestMusePEDB
• MIDIに類似したデータ表現を用いる研究
• 音響信号からMIDIレベルの量子化を行う研究(採譜シス
テム)
• 歌声から歌声合成システムの元データを生成する研究
• 聴取心理実験の刺激データ
精緻にすることで,成果の品質を上げられないか?
新たな知見,課題が生じるのではない?
30. まとめ
• ふたつの MIDI 高精度化仕様を紹介
• 現状での普及具合
• 研究分野での利用について
• この発表スライドのありか
http://www.slideshare.net/knoike/presentations
• サウンドサンプル
http://noike.info/HRmidi/